11667 尖閣をめぐる一触即発の状況下、金融界はまるで緊張緩和  宮崎正弘

台湾も人民元直接取引に加わって、在台湾の邦銀も参加した。中国が仕掛けている尖閣戦争前哨戦は公海上でのレーダー照射事件が示すように「一触即発」の危険性がでてきた。
米国も中国に対して強く自制を求めるが、中国外務省の報道官は、「知らないし、それは関係方面に聞いてくれ」と頬被り、議論は習近平がどこまで軍権を掌握しているか、軍の暴走かの見極めにあるという。
他方、中国が自制を求めても暴走を続ける北朝鮮は、ロケット発射実験、核実験の準備怠りなく、数年以内に核弾頭小型化に成功すれば、米国も射程に入る。米国の核の傘は、いよいよ破れ傘になって、日本の単独核武装が日程にのぼってくることになるだろう。

こんなおりに金融界では反対の動きが如実である。台湾が人民元経済圏に蚕食され、ついに人民元との直接取引を開始したのだ。
従来、台湾と中国の貿易決済は、殆どが米ドル建てで行われてきた。これを両国は上限幅を設けて、ドルを通さないで、為替リスクと手数料など余分な経費を使わずにすれば、企業も投資家も余分な経費に煩らわされないで便利と言うわけだ。そんな表向きの理解だけで、中国の裏の戦略を軽視するのは商人の行動規範でしかない。
台湾では中国銀行台湾支店に各行が口座を開設し、中国銀行が示す為替レートで人民元と交換する。すでに外資系を含む46行が認可を取得し、2月6日から一斉に人民元直接取引を開始した。
その中には日本のみずほ、三菱、三井住友も加わっている。中台間の貿易は2012年に1216億米ドルと突破し、ながらく敵対関係にあった過去の政治境遇は嘘のようになり、人民元建ての預金口座を台湾で開設する企業や個人も増えた。
 
 ▼中国の底意を判定しないで突っ走るのは危険ではないのか?
問題は、中国の究極的狙いなのである。
すでに小誌でも何回か指摘したように、人民元が米ドル、ユーロ、ポンド、スイスフラン、日本円に対抗して、世界の通貨覇権を確立するために、米ドルの基軸通貨の位置を脅かす長期戦略の基づいての段階的行動であり、香港、ブラジル、露西亜、マレーシアでの人民元と現地通貨とのスワップ、香港での人民元オフショア市場、そして人民元建ての中国国債を香港からロンドンへと拡大させ、この過程では日本も人民元建て中国国債を保有し、昨年6月には人民元と日本円の直接取引も開始、日本でも、ついに人民元建て外貨預金が登場している。
日本経済新聞(2月6日付け、東京夕刊。三版)はこう書いた。
「中国にとっては人民元経済圏の拡大で、安全保障上のリスクになりかねない米ドルへの過度の依存を軽減する狙いがある」と。
この解説は生ぬるく、誤解を与えかねないが、要するに「米ドル基軸通貨体制(ブレトンウッズ)に風穴をあけ、ドル覇権を脅かし、いつの日か人民元覇権を打ち立てるという長期戦略の段階的戦術に他ならないのである。
米国は表向き日本や台湾に抗議してこないが、通貨体制が崩れていくことに不快感と不安を募らせている。同盟国ニッポンは尖閣であれほどの挑発を中国から受けながら、中国の経済戦略に協力的であるというのは矛盾していないのか。
杜父魚文庫

コメント

タイトルとURLをコピーしました