3440 予想される政治の機能不全 花岡信昭

*「8月総選挙」がいよいよ現実に
通常国会の延長が決まった。7月28日まで55日間。これによって、「8月総選挙」がいよいよ現実味を帯びてきた。
補正予算関連法案の衆院再可決が可能になる「60日規定」を踏まえ、8月上旬まで60日以上の延長も予想されたが、麻生首相は55日間でとどめた。
民主党は予算関連法案を含め、重要法案の処理(つまり、参院で否決し衆院再可決を可能にする)を急ぎ、早期解散への環境を整えたい構えだから、おそらくはほとんどの法案が成立することになる。
延長国会の最終日に解散となった場合、総選挙は解散後40日以内に行うことになっているから、最も遅いケースで9月6日まで含まれる。
7月3日から17日まで天皇皇后両陛下がカナダ、ハワイご訪問のため、日本を留守にされることを考えれば、麻生首相が解散の決断を下すのは7月17日から28日までの間、と見るのが常識的な線だろう。
天皇陛下が不在の場合でも解散は可能だが、これまでそういう「礼を失した」ケースはない。イタリア・サミット(7月8日―10日)、東京都議選(7月12日)をこなした後の時期だ。月遅れお盆の前後は避けるのが政界の常識だから、総選挙は8月9日か30日あたりの可能性が高い。
現在の衆院議員の任期は9月10日までだ。任期満了選挙の場合、公選法で満了の前30日以内に選挙を行うことが決まっている。この期間が国会開会中か、あるいは閉会から23日以内にかかる場合、閉会から24日以後30日以内に選挙を行うことになっている。
7月28日までの延長というのは、この「閉会から23日以内」に「満了前30日」が重なることになる。したがって、任期満了選挙の場合、投票日は8月23日に限定されることになる。
麻生首相としては、任期満了前の解散・総選挙日程を前提とすると55日延長で十分だから、その幅でとどめたということだろう。9月10日の解散で10月総選挙といった「奇策」も想定されていたが、都議選惨敗といったよほどのことがない限り、延長国会の会期中に解散を決断するものと見られる。
もっとも、都議選惨敗の場合は、「麻生おろし」が一気に本格化して総選挙よりも自民党総裁選の前倒しが浮上することになる。
といった次第で、不確定要因は残るものの、政治の現場では、とりあえず8月9日総選挙を目指して、準備が始まっている。昨年10月ごろにばたばたと借りた選挙事務所をいったん返却し、改めて新しい選挙事務所を設営しているところが多い。
*民主党と自民党が拮抗する可能性が高い
民主党は鳩山新体制の人気が高いため、がぜん自信を取り戻しているように見えるが、実態はどうか。総選挙の情勢分析では、一時、民主党「280」といった数字も出回ったが、さすがにそういう見方はなくなったようだ。
民主党内では「300小選挙区で過半数は無理。やはり自民党のほうがどぶ板には強い」といった冷静な見方も出ている。
民主党は国政選挙の比例代表ではコンスタントに2000万票を維持している。民主党ブランドの好感度は自民党よりも高いということだろう。逆に自民党は比例代表では1500万―2500万票とばらつきが目立つ。
文字通りの総力戦となるわけだが、自民、民主が拮抗すると見るのが妥当な線だろう。総定数480のうち、自民、民主両党以外で50-60議席程度か。残り420-430議席を自民、民主両党が争うわけで、ここは「210-210」を軸にぶつかり合う、といった構図を想定する以外にない。
鳩山新体制の支持が高いとはいっても、ご祝儀感を含めた「バブル人気」の様相が濃いといわなくてはなるまい。
小沢一郎前代表が選挙担当の筆頭代表代行として残り、隠然たる力をふるう体制が固まったわけで、「オモテのカオは鳩山代表、岡田幹事長、ウラのカオは小沢氏」という権力の二重構造を国民はどう判断するか。
「友愛で外交、安保ができるか」「おいしそうな政策を並べても財源がはっきりしない」などといった批判もある。
つまりは、自民側が勝つにしろ、民主側が政権奪取に成功するにしろ、紙一重の差というきわどい選挙結果になる可能性が高い。仮に自公与党が勝って麻生政権維持となった場合、再可決が可能な3分の2ラインにはとても及ぶまい。
民主側が勝つにしても、社民、国民新党などを加えて、過半数をわずかに上回る程度となるのではないか。共産党が候補を擁立しない選挙区の共産支持票はかなりの部分が民主候補に上乗せされるわけで、共産党の影響力の強い政権が生まれるといってもいい。
*国家的問題の解決のために待たれる大連立
民主党の政権奪取が成功すれば日本政治では初の本格的な政権交代ということにはなるのだが、衆参ねじれは解消するものの、安定した強力な政権が誕生するのかというと、ちょっと違うように思える。
自民党内部には、「そうなったら、1年で政権を取り戻す」と豪語する向きもある。来年夏の参院選を衆院総選挙とのダブル選挙に持ち込むというのである。
自民も民主も「ぶっちぎり」の圧勝に終われば、また違った様相が出てくるのだが、いずれが勝つにせよ、「辛勝は必至」と見られていることから、大連立再燃の可能性も喧伝されている。
日本政治が直面する最大の課題は、内政では、年金、介護、医療など福祉政策充実のための財源としての消費税引き上げだ。外交安保政策では集団的自衛権の見直しだろう。この重要課題に決着をつけるには、大連立が一番いい。
消費税にしても、自民、民主双方とも将来の引き上げは不可避という認識で一致しているものの、与野党でぶつかり合っている現状では、いつまでたっても結論は出ない。選挙で増税を掲げて戦えるわけがない。ドイツの場合も2005年の大連立によって、消費税引き上げが可能になった。
 
