18020 ヒラリー・クリントンの外交政策    古澤襄

ヒラリーが米政治史上、初の女性大統領になる可能性がある。オバマに比して外交タカ派という風評もあって、米民主党内の左派が警戒しているという論評(ロイター・コラム)も出ている。
ヒラリー外交があるとすれば、国務長官時代の発言や行動が参考になる。ボストン大学で国際関係学を担当するアンドリュー・バセビッチ教授は「(クリントン氏が)出馬する場合、履歴書の中で最も重要なのは国務長官の経歴」と話している。
だがそれをもって外交タカ派と断じてしまうのは無理がある。むしろオバマ政権の無力な外交政策との違いを強調したかったのではないか。
旧聞に属するがことし三月にヒラリー国務長官が国連本部で初めて外交政策に関する自分の考えを口にした。米ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。
また八月に外交政策に関するビジョンを表明、米ブルームバーグが報じたが、その内容はオバマに対する批判で彩られた。これらからヒラリー外交を想定するしかない。
バセビッチ教授は「国務長官としての彼女の功績と言えるような具体的な業績や重要な戦略、創造的なアイデアを挙げるのが難しい」と辛い点をつけている。
だが米国の大統領は絶対的な権限を持っているから、国務長官としての発言、行動が制約されていたのは否定できない。大統領に選ばれたら、ヒラリー外交がどんな展開をみせるか、問題は二年後なのだろう。
8月10日(ブルームバーグ)ヒラリー・クリントン氏は2008年の米大統領選挙の民主党予備選挙時にオバマ氏がクリントン氏を攻撃する際に使ったテーマと同じ論点を持ち出して、大統領への対決姿勢を示した。それは外交政策に関するビジョンだ。
クリントン氏にインタビューした米アトランティック誌によると、同氏はオバマ大統領には明確な信条が欠けているとの認識を示した。出馬表明はしていないものの、クリントン氏は2016年の米大統領選に向け、共和、民主両党を通じて有力候補に取り沙汰されている。
クリントン氏は「偉大な国には体系化された原則が必要だ。『ばかげたことはするな』というのは、それには該当しない」と発言。オバマ大統領と側近は、大統領の外交政策に対する姿勢を「ばかげたことはするな」と表現しているが、クリントン氏はそれはオバマ氏の「政治的メッセージ」であって「世界観ではない」と述べた。インタビューはブルームバーグ・ビューのコラムニストでもあるアトランティック誌のジェフリー・ゴールドバーグ氏が行った。
クリントン氏は6月に回顧録を出版するなど、オバマ大統領との違いを打ち出そうとしている。08年の大統領選の際、戦争にうんざりした気分が広がる民主党内にクリントン氏の強硬な政策は浸透せず、同氏は打撃を被った。しかしクリントン氏の政策は現在それほど強硬ではなく、調査によると民主党は同氏を中心にまとまっている。
オバマ大統領と一線を画すのは、クリントン氏にとって不可欠な戦略ともなっている。大統領の支持率が急低下しているからだ。米CBSが7月29日-8月4日に実施した世論調査によると、オバマ大統領の外交政策の手腕を評価するとの回答は36%、評価しないとの答えは48%に上った。(米ブルームバーグ)
■強硬な発言始めたヒラリー氏―大統領選念頭にオバマ政権と距離?
