19159 「イスラム国」からラマディ奪還できるか   古沢襄

■Hayder Al-Khoei氏がロイター・コラムで「大きな敗北」と指摘

[18日 ロイター]イラク最大の州であるアンバル州の州都ラマディが、過激派組織「イスラム国」の手に陥落した。イラク軍はこれまで北部や東部の戦略的要所で数々の勝利を収めてきただけに、これは大きな敗北だろう。
 

年内に北部の要衝モスルを奪還するという夢は押しつぶされた。まずは、首都バグダッドから約100キロに位置するラマディの奪還に注力せねばならないだろう。
 

イラクの複雑な現実が、当事者すべての選択を難しくさせる。
 

同国のアバディ首相は、イスラム教シーア派民兵をスンニ派住民が多数を占めるアンバル州に派遣することを承認した。この決定は多くの人を心配させたが、これは、イスラム国から自分たちの土地を守りたい地元スンニ派住民の要請に応えたものだった。アンバル州知事、州議会、地元の部族らは、イラク軍とスンニ派民兵を支援するようシーア派民兵の派遣をイラク政府に正式に要請したのだった。
 

北部の要衝ティクリートとは異なり、ラマディではすでに何年もの間、一部のスンニ派部族がイスラム国に抵抗していた。アバディ首相のゴーサインを受け、約3000人のシーア派民兵がラマディ西部に配備された一方、これ以上のイスラム国の進撃を阻止すべく約4000人のスンニ派民兵も配備された。
 

イラク正規軍はさておき、スンニ派とシーア派の軍事協力は、ラマディ奪還作戦の成否を左右する極めて重要な要素だろう。スンニ派民兵は正式にシーア派民兵組織に組み込まれており、その意味ではシーア派民兵組織とはもはや言えない。
 

イラクでの米国とイランの関係もまた、長い年月をかけて大きく変化してきた。米国によるイラク占領時代の2国間関係は宣戦布告こそしないものの戦闘状態にあったが、イスラム国がイラクで勢力を拡大するにつれ、暗に軍事協力すら行うようになった(ティクリートが州都である北部サラフディン州では、米国による空爆がイラン支援の民兵が進攻するうえで地ならしとなった)。

 
ラマディで現在進行中の軍事作戦では、こうした傾向が一段と強まるだろう。ただし、駐イラク米国大使は、米国がイラクでシーア派民兵組織の配備に同意するのは、同民兵組織がイラク軍の指揮下にある場合に限ると明言した。言い換えれば、米国は同組織が効果的な戦力であり、その必要性は認めつつも、拡大するイランの影響力は封じ込めたいということだ。
 

イラクは板挟み状態にある。米国とイランは共にイラクにとって戦略的な同盟国であり、イスラム国を撃退するには、米国の空軍力と現地でシーア派民兵の指揮を執るイランの司令官の両方が必要だ。米国とイランを公然と互いに認めさせるのは不可能だが、イラク政府はこうした「状況」を歓迎するに違いない。なぜなら、支配力の回復を狙う同国政府は、シーア派民兵組織を直接の指揮下に置きたいからだ。
 

単なる勢力争いではないイラク国内のスンニ派とシーア派の力学は、イラクの未来だけでなく、今回の軍事作戦の成否を握る重大な役割を担うことになる。
 

アンバル州では、スンニ派住民は親族がイスラム国の敵味方に分かれて戦うなど引き裂かれた状態にある。ラマディで戦闘が続けば、結果がどうあれ、血で血を洗う報復合戦となるだろう。
 

イラク政権内にはマリキ前首相派などシーア派強硬派もおり、隙あらばアバディ首相の弱体化を狙っている。アバディ首相はまた、米国とイランとの間でバランスをとりながら、イラクの完全な指揮下に入ることに抵抗を示すであろう民兵組織の司令官たちにも対処しなくてはならない。
 

*筆者は、英王立国際問題研究所(チャタム・ハウス)中東・北アフリカプログラムのアソシエートフェロー。(ロイター)

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