■選挙ボイコットの野党、バンコク騒乱、13日から総力ストへ
おとなしい仏教国に意外な側面があるのは、少数民族問題とバンコクの富裕層、中間層がほとんど華人であるところから生じている。日本のマスコミが、この観点から分析しないのはおかしい。
タイの経済の中枢は華僑が牛耳るため、カレン、カチン、モンなど少数民族の不満はつねに燻ってきた。
現在のインラック首相はタクシン前首相の妹、いうまでもないが華僑の末裔である。他方、野党率いるアピシット前首相も華人であるが、支持基盤は都会。インテリ、知識人、中間層が圧倒的に支持する。
地方は少数民族が多いうえに貧困、学歴が低い人が多く、疎外感が強い。この人たちにばらまきをやって首都を制圧したのがタクシン前首相の遣り方だった。かれはメディアと通信ビジネスで巨富を築き、政治に打って出たのだった。
1973年の血の日曜日事件。
学生がタノム首相の腐敗を糾弾し、立ち上がったが、軍の弾圧で数百名が死んだ。ところが日貨排斥という反日運動にみえた学生運動は内ゲバをくりかえし、要するにチュラロンコン、タマサートなど一流大学に通う華僑の末裔と、地方出身は貧困ゆえに職業学校に入れるのが精一杯で、不満が爆発し、学生運動は分裂した。
しかし「血の日曜日事件」という強圧政治と軍の弾圧は、反作用としてタノム国外逃亡へいたり、結果的にタイの民主化が実現した。
しかしことあるごとに軍が政治に介入するのは、もはやタイのまつりごとの伝統と言って良いだろう。前回も軍事クーデターがおきたが、驚くなかれ! 国民が支持した。
1月13日からタイはストライキにはいり騒然となる。七つの主要な交差点が封鎖されて、集会が予定されているため、日本人学校は休校になる。すでにタイ進出のトヨタは郊外に拠点を臨時に移動、味の素は、オフィスビルを閉鎖し、全日空は乗務員のホテルを飛行場近くに移動するなど慌ただしく対策に追われている。
バンコクの首都の交通が麻痺し、前回同様にバンコク国際空港がデモ隊で封鎖されるリスクも高まると、またまた「期待される」のが軍の介入である。
軍は18日に「国軍パレード」を予定しており、この日を基点としてクーデターがおこる可能性が高まっているという不穏な観測が急速に拡がっている。中国の反日暴動から、タイへ拠点換えをしている日本企業も多い。嗚呼、一難去ってまた一難。
杜父魚文庫
15154 タイの政治混乱は軍のクーデターが治める 宮崎正弘
宮崎正弘
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