14180 菅元首相の意味不明なエネルギー論  阿比留瑠比

民主党の党員資格停止処分中の菅直人元首相がこのほど、平成16年から断続的に行ってきた四国霊場八十八カ所を巡る遍路を終えた。9年余をかけ達成したといい、まずはめでたい。
「1200キロを歩いたお遍路は私の人生にとってやはり大事業だった」
菅氏は1日付の自身のブログでこう振り返り、その上で「今はあらためて原点に返って、残された人生をどう生きるかを考えている」と記している。
遍路を通じて来し方行く末について個人的感慨にふけるのは勝手だが、やはり遍路を主題にした9月30日付のブログで、こう書いていたのには目を疑った。
「今回歩いた香川県でもソーラーパネルが目立った。原発と化石燃料ゼロは国民が賛成し、政治が決断すれば十分実現可能だ」
経済産業省の推計では、原発全停止に伴う化石燃料輸入の大幅増と火力発電所の稼働で、日本は年間3・8兆円超ものコスト増に耐えながら電力を維持している。これは消費税1%分の2・7兆円よりも大きい。
にもかかわらず、原発だけでなく化石燃料もゼロにできると断言する菅氏の論拠は何なのか。たとえ内実がどうでも、仮にも元首相の重い言葉なのである。
そこで菅氏の過去の発言をたどると、6月1日付のブログで、太陽光発電など最新省エネ技術を駆使し、「エコカンハウス」と名付けた自身の新居を取り上げてこう書いていた。
「エコカンハウス2000万戸分発電すれば原発40基分で、それだけでも原発は不要だ」
確かに菅氏は今年1月、東京都三鷹市の駅近くの実母名義の一等地に、延べ床面積約173平方メートルの瀟(しょう)洒(しゃ)な2階建て住宅を新築し、その快適ぶりをたびたびブログに書いている。だが、そんな恵まれた環境にある家庭が果たして2000万世帯もあるだろうか。
現在ある一戸建て住宅に太陽光パネルを設置するとして、その費用は誰が負担するのか。はじめから国民の生活も現実も無視、軽視した無意味な空論・暴論だとしか思えない。
首相時代の23年5月にはパリで開かれた経済協力開発機構(OECD)での演説で、唐突に「家屋への太陽光パネル設置1千万戸」という目標を表明した。担当閣僚にも事前に相談しない思いつきによる独断専行であり、結局うやむやになった発言だが、このときから比べても倍増している。
さらに同年7月に長野県で開催されたシンポジウムでは、必要な電力をすべて再生可能エネルギーで賄えると主張し、その理由についてこう言い切った。
「今から200年前、300年前は山にしば刈りに行ったおじいさんがまきや何とかで全部やれた。新しい技術に転換してやればいいだけだから、十分可能だ」
もはや何を言っているのか分からない。日本昔話の世界を、現代の最新技術にどう転換するというのか。肝心要の部分がすっぽり抜け落ちていて、脈絡も論理も理解不能である。
結局、菅氏の「おめでたい」エネルギー論を、真面目に受け止める方が愚かなのか。(産経新聞政治部編集委員)
  
杜父魚文庫

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