■安倍につきまとう病気の不安
安倍新政権の骨格が固まってきた。太筆書きすれば自民党幹事長には総選挙の大功労者である石破茂を留任させ、副総理・財務相には親密な関係にある元首相・麻生太郎を起用して2本柱とする。内閣官房は“お友達”の側近でだけで固めるという構図だ。
総じて自ら名付けた“危機突破内閣”は、挙党態勢を目指して安定感があるといえる。人事の背景を分析すれば、「麻生副総理」は“石破強大化”へのけん制の側面を持ち、潰瘍性大腸炎再発による弱点を補う思惑があろう。
26日の組閣に先立って、永田町に様々な人事情報が飛び交っているが、確度の高いものを挙げれば、まず官房は圧倒的に側近で固めて防御ラインを敷いている。官房長官には安倍擁立の立役者の幹事長代行・菅義偉を起用。
同副長官には衆院から総裁特別補佐・加藤勝信、参院から政審会長・世耕弘成を内定。加藤は先の消費増税に関する3党合意をとりまとめた政策通の側近。世耕は第1次安倍内閣でも首相補佐官を勤めており、官房は手堅い布陣だ。
一方閣僚人事の目玉はいささか「昔の名前で出ています」気味だが、親しい麻生を副総理兼財務相に起用し、民主党政権で強大になりすぎた財務省に“重し”を乗せた。加えてやはり総裁経験者の谷垣禎一を重要閣僚に起用、親しい石原伸晃を入閣させ、挙党一致色と重厚さを濃厚に打ち出す。
側近の甘利明は景気回復の司令塔となる経済財政諮問会議と、新設の日本経済再生本部を担う「経済再生担当相」に起用する。
加えてやはり側近の下村博文を環境相に、公明党から入閣する前代表・太田昭宏を国交相とすることを検討している。防衛相には国対委員長・浜田靖一が取りざたされている。加えて政調会長・茂木敏充、参院から元副外相・山本一太、山谷えり子が入閣しそうだ。
新政権の内閣側は総じて“お友達色”が濃厚に出ているが、これは安倍の政治姿勢にも通ずる側面がある。つまり“身内”起用で防御の土塁を出来るだけ厚くしようということだ。安倍にはいささか“小心”さが感じられるゆえんであろう。
これには永田町でささやかれている問題が絡んでいる。それは第1次安倍内閣を退陣に発展させた潰瘍性大腸炎の再発である。
安倍は9月の総裁選では「2年前に画期的な新薬ができて、そのおかげですっかり完治いたしました。」と述べていたが、総選挙期間中はトイレに駆け込む場面も目撃されている。最近では説明も「医学的には完治していないが、新しい薬で十分コントロールできている。主治医から太鼓判を押されている」と変化して、再発を認めている。
安倍の言う画期的な新薬は「アサコール」のことのようだ。この薬は大腸の炎症を抑え、腹痛、血便などを改善するが、副作用もある。主な副作用として、腹痛、下痢、腹部膨満、吐き気、頭痛、潰瘍性大腸炎の悪化、大腸ポリープなどが報告されているという。下痢がさらに悪化する可能性があるのだ。
選挙戦の激務には耐えられても、首相の激務に耐えられるかどうかだ。選挙戦は“攻め”だが、首相の座はこれに神経をすり減らす“守り”が加わる。
こうした事情から安倍は「体調管理を優先し、休養できるところはちゃんと休養するという原則を持ちたい」と、発言しているが、これは言いたくはないが言った発言だろう。そこで最大の目玉である「麻生副総理」人事が「なるほど」と首肯できることになるのだ。「休養」の「補完」的な色彩を帯びるのだ。
加えて麻生人事には冒頭挙げた石破けん制がある。というのも今度の選挙は石破の功績が極めて大きい。石破は谷垣に政調会長をクビになった後、地方の落選候補支援に専念した。総裁選の際、地方党員票でトップに立ったのは、紛れもなくその努力の表れであった。
永田町ではいささか大げさだが自民党294議席中200議席が石破チルドレンとの説もある。石破の発言力は政権最大であろう。
麻生はかねてから石破とはそりが合わず、内閣の重鎮に据えれば党は石破主導型でも、内閣は安倍・麻生主導型で対応できるという算段がある。
しかし麻生は「お坊ちゃま型失言癖」があり、最近の街頭演説でも安倍のいる前で「安倍さんの健康がどうとか言っている人がいるが、言っていた人の方が倒れた。健康というのは、人がとやかく言うものではない。自分が一番分かっているのだ」と安倍がひたすら触れないできた病気に触れてしまった。
政権時代に露呈した漢字の読み違い、高級バー通いなどマスコミが喜びそうな性癖を持っており、記者会見や国会答弁が危惧(きぐ)されるところだ。
こうして様々な問題を抱えながらも安倍政権はスタートを切るが、久しぶりの本格政権であることは確かだ。かじ取りはうまくやってもらいたいものである。(頂門の一針)
杜父魚文庫
11271 内閣は安倍・麻生コンビ、党は石破主導 杉浦正章
杉浦正章
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