6472 中国の国家ファンドの脅威 古森義久

中国の金融活動での脅威について書きました。アメリカ議会が懸念を深めているという報告です
国際金融市場のモンスターとして警戒された中国の国家ファンドへの懸念が、米国議会で改めて語られるようになった。日本にとっても無縁の対象ではないか ら米側の懸念の理由を知っておくことも必要である。
国家ファンドとは国家の保有外貨のうちの資金を別個に運用して投資する政府機関、あるいはその資金を指す。正式には「主権国家資産ファンド(SWF)」 と呼ばれるが、日本では「政府系ファンド」などと称されることもある。だが実態を考えれば、国家ファンドと総括するのが正確だろう。とくに国家意思が直線 的に出る中国のSWFは政府系ファンドと呼べば誤訳になってしまう。
中国の国家ファンドとは中国政府の貿易黒字などからの保有外貨総額2兆5千億ドル以上のうちの2千億ドルを投入して、国務院が2007年9月に創設した 「中国投資有限責任公司(CIC)」である。国家ファンド自体はサウジアラビア、ロシアなど他の諸国にもあるが、みな石油など特定産品からの収入を集め商 業ベースで運用している。だが中国の国家ファンドは機能の仕方が異なるため米国側で警戒するのだ。
その警戒や懸念は、米国議会調査局が上下両院議員の法案審議資料としてこのほど作成した「中国の主権国家資産ファンド=その発展と政策上の意味」と題す る報告に詳しく記されていた。同報告は「中国の国家ファンドCICは国務院(内閣)に直結し、中国の巨額の対外黒字全体をプールとし、商業ベースを超え て、中国政府の政策の一環として戦略的目的で機能するため米国の国家安全保障を脅かす危険もある」という認識が米国議会に広がってきたと、警鐘を鳴らすの である。
中国の国家ファンドについては米国議会の政策諮問機関「米中経済安保調査委員会」が08年にも詳しく調査し、警告を発した。当時、CICと一体で国家 ファンドとして機能する中国政府機関の「国家外貨管理局」が、中米コスタリカの政府債券を台湾との外交関係断絶を条件に大量に買ったことから、中国の国家 ファンドの活動は経済ではなく政治や安全保障が主目的だとの見方が強くなった。
今回の報告によると、国家ファンドはその後、世界的な金融危機のために活動を縮小したが、昨年からまた活発となってきた。
CICは従来、諸外国の金融機関への消極的な投資がほとんどだったのが、昨年夏から米国の大手電力企業「AES」や、カナダの世界規模の石炭企業「サウ スゴビ・エネルギー資源」などエネルギー分野の企業の株を大量に買い、いずれも取締役任命権を得た。さらにフランスの原子力発電企業、オーストラリアの鉱 山企業、ロシアのアルミニウム製造企業などの株取得にも着手し、中国の国家のためにエネルギーと鉱山資源を確保する戦略的な活動を強めているという。
同報告は特にCICの米国への資金投入が今年2月の時点で総額96億ドル、対象の企業などの組織は合計82に達したことを強調する。電力、鉱山、通信、 ハイテクなどの領域の大企業への利益追求を無視したような投資が増えているという。
同報告によると、米議会ではCICの活動が米国の国家安全保障にも悪影響を及ぼしかねないとの懸念から、現行の「外国投資国家安全保障法」を強化する形 で、米国内で活動する外国の国家ファンドに対し規制を強めることを検討し始めた。具体的には(1)国際会計基準での財政監査証明の公表を義務づける(2) 米国の特定分野の企業の株取得の比率制限を現行より厳しくする(3)米国企業の役員や幹部社員の任命権取得を制限する(4)とくに中国に対しCICが米国 に投資できる自由と同じ程度の門戸開放を求める-などの策だという。
一方、CICはいま保有基金を倍増し、4千億ドルにする計画を進めているといい、中国の国家ファンドのあり方が米中関係の新たな火種ともなりかねないよ うだ。
杜父魚文庫

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