■ヒラリー・クリントン氏の消したい「過去」
ファーストレディー、上院議員、そして世界を股にかける国務長官-と、華やかな経歴を持つ民主党のヒラリー・クリントン氏(67)が次の大統領を目指す上で、その肩書は障害になりうる。
逆に、共和党の有力候補には最高の攻撃材料だ。国務長官在任中、公務に私的な電子メールを使っていたことが米政界で大きな問題になっているのは、「過去」を抹消しようとした疑いがつきまとうからだ。
■「記録を正そう」
2月末に開かれた米国の保守派による祭典「保守政治行動委員会」(CPAC)の人気投票で「次の大統領」の首位を維持した共和党のランド・ポール上院議員(52)の“お家芸”は、短文投稿サイトのツイッターでクリントン氏を揶揄することだ。
昨年11月の米中間選挙後には、クリントン氏と落選議員のツーショット写真を何枚も投稿し、クリントン氏が応援に入ったせいで選挙に落ちたと印象づけようとした。
これに対し、クリントン氏の支持者らは出口調査の結果をもとに、女性からの得票に貢献したとして反論した。その母体となったのが「コレクト・ザ・レコード」(記録を正そう)という組織だ。
設立趣旨にはこうある。
「共和党の情け容赦のない攻撃の照準はクリントン氏、ジョー・バイデン副大統領ら民主党指導者に向けられている。右翼からの根拠なき攻撃から潜在的な民主党の大統領候補を守る」
コレクト・ザ・レコードは、クリントン氏へのネガティブ・キャンペーンにネット上で即座に反論し、主要メディアにもよくデータが引用される。
しかし、私的メール問題に関する声明は言い訳めいている。
共和党の有力な大統領候補の一人であるジェブ・ブッシュ氏(62)もフロリダ州知事の時代に私的メールを使っていたと指摘したり、クリントン氏が国務省に5万5000ページ分のメールを提出したことを挙げて「共和党に同じような透明性があるだろうか」と問いかけたりしているのだ。
■資金集めに私的メール?
「クリントン氏は外交と資金集めを同時に行えたということだろうか?」。共和党全国委員会のラインス・プリーバス委員長(42)は、ニューヨーク・タイムズ紙が私的メール問題を最初に報じると、ツイッターで即座に反応した。
クリントン氏は最近、夫のビル・クリントン元大統領(68)と設立した基金に中東など外国から巨額の献金を受け取っていると報じられている。
国務長官時代には献金受け入れを自粛していたとされるが、共和党は今後、プリーバス氏のようにヒラリー・クリントン氏の私的メールが資金集めの手段に使われていた疑いがあるとして追及を強めるとみられている。
私的メール問題が発覚したのは、クリントン氏の国務長官在任中の2012年9月、リビア東部ベンガジで起きた米領事館襲撃事件に関する下院特別委員会での調査がきっかけだ。テロの可能性を意図的に隠蔽したとされる疑惑を調べる中で、クリントン氏が個人のメールアドレスを使っていたことが分かった。
米連邦記録法は、大統領や閣僚を含め、公務に関する記録を保管することを義務付けている。
米議会、報道機関、歴史学者らによる調査に供するためだ。昨年11月の連邦記録法改正で「電子的記録」の保管が明記される前だったとはいえ、クリントン氏が私的メールを使い続けたのは政策検証、安全保障の両面から問題が残る。
■命取りにも
リチャード・ニクソン元大統領が1期目の途中の1971年2月、ホワイトハウスに声を感知して自動的に記録を始める録音機を導入したのは、自らの回顧録を書くために役立つと考えたからだった。
キューバ危機に際してのジョン・F・ケネディ元大統領の録音記録に触発されたのだという(ダグラス・ブリンクリーら著『ザ・ニクソン・テープス』)。
最初の録音でニクソン氏はアレクサンダー・バターフィールド大統領副補佐官に録音システムを絶賛した。
「おお、これはいい。(録音機の設置は)全てを記録することが目的であるということは分かっているな」
「イエス、サー!」と答えた副補佐官はウォーターゲート事件の渦中にテープの存在を暴露し、これがニクソン氏の辞任につながる。記録の存在は重い。
クリントン氏にとり、ベンガジ事件で取った行動は大統領になる資質があるかという問題に直結する。
クリントン氏は国務省にメールを公表するよう求めたが、提出されていないメールの開示を共和党が迫り続けるのは間違いない。クリントン氏の応援団がいくら「記録を正そう」と叫んでも、記録そのものが示されなければ検証のしようがないのだ。(産経)
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