中国の権力構造で何らかの異変が起こっている兆候があるのだが定かではない。渡部亮次郎氏は昨年五月に胡錦濤国家主席の乗ったミサイル駆逐艦に砲弾が撃ち込まれたという衝撃的な情報を明らかにしている。
通常国会を前にして日本の政界人の中国訪問が盛んだが、この手の情報となると入手が困難。中国側とて洩らすと生命の保証がないからである。チャイナ・ウオッチャーの第一人者である伊藤正氏(産経新聞・中国総局長)は、この情報を否定もしなければ肯定もしていない。情報の確認がとれないということであろう。
昨年夏のことになるが伊藤氏は①党中央委員会総会(4中総会=2004年9月)で、江沢民は党軍事委主席を辞任したが、この際、長年の江沢民腹心だった曽慶紅政治局常務委員が胡錦濤と手を結び上海閥は分裂した②曽慶紅は2005年1月、臨終の趙紫陽を見舞い、さらに同年11月には故胡耀邦の生誕90周年座談会を主宰した。趙紫陽、胡耀邦とも江沢民が敵視してきた元総書記だ。曽慶紅は公然と江沢民に反旗を翻したことになる。
さらには③2006年夏の上海の陳良宇党書記解任は、胡錦濤・曽慶紅連合による江沢民の政治基盤切り崩しにある・・・と分析している。この構図は間違いない様に思うのだが、今年になって少し様子が可笑しい。
一月八日、胡錦濤は公明党の太田昭宏代表と北京で会談し、六月に訪日することを明らかにしている。しかし十一日に北京を訪問した小坂憲次・前文部科学大臣と面会した曽慶紅は、胡錦濤の訪日は困難であると示唆している。中国側のチグハグな対応に対して、中国の裏事情に詳しい「大紀元」は胡錦濤・温家宝と曽慶紅の間に新たな内部抗争が始まったと報じている。胡錦濤の権力基盤が必ずしも万全のものとはいえない。
そんな状況下で人民解放軍は四川省で人工衛星を弾道ミサイルで破壊する実験を行った。アメリカをはじめとする国際社会を驚愕させる暴挙なのだが、これまでの胡錦濤・温家宝路線からすると如何にも唐突な印象を与える。ニューヨーク・タイムズ紙は、中央軍委主席である胡錦濤は、軍部のミサイル発射決定について把握しなかったと示唆している。
「大紀元」は今回のことから、江沢民にコントロールされている中国軍部は、胡錦濤の制御下ではないことが明らかになったとしている。江沢民の反撃が始まったのであろうか。渡部亮次郎氏は「今秋の17回共産党大会までに、胡錦濤は絶対的な軍の掌握が出来るか否か?」と述べている。北朝鮮ほどではないが中国も情報鎖国の国である。訪中する政治家は水面下の中国権力構造の動きにもっと目を向けるべきではなかろうか。
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