9242 流れを作る、ということ 岩見隆夫

流れを作る、というのは、リーダーの迫力、胆力とか信用力、説得力、さらには接触相手と息を合わせる人間的な魅力など、器量に左右されるのではなかろうか。
野田佳彦首相と自民党の谷垣禎一総裁の密会説は、野田が、「表でも裏でも大いにやってしかるべきだ」(4日の民放テレビ)
と裏をあっさり認めた。だが、かりに両トップの間でなんらかの合意に達したとしても、それが直ちに流れになるわけではない。
4日朝のTBSテレビ系政治番組<時事放談>。自民党の石破茂前政調会長が、「2人の会談は当然あるべきことだ。国難にどう対処するか、これからも会えばいい」
と言えば、野田の後見役と言われる民主党の藤井裕久税調会長(元財務相)が、「何らかの意思の疎通があったようだが、世の良識ある人たちは『よくやってくれた』と言っている」と応じた。
しかし、何が話し合われたかは、メディアの推測の域を出ていない。ある席で、民主党議員が、「消費増税法案さえ通してくれれば首相を辞めてもいい、と野田さんは言ったはずだ。そういう人ですよ、野田さんは」
と推測してみせると、自民党議員が、「そんなことを言うはずがない。2人とも9月の党首選を乗り切ろうと必死なんだから」と反論、かみ合わない。
何が話し合われたかはおいおいわかってくるだろう。気になるのは、両トップの接触が醸し出すインパクトの大小だ。民主党の実力者の一人は、
「党内に造反グループがある以上、民主、自民両党の良識派が手を結んで、消費増税はもちろん懸案を片づけるしかない。中連立だ。造反は切ればいい」
と割り切るが、かりに中連立構想に動くとしても、衆参両院で多数派を形成できるかどうかがカギになる。
連立という難作業の成功率は当然低い。このところ、福田康夫首相と小沢一郎民主党代表による大連立(07年11月)、菅直人首相と谷垣総裁の大連立(11年3月)と失敗が続いている。
菅が電話で、「副総理兼震災復興担当相を……」と谷垣に持ちかけた軽率さは論外だが、さて、野田・谷垣関係はうまく共振するか。
戦後政治史のなかにも、いろいろなペアがあった。すぐに思い浮かぶのは、自民党の金丸信元副総裁と社会党の田辺誠元委員長のツーカーの間柄だ。金丸は著書「立ち技 寝技」(日本経済新聞社・88年刊)のなかで、
<人間田辺と人間金丸の関係は、他人の目には癒着に見えるようだが、そうではない。社会党と自民党とは主義主張が違うとはいえ、互いに話し合いを続けるなかで、お互いの気持ちを察する。これが民主主義の政治だと思う。田辺君も
「私は金丸信と癒着しているかもしれない」などと人前で堂々と言っているところをみると、安心して私と付き合ってくれているのだろう>
などとあからさまに書いている。金丸の器量、田辺の柔軟を思わせる。
昨年夏、代表選を控えてのころだが、野田は、「衆参がねじれている状況では、連立でなければ政治は前進しない。下心でなく真心で訴えれば、聞いていただけると思う」
と民主・自民・公明3党大連立による救国内閣構想を打ち上げていた。それから7カ月、野田の器量、谷垣の柔軟が試される。(敬称略)
杜父魚文庫

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