といった事情を考えれば、日本政治の抜本的な立て直しには大連立しかないように思えるのだが、今回の総選挙でそれを期待するのは無理だ、という声が出始めている。
来年夏の参院選が決まっているのだから、大連立を仮に実現させても、来夏には再び激突することになる。大連立期間は1年もないというのでは意味がない、ということになる。
*来年夏の選挙まで混迷は続く
そこで、このところ永田町で耳にするのが、「来年夏の衆参ダブル選挙後の大連立」というシナリオだ。来年夏の参院選を終えれば、その後、解散があれば別だが、3年間は国政選挙がないことになる。この3年間を大連立期間にあてるのが日本政治のためには一番いい、というのである。
 
絵にかいたモチのようには進まないのが政治の世界だが、理想と現実を天秤にかけて考えれば、「来夏の大連立」はあり得るケースである。その一方で、今回の総選挙の結果、どういう政権が誕生しようとも、来年夏まで政治はほとんど機能しないという現実を覚悟しなくてはいけないことになる。
麻生政権が通常国会で2008年度第2次補正予算、2009年度本予算、09年度補正予算の大型予算3本を成立させるという「快挙」をなし得たのは、衆参ねじれ構造を背景に、衆院再可決が可能な「参院60日規定」を巧みに使ったのが最大の要因だ。
常に60日の余裕をもたせて予算審議に臨んだわけで、民主党側も審議拒否批判を恐れ、早期成立に「協力」せざるを得なかった。
その「キーカード」がなくなるのだから、後に残るのは混迷しかない。仮に民主党が政権奪取に成功した場合、自民党はここぞとばかり「報復戦」に出るだろう。民主党側がわずかに過半数を上回ったようなケースでは、一本釣りで過半数割れを狙うという荒業が展開されるかもしれない。
もともと民主党には自民党から出たくても選挙区が埋まっていて出られなかったという議員が少なからずいる。そういう議員には「次の選挙では対立候補を立てない」と約束すればいい。
いずれにしろ、総選挙後は尋常ではない政治状況が現出する恐れがある。来年夏までの機能不全状態を覚悟しなくてはなるまい。それもまた、「国家再生」のための産みの苦しみと考えることにすれば、必要な体験期間となるのかもしれない。(花岡信昭メールマガジンから転載)
杜父魚ブログの全記事・索引リスト

コメント

タイトルとURLをコピーしました