東京地検特捜部の捜査は新段階に入った。明らかに沖縄の普天間基地の代替滑走路の建設問題にからむ疑惑解明に捜査の目を移している。防衛省からの関係資料の押収、防衛官僚からの事情聴取もその一点に絞られているといっても過言でない。
シーファー駐日米大使は17日の日本人記者団との懇談で守屋容疑者の逮捕事件について「米国は関与していないし、米軍再編に大きな影響を与えるとも思わない」と異例のコメントをしている。
ただ疑惑といっても具体的なものがあるわけでない。あるのは米軍キャンプ・シュワブ地域に隣接する海上にV字型滑走路を持つヘリポート基地建設をめぐって逮捕、取り調べを受けている守屋前防衛事務次官と久間元防衛相が対立していた事実だけである。
守屋容疑者は小泉政権下にあって海上V字型滑走路の建設を積極的に推進した。これに対して地元の沖縄県は稲嶺惠一知事あるいは名護市長が、海上建設位置の変更を迫り、久間元防衛相や自民党に働きかけた。
地元の反対で日米間で合意した海上V字型滑走路の建設が宙に浮いている。業を煮やした守屋容疑者は在任中に年間100億円の北部振興費などの対策費の執行を凍結する荒技をみせて地元に譲歩を迫っている。この凍結をめぐっても久間氏と守屋容疑者は対立した。
そこには政治家と官僚の根深い対立がある。これを遡ってみてみたい。
普天間基地は沖縄県宜野湾市に立地するアメリカ海兵隊の飛行場。2700メートルの滑走路を持ち、嘉手納基地と並んで沖縄におけるアメリカ軍の拠点となっている。その大部分は民間の私有地で、年間61億円の賃借料が地主に支払われている。
しかし普天間基地が市街地中心部にあるため、沖縄県民の基地反対運動の象徴になっていた。日米で構成する日米安全保障協議委員会は十二年前に「沖縄における施設及び区域に関する特別行動委員会 (SACO)」 を設置して、普天間基地に代わる代替滑走路の建設を条件とした全面返還を発表した。
そこで浮上したのが、沖縄本島東海岸沖の海上ヘリポートの建設案。十年前に名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ地域が移設候補地となった。当然、名護市議会や名護市長は反対した。
住民投票でもヘリポート基地建設で反対票が半数を占めた。しかし国は名護市に対する支援をテコにして移転を積極的に働きかけた。この結果、移転を受け入れ名護市の発展に寄与する経済効果を重視する建設推進派の市長が当選するようになった。
一貫してヘリポート基地建設に反対してきた沖縄県も稲嶺惠一知事が「建設後15年以内の返還」を条件として建設賛成を表明した。この沖縄県や名護市との交渉で、推進役となったのが防衛庁の天皇といわれた実力者の守屋容疑者。
米軍キャンプ・シュワブ地域に隣接する海上にV字型滑走路を持つヘリポート基地建設の青写真を示して地元を説得している。沖縄防衛施設局長には信頼できる腹心の部下を配置した。小泉元首相の秘書官だった飯島勲氏からも、その突破力を見込まれていた。
日米間でV字案が合意されたが、地元の稲嶺県知事や名護市長は納得しない。あくまで日米合意案で強行突破しようとした守屋容疑者と地元意見に配慮して修正を図ろうとした久間元防衛相、小池前防衛相の綱引きが始まった。
この過程で地元を巻き込んだ疑惑が双方から、一方的に流布されている。一種の政争だから、どちらの言い分が正しいか即断はできない。この争いに東京地検が目をつけたという構図となった。真相はまだ闇の中。新しい年を迎え、どのような展開をみせるか予断を許さない。
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1317 普天間基地移転をめぐる疑惑 古沢襄
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