誰がなっても「待ち」しかない
テレビで民主党政調副会長の岸本周平と後藤裕一の話を聞いたが、総選挙はすさまじい戦いだったらしい。岸本が「拒否されるならまだ関心があるからいい。有権者は民主党に無関心だった」と述べれば、後藤も「握手をしても相手はそっぽを向いていた」のだそうだ。
二人とも駄目かと思っていたが、投票ぎりぎりになって「自民党に300議席取らせていいのか」という訴えが利いて、やっと当選できたのだという。まさに九死に一生を得た選挙だったようだが、党建て直しのための代表選挙が動き始めた。来年1月に党員サポーターも参加して実施することになった。
しかし、候補者の顔ぶれを見ると「昔の名前で出ています」ばかりだ。細野豪志、岡田克也、前原誠司、枝野幸男、馬淵澄夫らの名前が挙がるが、賞味期限の切れた納豆がまだ食べられないか匂いを嗅いでいるような状態だ。
唯一若手で論客の玉木雄一郎の名前があがっているが、知られていないだけの新鮮さではどうしようもない。問題は枝野がどうして候補になり得るかだ。党幹事長は民主党代表だった海江田万里と同じで、選挙敗北の一級戦犯である。ここは本人が辞退した方がよい。「代表選マニア」の馬渕も「出ると負け」で、もう新鮮味はない。
有力候補を分類すると政界再編を売りにする再編派と党再建を重視する再建派に分けられる、前原、細野が再編派、岡田、枝野が再建派だ。
前原は維新共同代表・橋下徹と密接な関係を維持しており、再編派筆頭と言える。民主党内には民主党の73議席と、維新の41議席を合わせれば100議席を超えて政権交代の基盤となり得るという見方が出ている。
しかし失礼ながら駄目政党と駄目政党が合流しても駄目の二乗になるだけで、何ら躍進ムードを感じさせない。単なる数合わせの野合をしても、一強自民に勝てるだけの勢いは生じようがないのではないか。
連合、日教組などを基盤とする党内左派と前原や維新系など右派との対立が激化することは目に見えている。したがって再編派は再編する前から破たん気味なのだ。前原は党を分裂させてでも再編に動くかといえばそうでもあるまい。
かねてから「大きな家論」を唱えており、基本的には民主党が維新を吸収する構想だ。
再編派の細野も原発担当相だったころ私的検討会(核不拡散研究会)が、こともあろうに韓国の使用済み核燃料の受け入れ先に、日本の青森県六ヶ所村を候補として挙げたことが、強いひんしゅくを買うなど、政治家としての方向性が今ひとつぱっとしない。
かつて元アナウンサーの山本モナとの不倫関係がやり玉に挙がったりしており党内的な人気の広がりが生ずるかどうかは不明だ。しかしこれらマイナス要素は、細野の立候補を止めるほどの内容とはならないだろう。
一方再建派の枝野は、こまっちゃくれが原因してか選挙でも国民的な人気が盛り上がらず、選挙戦への貢献度は少ない。岡田は再建派ながら野党再編を否定しているわけではない。
「野党も一つの固まりを作る努力をしなければならない」と述べている。しかし左派からの支持を意識して、声高に再編論を唱えないだけだ。左派はどう動くかだが、候補がいないのが実情だ。
労組系には元衆院議長・横路孝弘を推す動きもないわけではないが、まだ海の物とも山の物とも言えない状況だ。日教組幹部で参院副議長・輿石東を軸とする左派が、岡田でやむなしに固まれば、岡田が最有力候補になり得る。
消去法で消してゆくと1人も候補が居なくなてしまうのが実情だが、ここは岡田の再登板が一番安定した流れとなりそうな気配も感ずる。夏の「海江田降ろし」でも岡田を担ぐ動きが見られた。細野と岡田の対決が軸となれば結構まともな代表選の流れとなる。
いずれにしても、民主党は予見しうる将来にわたって「待ち」の政党を余儀なくされる。「待ち」とは自民党が大失政や大スキャンダルでずっこけるのを待つしかないということだ。
首相・安倍晋三による長期政権はよほどのことがない限り崩しようがないだろう。万一安倍が高転びに転んでも、自民党は総裁を交代させるだけであり、政権交代にはなかなか結びつかないだろう。
3年間の大失政政権で失った民主党への信頼が回復するには、地道な草の根からの地盤作りを続けるしかあるまい。それには時間がかかる。魔法のような「風」は誰が党首になっても吹くことはない。(頂門の一針)
杜父魚文庫
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