国有企業大手は、かくも政治の不正蓄財の温床となっていたのだ。石油派の領袖、蒋潔敏(中国石油天然気集団前会長、現在国務院国有資産監督管理委員会主任。政治局中央委員)が取り調べを受けていることが確実となった。
かれは「周永康の金庫番」と言われた。石油企業の多くは大使党が落下傘降下する汚職の祭殿のような企業であり、まさに鉄道部についでの伏魔殿、利権の巣窟だった。
中国石油天然気集団(CNPC)は、その子会社、孫会社、海外子会社を夥しく設立し、海外に蓄財した。
北京郊外にハーレムのような淫乱ホテルを建てていたうえ、ハルビンではロシア美女を多く抱える面妖なナイトクラブも経営していた。
周永康の前秘書=李華林(逮捕)らが金庫番、不正送金の指示を蒋潔敏(閣僚級)が直接に取った。
すでに拘束され取り調べを受けているのは蒋潔敏のほかに王永春(前CNPC副社長)、郭永祥(四川省元副省長)ら、容疑は「重大な規律違反」。
つまり、この捜査の進展ぶりと段取りからいえば、周永康の周りが全員逮捕拘束され、つぎは本丸の陥落を待つのみという構図である。
かれらがくすねたカネは天文学的となり、黒社会との結びつきや四川駐在軍隊の不穏な動きなど、前々から噂されていたことである。とくに周永康の息子は服役中のマフィアのボスの保釈を条件に黒社会からも四億元を貢がせたという。
周は、石油派のボスとして江沢民に激しく取り入り、政治局常務委員(序列九位)という望外のポストを手にして四川省の人脈をつかい、となりの重慶書記に赴任してきた薄煕来とも、きわめて緊密な関係を構築していた。
これまでは江沢民派の厚い庇護があり、アンタッチャブルだった石油産業国有企業へ大々的な汚職捜査のメスがはいったことになる。(習近平のキャンペーンは党幹部の腐敗を絶対許さないとする決断? 冗談でしょ。彼らを追い出して自派の利権とするためですよ。)
こうなると周永康の保護者と言われた、江沢民の右腕、曾慶紅周辺ははやくも「周とは無関係」とする否定情報を盛んに流し始めた。
けっきょく、小誌が指摘したように面妖な海外子会社を通じて蒋潔敏は周永康の息子の周文武が経営する米国のペーパーカンパニィへ100億元以上の不正資金を送金していたことが発覚している(博訊新聞網、9月2日)。
文武は在米、中国へ戻れば逮捕されるので、米国内で所在が不明である。
▼同時発生的なスキャンダルも
同様な大型のスキャンダルが発覚している。大連を基盤とする万達集団の収賄による企業発展に関与した高官らが現在、取り調べを受けているようだ。
万達集団といえば、CEOの除明が率いた大連実徳集団(自家用飛行機をチャンツーイーに提供し、薄の愛人を務めたという噂もあった)が薄煕来の失脚に連罪して、拘束され、同グループは倒産、その隙間を塗って大発展をとげた新興成金である。
大連の繁華街に高層ビルが建つが、それが大連万達集団の本社である。
あまりに急成長したため、ハリウッド映画にも進出し映画製作に乗り出そうとしたが米国で相手にされなかった。この万達集団を率いるのが王健林である。
王健林は江蘇省、海南省、そして安徽省の幹部に大胆に近づき、数々の利権を貪ったとされる。いま名前が挙がっているのは海南省省長の蒋定之、江蘇省副省長の許津栄(女性)、江蘇銀行党委員会書記の王健華の三人である。
いずれ、拘束され取り調べが進と破天荒の汚職が白日のもとに曝されるかも知れない。
杜父魚文庫
13812 汚職の伏魔殿「石油派」への捜査メスはどこまではいるか 宮崎正弘
宮崎正弘
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