ヒラリー・クリントン氏が外交政策に関する考えを口にし始めた。イランやロシアなど対する発言のトーンはオバマ大統領より厳しい。クリントン氏が2016年の米大統領選に出馬した場合、国際紛争に関して厳しい姿勢を打ち出し、国務長官として仕えたオバマ政権と一線を画そうとする可能性がある。
クリントン氏は今週、ニューヨークの米国ユダヤ人会議での講演で、イランの核開発をめぐる西側との合意について、「個人的にはイランが履行するか疑わしいと思う」と疑問を呈した。イランと西側は昨年、西側による制裁緩和と引き換えにイランが核開発を抑制することで合意した。
イランとの合意は「試す価値のある展開」と評価しながらも、「あらゆる選択肢がまだ検討中」と述べ、合意が崩壊した場合は軍事行動も検討すべきとの考えを示した。
最近では、ロシアのプーチン大統領によるウクライナ介入と第2次世界大戦前のヒトラーの行動の共通点を指摘し、波紋を呼んだこともある。
クリントン氏は発言と執筆中の回想録を通じて、国務長官としての4年間の印象を固めると同時に、オバマ政権の無力な外交政策に加担したという共和党の主張をかわそうとしている。
外交政策については、大統領選まで微妙な手綱さばきが必要だ。
オバマ氏の外交政策を批判しすぎれば、誠実さに欠ける人間に見えてしまう。しかし、国務長官時代のクリントン氏は全ての問題について大統領と足並みがそろっていたわけではなかった。クリントン氏は自身の考え方をはっきりさせたいのかもしれない。
クリントン氏の元同僚によると、例えばシリアの内戦に関して内部で議論が行われたとき、クリントン氏は内戦を終了させる手段として外交努力に加え、反体制派に対する武器支援を強く求めたが、実現しなかった。その後、大統領は武器支援案を支持した。
2009年に撮影された1枚の写真がある。米ロ間の緊張が高まりつつある今、クリントン氏にとってはきまりの悪い写真かもしれない。にっこりとほほ笑むクリントン氏がロシア外相と一緒に赤い「リセット」ボタンを押す姿が映っているからだ。大々的に配信されたこの写真は米ロ関係の改善を象徴するものとされた。
クリントン氏は今月初旬のカリフォルニア州での講演で、ウクライナ介入はロシア系住民を保護するためとプーチン大統領が主張していることについて、国外在住のドイツ人を守りたいと言った1930年代のヒトラーの主張と変わらないと指摘した。
マイケル・オレン前駐米イスラエル大使はイスラエルではクリントン氏と夫のビル氏の評価が非常に高いと話す。しかし、「イスラエル人は世界的な指導者がヒトラーに例えられるのを好まない。プーチン氏が何をしたとしても、600万人もの人をオーブンに入れてはいない」と語った。
第1次オバマ政権時代に国防総省に勤務し、現在はジョージタウン大学で教べんをとるローザ・ブルック氏はロシアとイランに関するクリントン氏の発言について、大統領選に向けて優位な立場に立とうという狙いがあったとみる。ブルック氏によると、最近のクリントン氏の発言は国務長官時代の「冷静な」考えと大きく異なると語った。
ブルック氏はクリントン氏について、「正直な人間でいることに前向きで、国務長官として厳しい質問をしたり、意見に耳を傾けたり、常識に異議を唱えることをいとわないように見えた」と語る。「残念ながら、今の彼女は大統領選を念頭に立ち位置を固めようとしている。政治的な損得に考えが左右されている」
ブルック氏は、クリントン氏のロシアについての発言はオバマ大統領にとって有益ではないと指摘する。プーチン氏がウクライナの他の地域も占領する可能性があるとの懸念がある中で、大統領は「手を打たなければならないという非常に強い圧力にさらされて」おり、「クリントン氏の発言がオバマ氏の役に立ったとは思わない」と話した。
前駐ロ米大使のマイケル・マクフォール氏はクリントン氏の広報担当者に紹介された同氏の元同僚2人のうちの1人だ。マクフォール氏は国務長時代のクリントン氏が内心、ロシアとの協力改善に懐疑的だったと述べた。
マクフォール氏は「政権内で、クリントン氏は他の人以上にロシアとの協力に懐疑的だったと言っていいだろう」と述べた。「彼女は(ロシアとの協力が)長く続くとは考えていなかった。クリントン氏が懸念していたことの1つはメドベージェフ氏が弱い大統領だったことだ」(米ウォール・ストリート・ジャーナル)
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