中日両国は7日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)に合わせて釣魚島(日本名・尖閣諸島)を含めた幅広い分野に及ぶ対話の再開で合意した。この意表を突くニュースは、アジア太平洋地域の外交がまだ機能していることを示している。
ほぼ全ての関係者がこの展開を喜んでいると思われるが、注目すべき例外者がいる。中国人民解放軍だ。
東・南シナ海上でここ2年間に起きている領有権争いの最大の受益者は中国軍だ。中国の海・空両軍は日本やその他周辺各国との対立で前衛を担ってきた。彼らの功績を伝える(中国語の)報道によって、人民解放軍は予算支出の増加や軍が同地域での外交協議に不可欠な存在だとの主張を十分正当化できた。
今回の外交的取り組みが勢いに乗れば、人民解放軍は影響力を失うことになる。しかも、上級幹部の汚職を防止できなかったとして厳しい批判にさらされているこの時期にだ。
習近平国家主席は6日、人民解放軍の会計検査署の所属を総後勤部から習氏率いる中央軍事委員会の直下に移すと発表した。この1週間前、習氏は中央軍事委員会の主要会議に出席。司令官らの前で、共産党は中国軍に対して「絶対的指導力」を保持していると強調した上、軍は「腐敗を罰し、より厳しい規律を保つよう」さらなる措置を講じる必要があると述べた。
国営メディアも軍を厳しく批判。階級特有の汚職を非難し、腐敗疑惑が国家のイメージを損なったと指摘した。軍の主要機関誌である解放軍報さえも「軍関係者内には腐敗をはびこらせやすい不健全な雰囲気がある」と認めた。
人民解放軍が名誉を挽回する上で、領有権争いは格好の機会となった。釣魚島をめぐる日本との争いは特にそうだ。他国との衝突の不安が存在する限り、軍指導部は、政府内で影響力を維持できるだけでなく、習氏の反腐敗防止の取り組みで矢面に立たされずに済むとそれなりに自信を持つことができた。
だが、事態は今、不透明な様相を呈しつつある。
習氏が中国軍の腐敗を再び厳しく取り締まり始めたことは、政策協議の場から軍を締め出すという政治的リスクもいとわないことを示している。これに加え、東シナ海をめぐる中日の緊張が多少なりとも緩和される可能性が出てきたことで、人民解放軍の指揮官らは部屋からたたき出される危険に突如さらされていると考え始めているかもしれない。(米ウォール・ストリート・ジャーナル)
■筆者のラッセル・リー・モーゼス氏は北京中国研究センターの主任教授。現在、中国の政治システムにおける権力の役割の変遷に関する本を執筆している。
杜父魚文庫
17683 日中対話の再開、喜ばないのは中国軍だけ 古澤襄
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