本日、元内閣府副大臣で帝京平成大学教授の米田建三氏から第三種郵便扱いである雑誌が届きました。それは、月刊「正論」6月で、まあ、なんというかご存じの通り、率直に、ありていに言えば産経新聞が発行している雑誌なわけですが、外部の人から提供を受けたという次第です。で、なんで米田氏がこれを送ってくれたのかというと、総力特集「ミサイル脅威は去っていない」の中の一つとして、米田氏の記事「アメリカ〝信仰〟からの覚醒なくして『独立』なし」が載っているので、あなたもちゃんと読みなさいということのようでした。手紙も何も添えてありませんでしたが、記事のページに付箋がつけてあったので、まず間違いありません。
というわけで、じっくりと拝読しました。米田氏の考え、意見はよく承知しているのでそれはともかく、現在の日本を取り巻く国際情勢に照らしてちょっと気になったというか、思い出したことがあったのでここに記しておこうと思います。それは今から6年ちょっと前のことでした。当時、「米国はまあ、そんなところだろうなあ」と感じたことをはっきりと覚えています。米田氏は正論の記事で、こう書いています。
《平成15年1月20日、コーエン元米国防長官が非公式に来日し、キャピタル東急ホテルの朝食会(私も参加)で、日本の国防関係議員と懇談する機会をもったが、日本側に対し、「北朝鮮が核兵器を何発か保有するようになった場合、日本は容認できるか」と、まさに①(※阿比留注、防衛官僚が米田氏に対して話したエピソード。米大使館の安保担当者が「本国の指示でお尋ねする。仮にアメリカが北朝鮮の初歩的核兵器の保有を容認する結果になったら日本はどうなるか」と聞いてきたという話)と同じ趣旨の質問をしたことが、同年2月5日付の読売新聞で報道された。その際、日本側の出席者が「アメリカはイラクを武装解除するといいながら、大量破壊兵器の保有をほのめかす北朝鮮にはなぜ軟弱な姿勢で対応するのか」となじったのに対し、コーエン氏が「ミサイル防衛網が完成すれば、日本にとって(北の核は)脅威ではない」と、こともなげに言い放ったことも報じられている》
まあ確かに、読売さんは当時、1面企画記事のエピソードの一つとしてこの話を書いていました。それは私も記憶している事実なのですが、ここで新聞記者の「業」というか「見栄」というかどうでもいい「こだわり」というか、そういう小さなものが頭をもたげてくるのです。米田さん、わざわざ2週間遅れの読売記事を引用しなくても、朝食会翌日の紙面で産経(私)が書いていたじゃないかと(1面じゃなくて政治面ですが)。以下の記事です。
《米前国防長官 「北核武装」容認案 日本側の感触探る [ 2003年01月21日 東京朝刊 総合・内政面 ]
来日中のコーエン米前国防長官が二十日午前、東京都内のホテルで開いた防衛庁長官経験者ら国防関係議員との朝食会で、今後の対北朝鮮政策の一つとして、日米が北朝鮮の核保有を容認するシナリオを日本が受け入れるかどうかを打診していたことが分かった。
コーエン氏は現在は「私人」だが、共和党重鎮の立場から、米側の対北朝鮮政策における硬軟さまざまな選択肢の一つを“観測気球”として、日本側の反応を探ったとみられる。
関係者によると、朝食会には元防衛庁長官や現防衛庁幹部ら約十人が出席。この席でコーエン氏は「北朝鮮が八個から十個の核兵器を持つことを日本は容認できないか」と切り出し、続けて「その場合、日本に独自の核武装論は台頭するだろうか」と日本の対応を探ったという。
これに対し、日本側からは「その考えはおかしい。イラクより核開発を進めている北朝鮮の方が脅威だ」などと米国は北朝鮮問題をもっと重視すべきだとする反論が出たとされる。
出席した議員の一人は「米国にとり北朝鮮の核の脅威は日本ほど切実ではない。また、イラクとの二正面作戦は困難だから、米国は北朝鮮の核容認に踏み切る可能性とその場合の日本の対応を探っていたようだ。米国には、危険を冒してまで北朝鮮を押さえ込む意思はないのではないか」との懸念を示している。》
…この席では、日ごろはむしろハト派的だと言われる久間元防衛相も、コーエン発言に激怒していたと聞いています。ただ私は、日本の政界が自民党も民主党も党内がバラバラで、また世論も割れがちであるように、米国も必ずしも一枚岩ではないと思っているので、こういうことがあっても、それがイコールとくの米政権の意思だとまでは思いません。といっても、こういうアクションは当然のことながら警戒すべきだし、一つひとつ意識にとどめて対応していくべきだとも思います。また、そんなものであるからこそ、集団的自衛権の問題をはじめ、日本として打てる手をきちんと打っておかないと、米国をいざというときに利用することが、いよいよ難しくなるだろうとも。
で、この話には後日談があります。実はこのコーエン氏を招いての朝食会は、昨年に脱税容疑で東京地検に逮捕された日米の国防族・防衛産業をつなぐ防衛フィクサー、社団法人「日本平和・文化交流協会」専務理事の秋山直紀氏の主催でした。それで私が上の記事を書いて数日後、秋山氏と面識のある先輩記者から夜中にスタンドバーに呼び出されたところ、秋山氏がいて、「あの記事はなんだ。こっちはテープをとっているが、記事は違う。こういうことを漏らすのは○×(議員名)だろう」と、どこが違うのかは明示しないまま文句を言われました。
先輩記者は、私のことを「こいつはいい奴ですから」とその場をとりなそうとしてくれたのですが、あまり大人ではない私としては、出席者からきちんと取材したつもりでしたので、そのテープとやらを聞いて実際に趣旨が違うというのならともかく、その時点で頭を下げるつもりは全くありませんでした。というより、秋山氏は秋山氏の事情があって怒っているポーズをとっているのだろうし、そんなのに付き合えないという思いがありました。実際、秋山氏は冒頭こそ文句を言ったものの、その後は少し物わかりのいい顔になって自慢話を始め、なんだかうやむやのうちに軽く飲み、それで終わりました。
このエントリには特に「落ち」などなく、ただそういうことがあったなあ、というだけのお話です。まだこのブログを始める前には、この秋山氏率いる議員訪米団(自民・民主)の米国防関係者との面会や軍需産業視察の日程表なども入手したことがありましたが、当時は発表する媒体がなかった(新聞記事になるほどの特徴があったわけではない)ので捨ててしまいました。もっと前からネットとブログがあれば、いろいろ伝えられたのになあと思います。所詮、私の得られる情報などたいしたことはないのですが…。
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3323 産経社員が月刊「正論」の献本を受けて思い出したこと 阿比留瑠比
阿比留瑠比
コメント
色々検索しておりまして、
情勢で検索していたら、ここに辿りつきました。
とても興味深い記事を書かれておられますね。
知り合いですが、中々面白い記事を書いているので、よければ覗いて見てくださいね。
↓
http://plathome.livedoor.biz/archives/52222530.html