米連邦準備制度理事会(FRB)は16日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0〜0.25%から0.25〜0.50%に引き上げると決定した。
金融市場は同日、この「利上げ」を大体において歓迎し、難なくこなした格好だ。FOMC後に公表された政策声明で、今後の利上げが段階的かつ小幅になると示唆されたため、多くの投資家が今回の利上げを歓迎したようだ。
イエレン議長は、FRBの行動は「経済指標次第」であるとの持論を繰り返した。インフレ率が目標の2%に近づかなければ、着実な利上げ、いやそれどころか次の利上げさえないという意味だろう。
FOMC委員は、実質ゼロ金利の終了をあまりにも長い間示唆してきたため7年ぶりの利上げをしないわけにいかないと考えつつも、これが正しい政策だったか確信を抱けなかった可能性もある。少なくとも今回、FOMCは全会一致で利上げを決定しており、これは、このような政策の転換点では支えとなる。
ただ、こうした段階的な金融政策正常化が結局、どのような結果を生むかについては誰にも分からない、というのが金融市場関係者の大半の見方だ。景気回復が始まって6年半後にFF金利誘導目標を0.25%付近に引き上げることは、伝統的な定義での金融引き締めに当たらないのは明白だ。
金融政策の不透明感が取り除かれ、低迷する銀行間貸出市場の活性化につながるのであれば、今回の利上げも刺激策として有効となり得るとの見方も一部にはある。
こうした見方が正解なら、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)への寄稿の多いデービッド・マルパス氏やスタンフォード大学の経済学者だった故ロナルド・マキノン氏、セントルイス連銀のウィリアムソン副総裁(ゼロ金利の「わな」に関する執筆がある)といった面々の主張が正しいことになる。
一方、金融市場は何週間にもわたり懸念を抱え、世界経済はこのところ減速している。非常に大勢の投資家が過去7年間、FRBの政策をめぐり大きなリスクを取っており、投資家の間の過剰レバレッジやヘッジ不足の規模については誰にも分からない。
不透明感のもう一つの理由は、FRBが今後、利上げを進めていくうえで新しく、まだ試されたことのない手段を使用するということだ。
通常の場合、FRBはFF金利に影響を与えるため短期米国債の売買を行ってきた。しかし、金融危機以降、金融緩和とバランスシート拡大の中、そうした手法が機能するだけの十分な短期米国債をFRBはもはや保有していない。FRBは銀行の融資増加を抑制するため、銀行がFRBに預け入れる準備預金のうち所要額を超える超過準備に金利を付与している。今後、FRBが金利に影響を与える上で、この超過準備への金利が役立つことになる。
FRBはこの日、超過準備預金に付与する金利をこれまでの0.25%から0.50%へと引き上げた。これは政策手段としてはうまく機能する可能性があるが、これが長期化すれば、政治的意味合いが難しいものとなる。FRBは救済された銀行に対しさらに多くの金利を支払い、これにより、銀行は資金の必要な借り手への融資を手控えることになるからだ。
超過準備は概算で2兆6000億ドル(約318兆円)あり、0.50%の金利を付与する場合、FRBが民間銀行に支払うのは年間130億ドルになる。この金額はFRBが米財務省に毎年支払う配当から差し引かれることになる。つまり、財政赤字が膨らむことを意味する。こうした付利は、現時点では政治的に対処可能かもしれないが、金利上昇で増額すれば、議会はどう反応するだろうか。利上げに踏み切る前にバランスシート縮小を始めるべきだと、FRB関係者の一部が考えてきた理由の一つがこの点だった。
こうしたことはいずれも、FRBが行っている金融政策の大実験がまだ終わりには程遠いことを裏付けている。
金融危機の際にはFRBの緊急政策が必要だったが、この政策がその後何年も続けられたにもかかわらず、FRBが約束していた速いペースでの経済成長には至っていない。今後は、緩やかな金融政策の正常化がどのようにうまく達成されるかを見極める必要がある。(米ウオールストリートジャーナル社説)
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