南アジアに地政学上の地殻変動。NATO撤退後のアフガンを軸に・・・。中国はグアダルーカシュガルーヒマラヤ越えの回廊建設を諦めていなかった。
パキスタンに蘇った魑魅魍魎の政治家はシャリフ。98年のムシャラフ参謀総長(その後、大統領)のクーデターで首相の座から追放された彼はサウジアラビアに十年間、事実上の亡命をしていた。
アフガニスタン戦争で、ムシャラフは米軍に基地を提供し、軍の情報部はタリバンに協力という、途方もない矛盾を屁とも思わずに、パキスタン軍は米国に面従腹背しながら、かのアルカィーダの首領ビン・ラディンを匿っていた。米特殊部隊はパキスタンの主権を無視し、その隠れ家を襲った。
厚顔無恥の典型がパキスタン政界を陣取る。
米軍はパキスタンに経済支援をなし、それでも足りず日本に命じて4500億円の経済支援をさせたけれども、これらのカネはどこへ消えたのか?
ともかく米軍およびNATOはアフガニスタン戦争に深入りし、過去十年間で2兆ドルを費消し、その結果はといえばタリバンの復活とカルザイ政権の腐敗、アフガニスタン政府軍と警察の堕落と無能、そして首都のカブールの治安さえ守れない無政府状態だった。
こうした状況下、アフガニスタンでは次の政治局面をめぐる動きが活発化し、米軍撤退後におきるであろう、カルザイ政権崩壊を射程に、かの魑魅魍魎の典型政治家というより強盗匪賊のたぐいの首魁でもあるヘクマチアル(元首相)がうごめき始めた。
ヘクマチアルはイラン、米国とその胴元を替えながら、最近は中国との接触を深めているという(アジアタイムズ、7月12日)。
シャリフはムシャラフ大統領の失脚、ザルダニ大統領の無能により、さっと祖国へ復帰、首相に返り咲き、しかも亡命先から後日帰国したムシャラフを起訴し、監禁して、そのつぎにやったことは何か?
▼南アジアの地政学を睨んで
シャリフは首相復帰後初の外遊を北京として、しかも李克強首相との会談では「パキスタンと中国の緊密な関係はヒマラヤおりも高く、どの深海よりも深く、あらゆる密より甘い」などと演説し、経済支援の約束を取り付ける。
ザルダニ大統領より、シャリフに政治力があることを内外に見せつけたのである。そのうえでシャリフは次の手を打った。
現在、パキスタンの経済は壊滅状態でもっとも悲惨なのが電力である。一日に20時間停電し、とりわけ政敵ザルダニ大統領の出身地への電力供給は遅れがち、またタリバンの温床となっているバロジスタン地方も、需要の三分の一しか電力が供給されていない。
火力と水力発電は建設が遅れており、とりわけバロジスタン地方の反中国感情と治安の悪化、強盗団、匪賊の跳梁跋扈には手の施しようがない。
中国は建設途次のグアダル港への高速道路ならびに鉄道建設プロジェクトを途中で投げかけていた。
鉄骨やセメント、建材は錆が付き、このプロジェクトは実現が危ぶまれていたが、訪中したシャリフは主契約社の「中国東風電力」を訪問し、プロジェクトの再開を煮詰めた。
パキスタンのエネルギー不足は深刻なことは書いたが、石油はサウジに依存し、ガスはカタールとイランへ依存し、これらのクレジットを新たに中国から取り付けようとした。
またシャリフ首相は「グアダルーカシュガルからヒマラヤを越えて、新彊ウィグル自治区への回廊」の建設を中国が諦めていないことを梃子にして、北京へは同盟関係強化を謳う。
中国は米欧撤退後のアフガニスタンへの政治介入を準備してヘクマチアルにも近づいている。こうなると狐と狸の化かし合いも真剣勝負である。
とりわけカシュガル回廊はヒマラヤ山脈に総延長200キロ物トンネルを掘ろうかという大計画、そのなかには最大24キロのトンネル掘削事業も含まれており、実現性は薄いが、シャリフ・李克強会談では、そうした未来の設計プランについても議論されたという。
杜父魚文庫
13331 狐と狸の化かし合い 中国とパキスタン 古澤襄
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