北朝鮮の金正日総書記がすでに死亡しているのではないか、今、写真で伝えられている金正日は影武者ではないか、という疑念は以前からある。北朝鮮情勢に詳しい重村智計氏も金正日死亡説・影武者説を提起したことがある。
金正日総書記の元専属料理人だった藤本健二氏の証言は、かなり具体的で日常も金正日と会うことがあったから、信じてよいのかもしれない。2001年4月に藤本氏が北朝鮮を離れるまでは、金正日が健在だったということになる。
それ以前には一九九二年に乗馬中の金正日が落馬して意識不明説があった。藤本氏も「金総書記は落馬して頭部をひどく負傷した」と認めている。この事件と平行して「金総書記が政権を担当できないほどの致命傷を負った」という噂が西側で広まったが、これは間もなく消えた。
金正日死亡説が初めて出たのは、二〇〇四年。11月25日に韓国のソウル汝矣島の証券街で広がった銃撃死亡説。内容は「金総書記に粛清された張成沢(チャン・ソンテク)労働党第一副部長(金正日の妹・金敬姫の夫)の息子が撃った銃弾に当たり死亡した」というもので、軍幹部四人が中国に亡命したという尾ひれも付いた。
韓国の国家情報院がただちに死亡説に「根拠はない」との判断を下し、騒動は一日で幕となった。
二〇〇六年に金正日総書記が死亡したらしいというネット情報がソウル市内に流れ、またたく間に広がった。9月26日のことである。韓国の情報当局や統一部などは「うわさの内容について調べてみると、根拠のないことが確認された」と公式に発表して否定している。また北朝鮮の朝鮮中央通信もこの日深夜「金総書記が軍の部隊を視察した」と報じ金正日総書記が健在だと伝えて死亡説を否定した。
ところが28日になって再びネット情報で、北朝鮮軍部の消息筋の話として「金正日総書記は26日夜7時から8時ごろ、平壌と黄海道を結ぶ道路上で襲撃され、死亡した」という暗殺情報が流れた。これも韓国統一部などが虚偽情報であることをただちに確認し、29日になって問題の記事は削除された。
この年のことだが、在ドイツのクライン孝子女史が金正日死亡説をキャッチしている。
<勤務の特性上中国共産党の高官と接触することが多いので飲み食いの席では色々の情報を得られるのですが、そんな中でつい二十日ほど前に興味深い情報を得ました。その情報とは、北朝鮮の金正日の消息に関するものですが、その高官によれば、金正日は先月の中頃にロシアの病院で手術中死亡したようです・・・。>
私は二〇〇七年以降は金正日総書記が死亡している可能性も含めて、北朝鮮情勢をみることにしている。それと二〇〇二年に盧武鉉政権が誕生して以降、韓国の情報機関が北朝鮮にとって不利な情報は出さなくなったことも合わせて考える必要がある。
強いていうなら二〇〇六年統一地方選挙で盧武鉉政権が手痛い惨敗を喫してレームダッグ状態になるまでは、韓国の北朝鮮情報はかつての精彩を失っている。金正日死亡説が出る度に韓国政府が即日、否定に回ることが繰り返されてきた。
二〇〇四年の金正日暗殺説の時には張成沢労働党第一副部長の息子が撃った銃弾に当たり死亡したと流言が飛んでいる。この直後に張成沢は失脚したと伝えられたが、昨年からは金正日に次ぐナンバーツウとして復活した。復活後は金正雲擁立派になったとみられている。
この当時は金正日の妹・金敬姫は金正男の後見人と目されていた。夫の張成沢も金正男寄り、そのことは張成沢失脚に際して、軍幹部の四人が中国に亡命したという尾ひれがついたことでも分かる。おそらく金正日後継をめぐる金正男VS金正雲が始まっていたのではないか。
二〇〇七年、北朝鮮の金正日総書記が病気に陥っているか、あるいは軍部が総書記に対する謀反を企てた可能性があるとする情報が流れた。時事通信が韓国筋の情報として伝えたもので、金正日総書記は現在、北朝鮮東部の元山にある別荘で軟禁下にある可能性があるというものだが、韓国統一省は否定した。小泉内閣の塩崎官房長官もそうした情報は得ていないと述べた。
そして昨年、二〇〇八年夏から金正日重病説がにわかに広まった。二〇〇八年秋の建国60周年記念の軍事パレードに金正日が出席しなかったこと、当初建国以来最大規模とも伝えられていた軍事パレードが、労農赤衛隊などの民兵のみのパレードにとどまったこと、その他動静の報道が一時途絶えたことから、金正日重病説がかなりの信憑性を持って伝えられている。
ドイツの医療チームに心臓の手術を受けたという情報や心臓病の他、糖尿病、肝臓病、糖尿合併症による腎臓病も患っている説や重篤説がいわれている。二〇〇九年春になって、北朝鮮は金正日の写真を公開したが、以前とは別人のように痩せていた。
このような一連の流れの中で三男・金正雲氏の後継説が北朝鮮国内で繰り返し出ていることをみると、金正日総書記の病状は伝えられるよりも、もっと深刻な段階にある気がする。
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