産経新聞の黒田勝弘ソウル支局長が分析した韓国情勢は読ませる内容だ。ことしの十二月には韓国の次期大統領選が行われる。明らかにレームダック状態になった盧武鉉大統領は支持率が危険水域を遙かに突破、民心が離れた裸の王様となった。お膝元の与党ウリ党も分裂した。
そんな中で盧大統領が発表した「進歩陣営批判」論が話題になっている・・・と最新の韓国情勢を黒田氏は伝えてきた。「進歩陣営」といえばどこかカッコよくてあいまいだが、はっきりいえば「左翼陣営」ということでもある。つまり左翼陣営の支援を受けて政権を握り、左翼的政策を展開してきた盧大統領がここにきて左翼批判を言い出したのだ。盧大統領が転向?
問題の進歩派批判論は先週(17日)、大統領官邸のホームページに発表された。200字原稿用紙40枚分の長文で、しかもヨーロッパ公式訪問に旅立つ直前に書かれたという。盧大統領は議論好きで話の長いことで有名だ。それにしても外遊直前にこんなことに没頭していたとは、とまずマスコミから皮肉られた。
盧大統領は、貧富格差など両極化問題や米軍基地問題、米韓FTA(自由貿易協定)締結問題をはじめとする盧政権の政策を、進歩的でないとして不満、批判を強めている左翼・進歩派勢力に対し「現実無視で教条的」と非難し、「韓国の進歩勢力は変わらなければならない」(論文のタイトル)と注文を付けている。
そして「自分は左派でもなく新自由主義者(新保守主義?)でもない」という。かつて自ら“左派新自由主義者”などと称したのは「一方からは“左派政権”と非難され他方からは“新自由主義者”と非難される状況は問題だと考え、そうした政権批判を皮肉るための言葉だった」という。
盧大統領は自らについて「“教条的進歩”に対応する意味で“柔軟な進歩”だ」と述べている・・・と黒田氏は皮肉な言葉を投げている。私も同感である。盧武鉉は言葉の遊びをしているに過ぎない。
黒田分析は続く。<たしかに盧政権が進めている米韓FTA交渉や米軍基地のソウル近郊(首都圏の平沢市)移転などは反米的ではない。不法労働運動への取り締まりも厳しくやっている。そのため左翼・進歩派陣営からは「裏切られた!」の声も聞かれる。盧大統領は変わったのだろうか?
盧大統領は論文で1980年代以降の自らの“思想遍歴”を振り返りながら、当初はひたすら社会的正義感だけで従属論とか、民族経済論とか、新植民地・国家独占資本主義論など左翼理論に接し「労働者、農民、庶民の生存のための闘争を支援」したが、しかし現実は理論が予言した方向には行かず、韓国経済は成長し発展したという。
この“現実”は政権を握り国家経営を担ってみて、さらに実感されたということだろうか>・・・と疑問を投げかけた。
<これに対し保守派のマスコミ論評は「教条的左派の支持で政権を握った大統領」(朝鮮日報)が「中国に行って朝鮮戦争の共犯の毛沢東を尊敬するといったり、声高の自主論で米韓同盟を損なったり、親北・左派勢力を過去史調査事業に加えたり」(中央日報)していながら、今さら何を言っているのかと皮肉っている。
しかし、政権末期でいささか遅すぎた感じはあるものの、現実を知ることで現実無視の左派勢力の無能さ(?)が分かったというのは悪いことではない。
ただ盧大統領の“進歩派批判論”に決定的に欠けているものがある。韓国の進歩派や左翼の実態のことである。彼らの問題点は、実は現実無視の教条主義ということだけではなく、それより彼らが北朝鮮の独裁体制擁護だというところにある>。この指摘は正しい。
<盧大統領は今回、自ら主張する“柔軟な進歩”の例としてヨーロッパの進歩陣営をたたえている。しかしヨーロッパの進歩勢力つまり西欧左翼は、非人間的な共産主義独裁に最も反対し果敢に戦った。半世紀以上経っていまだに国民を十分に食べさせられない、全体主義世襲独裁の北朝鮮に一言もいえない“柔軟な進歩”や“民主勢力”など、ヨーロッパでは考えられないことだ。>盧武鉉を含めて韓国の進歩的勢力に欠けているのは、金正日独裁に対する毅然とした対決の姿勢ではないか。それが欠落したままヨーロッパの進歩勢力を讃えるのは、如何にも漫画チックと言わざるを得ない。
黒田分析は「さらに韓国の左翼や進歩派の問題点は“民族”に弱いということだ。民族主義というのは本来は右翼や保守派の産物だが、韓国では逆になっている。韓国の左翼・進歩派は自由や民主主義より民族が重要と思っている。そして北朝鮮は反米を言っているだけで“民族”を専有している。
国民を飢えさせ、自由や民主主義を保障しない北朝鮮が“民族”を重視し“民族”を独り占めにできているとは不思議な話だ。その意味で盧大統領は、たとえば反米より親米がより民族的なのだと堂々といえるようになれば、それこそ本当の“柔軟な進歩”である。」と問題の本質を指摘している。
金正日を刺激し再び朝鮮戦争が起これば、ソウルは火の海になるという恐怖感から盧武鉉政権の対北融和政策が構築されている。韓国の拉致問題に目をつぶり、米、金、エネルギー支援を際限なくやってきた。支援が北朝鮮の民衆に行き渡り、長い目でみれば北朝鮮が韓国の半分でも豊かになって、独裁政権の足元が揺らぐとあれば、融和策も意味がある。しかし現実には金正日政権の延命に手をかしただけでなかったか。
朝鮮半島の統一が民族の悲願だというが、北朝鮮主導の統一になったらどうするのか。中国もロシアもそれは望んでいない。米国はあやふやな盧武鉉政策に見切りをつけて、防衛線を日本に下げることを検討している。盧武鉉の気まぐれに付き合って、在韓米軍の米兵を危険にさらすことは米世論が許さない。
軍事的にみても地上軍を主体とした軍事行動は時代遅れとなった。空と海からの攻撃が主体となる作戦行動をとるであろう。当然、韓国もその被害を受ける。日本も無傷というわけにはいくまい。北朝鮮の南進で受ける被害とは比較にならない戦争被害が予想される。
ここは韓国は毅然として、金正日の野望を挫く備えを日米と歩調を合わせてするべきでないか。それが戦争を防ぐ最高の策であることに韓国も気付くべきではないか。歴史的な教訓となったチェンバレン外交の妥協が、ナチス・ドイツとヒトラーの野望を許した愚かさを繰り返してはならない。
443 黒田ソウル支局長の韓国分析 古沢襄
未分類
コメント
一時、直接投票による大統領制に憧れを持っていたことがありましたが、ここの所の韓国の有り様を見て考え直しつつあります。
米国などと比べて違うのは、有権者の意識というよりも、立候補者選出のメカニズムなのかもしれませんが、韓国を見て憂鬱になることが多々あります。
(民主主義の真髄は、「選んだ者:有権者」がその「結果としての責任」をも享受する。と言うことであるとすると、早いサイクルで試行錯誤によって有権者の意識改革が出来るシステムなのかもしれませんが....。:有権者の支持がなければ二度とこの種の大統領は選ばないと、学習が進んでいくという意味で)