漫画家の岸丈夫氏は酔うと政治家・宇都宮徳馬氏の話をしてくれた。「偉い奴だ!マルクス経済学で金儲けしたんだから・・・」と。政治記者になって宇都宮徳馬氏のところに通ったが、自民党の最左派。政権の中枢にはいないから情報は限られるが話が面白い。だが「マルクスで金儲けしたの?」と聞くのは憚かられた。
この人の一生はひとつのドラマになる。父親は朝鮮軍司令官を務めた宇都宮太郎陸軍大将。宇都宮大将の長男ということで、東京陸軍幼年学校に入る。そのまま軍人となり、宇都宮氏のことだから、陸軍の要職についたであろう。戦争犯罪人として裁かれたかもしれない。花の24期生だが、中退して旧制水戸高等学校、京都帝国大学経済学部に入学。
この世代は多かれ少なかれマルクス主義の洗礼を受けている。亡くなった作家の池田源尚氏は「関東大震災以後の大正年代の末年から、満州事変前後の昭和初年にかけ、日本の若い学生は多かれ少なかれすべてマルクス主義者であり共産主義者であった」と回顧している。(びしゃもんだて夜話所載「出会いと作品」)
宇都宮氏も水戸高校時代にマルクス主義に感化された。京大では河上肇に師事し、社会科学研究会のリーダーとなって、その論文が不敬罪に問われて検挙され、京大を退学。その後、共産党に入党した。昭和四年には治安維持法違反で逮捕され投獄された。
これからが面白い。獄中で転向を表明。釈放後、株式相場で満州事変に関係した軍需企業の株式に投資し大金を得た。その金を元手にして合資会社ミノファーゲン製薬本舗という製薬会社を設立して社長となった。(出典: フリー百科事典「ウィキペディア」)まさにマルクス経済学で金儲けに成功したことになる。
戦後は自民党公認で政界に打ってでたが、保守合同後は石橋湛山・三木武夫らと政治行動をともにしている。米ソ冷戦下にあって、平和共存外交、日ソ国交回復や日中・日朝の国交回復を唱えた。日中友好協会会長でもあった。自民党内では”一匹狼”だったが、最左派の論客として重きを為している。
自民党というのは共産主義者と思われる最左派もいれば、極右とみられた最右派も仲良く同居する”ごった煮”政党。河野一郎や園田直などは”アカ”のレッテルを貼られたものである。”アカ”だろうが”クロ”だろうが党内で力を持てば、政権党の中で発言力を持ち、影響力を行使できる融通無碍な「何でもあり」党だったといえる。
だが宇都宮氏がマルクス経済学で金儲けしたというのは、出来過ぎた伝説なのであろう。それが本当なら、日本共産党の党員はすべてが金儲けの達人ということになる。マルクス経済学を知らなくても、戦争景気で金儲けした輩はワンサといる。第一次世界大戦で船舶株で大儲けした”船成金”がいっぱい出ている。伝説は伝説でしかない。
489 マルクス主義で金儲け 古沢襄
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