13763 【産経の政局考(3)麻生太郎副総理兼財務相】  古澤襄

■「ポスト安倍」蜜月いつまで
良くも悪くも、耳目をひく政治家ではある。
外遊の際、真っ黒なソフト帽にロングコートというマフィアばりのいでたちで空港に現れて注目を集めたかと思えば、憲法改正にからみナチス政権を引き合いに出して国際的な批判を浴びたのもこの人ならでは。
そして、「ポスト安倍」候補として真っ先に挙がるのも麻生太郎という名前。第2次安倍晋三政権で副総理兼財務相という重責を担う麻生は果たして、首相を支える名参謀なのか、それとも寝首をかこうともくろむ梟雄(きょうゆう)なのか-。
■首相と気脈通じる
安倍「酒はいいですね」
麻生「それはそう。でも、どこで飲むのを止めるのかが一番難しい」
自宅が近所ということもあり、麻生はしばしば、東京・富ケ谷の安倍の私邸に出向き意見を交わす。2人の会話は政権運営や党内情勢だけでなく、酒のたしなみ方にも及ぶ。気脈を通じた仲だ。
麻生は、第2次安倍政権が発足すると、高支持率の源泉となった経済政策「アベノミクス」の第1の矢である「大胆な金融緩和」の実現に向けて奔走した。
日銀法改正をちらつかせてインフレ目標設定や無制限の金融緩和など金融政策の変更を日銀に迫る安倍と、慎重姿勢を崩さない当時の日銀総裁、白川方(まさ)明(あき)との対立が先鋭化しそうになると、麻生はこう安倍に耳打ちした。
「ここで日銀総裁に辞任されたら内閣が吹っ飛びます。慎重にやりましょう」
政府と日銀による共同文書の作成で、通常は事務方が調整する文章内容を白川と2人でホテルにこもり、膝詰めで議論を重ねた。白川の後任総裁人事でも国内外の情報収集を図りながら安倍と緊密に連携し、黒田東(はる)彦(ひこ)に決めた。
さらに、自民党政調会長の高市早苗が5月に過去の植民地支配と侵略を認めた平成7年の「村山談話」に疑問を示すと、官房長官の菅(すが)義(よし)偉(ひで)に「高市の発言に閣僚を絶対同調させてはいけない。内閣不一致だけはダメだ」と忠告。海外から安倍政権の外交方針がブレて映らないように閣内の引き締めを図った。
■政権のアキレス腱?
こうして、安倍の「後見人」としての立場を着々と固めつつあるように見える麻生だが、必ずしも安倍の意見と完全に一致しているわけではない。
その最たる例が消費税率の引き上げ問題だ。麻生は「決めるタイミングは早い方がいい」と、消費税増税法通り来年4月に8%への引き上げの流れを作ろうと動いた。これに対し、安倍は慎重だった。
首相の経済政策ブレーンの内閣官房参与、本田悦朗らは「デフレ脱却の妨げになりかねない」として引き上げの先送りや、毎年1%ずつの引き上げなどを唱える。増税の是非の判断をめぐり今後、「安倍-麻生ライン」に亀裂が生じる可能性も否定できない。
一方で、歯に衣(きぬ)着せぬ発言が売りの麻生に対し、「政権のアキレス腱(けん)になりかねない」(自民党中堅)との懸念は消えない。
7月29日の講演で憲法改正にからみナチス政権を引き合いに出した発言は、その不安が的中した形だ。自民党が参院選で圧勝し安定した政権基盤を手に入れた直後だったことに加え、追い込み態勢の2020年夏季五輪の東京招致にも影響が出かねないため、官邸は火消しに躍起になった。
■町村派と摩擦も
麻生は自民党麻生派(34人)と大島派(13人)との合併を模索。実現すれば党内第3派閥になり、領袖(りょうしゅう)としての発言力も増す。派閥勢力の拡大路線は安倍政権の党内基盤を固める狙いがあるようだが、党内には「ポスト安倍」への布石と見る向きもあり、安倍の出身派閥の町村派(87人)との摩擦も起きかねない。
そうした中で、麻生は毎週木曜日に開く派閥例会で「党内で意見の違いはあるが、一致団結して決めたことは素早く進めていくことが大切だ」と訴え、党内の結束を呼びかける。党の支持団体から大会などに呼ばれても、安倍が出席するときは参加を控えている。
ただ、安倍を立てる麻生の振る舞いは、かえって野心を覆い隠すためのポーズのようにも映る。
安倍も閣僚の一人に「麻生さんの顔は必ず立てるように」と指示。フェイスブックにツーショット写真を掲載する気遣いをみせる。
2人の蜜月関係は今後も続くのか。安倍-麻生ラインが政権の命運を握っているのは間違いない。(産経・坂本一之)=敬称略
      ◇
■あそう・たろう 昭和15年、福岡県飯塚市生まれ。72歳。学習院大政経学部卒。射撃でモントリオール五輪に出場。麻生セメント社長や日本青年会議所会頭を務め、54年に衆院旧福岡2区(現福岡8区)から出馬し初当選。
当選11回。経済企画庁長官や総務相を歴任し第1次安倍内閣では外相。自民党幹事長を経て平成20年、第92代首相。今年7月には夏季五輪の東京招致でスイスでのプレゼンテーションにも参加。
杜父魚文庫

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