2323 ロシアから日本を見れば 伊勢雅臣

■1.「私たちには日本人の心が絶対理解できない」■
ロシア在住の北野幸伯(よしのり)氏の近著『隷属国家日本の岐路』の一節。氏が、ロシア政府の高官や大学教授たちと飲んでいると、必ず聞かれることがある、という。
「私たちには日本人の心が絶対理解できない」
「また来たか」と思いつつ、「なんですか?」と聞くと、
「日本人はアメリカが大好きだろう? それが私たちには理解しがたい。だって、アメリカは広島・長崎に原爆を落とし、人類史上最悪の大虐殺をした国じゃないか。なんで犠牲者のあんたたちが、アメリカを好きになれるんだ?」
こう言われてみると、この疑問はしごく合理的かつ常識的である。戦争中とは言え、一般市民への無差別虐殺という犯罪的性格においては、2001年のニューヨークで起きた同時テロと同じである。しかも、犠牲者数は、広島・長崎あわせて30万人とも言われ、ニューヨークの約3千人の100倍規模である。
「そんな日本人がアメリカを好きになるのは、アメリカ人がアルカイダを好きになるよりも、100倍も難しいはずだ。それなのに、なぜ日本人はアメリカが大好きになったのか?」
米国は日本占領中に大規模な宣伝工作、言論検閲を行って、すべては戦争を仕掛けた日本の責任という洗脳を行ったのだが、これに現在まで日本人は騙されてきたのである。
ロシアから見れば、こういう点が一目瞭然なのだろう。
■2.日本の「お人好し」ぶりは世界一■
ちなみに、ロシア人は先の大戦におけるソ連の行動をどう見ているのか。北野氏が「ソ連は日ソ中立条約を破って攻めてきたではないか」といっても、謝る人はいない、という。
「あれは米英と同意の上での行動だ」とか「日本だって真珠湾に奇襲攻撃をした。ドイツも不可侵条約を破ってソ連を奇襲した」とかいわれ、軽くかわされます。
北方領土についても、「あれは元々ロシアの領土だ」とか「そもそも固有の領土なんて存在しない。ある国の領土は戦争のたびに変わるものだ」とかいわれてしまいます。
ただシベリア抑留に関しては、「あれはクレイジーなスターリンがしたことだから許してくれ」といわれたことはあります。
いずれも反駁可能な主張であるが、唯一、北方領土に関して、「領土というのは戦争のたびに変わるものだ」というのは、リアリズムに立った説得性のある世界観ではある。しかし、これとても、北方領土は日本が降伏した後にソ連が攻め取った、という不法性を隠した勝手な言い分である。
要するにアメリカもロシアも、自国に都合のいい歴史だけを教えている。自国に都合の悪い歴史を教えているのは、「世界で唯一日本だけ」と知っておくことも大切です。
というのが、北野氏の結論である。言わば、日本の「お人好し」ぶりは世界一と言えるだろう。
■3.末期ガンに冒された王様を杖が支えている■
現在の日本について、ロシア人はどう見ているのか。
数年前、フラトコフを首相にするようプーチン大統領(当時)に進言した、ある有力者と会った時のこと。その人は、ロシアのトップが世界の構造をどう見ているか話してくれました。
彼は、「世界の構造を一言でいえば、末期ガンに冒された王様を杖が支えている状態だ」といいました。・・・
「王様とは、覇権国家だが、世界一の債務国アメリカ。それを支えるのが日本の資金力」
アメリカのトップは、たとえ、こんな見方をしていても、絶対に口外しない。したがって日本人がアメリカからの情報に頼っているだけでは、こういう「搾取構造」には気がつかない。
その有力者は、王様(アメリカ)から杖(日本)を取れば、アメリカは破産し世界恐慌になるので、そんな事は望まないが、として、
「・・・しかし、私がいいたのは別のことだ。なぜ日本は、そんなパワーをもちながら、アメリカのいいなりになっているのか?」
私は即答できませんでした。
金を貸してやっている国が、なぜ借りている国のいいなりになるのか。これも他国民から見れば「絶対理解できない」日本のお人好しぶりの一つだろう。
■4.日本は世界で最も好かれている国の一つ■
しかし、ロシア人が日本人を理解できないからと言って、日本人が嫌いなわけではない。逆である。
ロシア人は日本人が大好きなのです。また、同じ大学にいた東欧、アフガニスタン、ユーゴスラビア、カンボジアなどの学生も、日本に好意的。90年代のはじめ、中央アジアのキルギスやウズベキスタンを旅した時は、まさに神のような扱いを受けました。
「世界で日本を嫌っている国など、中国、韓国、北朝鮮くらいしかないのです」と北野氏は言う。筆者の海外体験でも、世界で嫌われているのは、逆に中国、韓国、北朝鮮の方である。
それなのに、日本人は「自分たちは世界で嫌われ、孤立している」と信じて込んでいる。これも戦後、アメリカに植え付けられ、さらに近年は近隣諸国から植え付けられた自虐史観の結果だろう。
私は長年人種のろつぼ・モスクワに住み、いろいろな国で様々な人に会い、日本は世界で最も好かれている国の一つであることを確信しています。
北野氏は、この理由として以下の4点を挙げている。
1)驚異的経済発展
2)貧富の差が少ない
3)日本人の謙虚さ、礼儀正しさ
4)無条件の支援
■5.「どうすれば、日本のようになれるか教えて下さい」■
最初の「驚異的経済発展」について、北野氏は次のような体験を語っている。
キルギスに行った時、政府の高官から「日本人はキルギス人と同じような顔をしている。しかし、私たちの給料は日本の150分の1しかない。どうすれば、日本のようになれるか教えて下さい」といわれました。
エジプトで会った若い現地人ガイドは、「日本人をはじめて見た」と喜び、
「ドキュメンタリー番組で、日本の戦後復興を特集していたよ。エジプトは、僕が生まれた頃とちっとも変わらない。どうすれば日本のようになれるか、教えてくれないか?」と聞かれました。
いきなり質問を受けた私は、とっさに「結局国が繁栄するかどうかは、国民1人ひちりの意識にかかっているんだ」と答えます。自分自身「つきなみな回答」と思いましたが、彼は目をウルウルさせてうなずいていました。
現代世界は人種差別は少なくなったとは言え、まだまだ「白人の支配する世界」である。その中で世界有数の経済大国になった日本は、有色人種にとって、自分たちも努力すれば日本のようになれる、という「希望の星」なのである。
■6.「共産主義の理想は、日本で実現した」■
第2は「貧富の格差が少ない」と言う点。
ソ連をはじめとする共産主義国は、「国民全員が平等に豊かになること」を目指しました。
そして、日本のことに詳しい研究者は、GDP世界2位であること以上に中流階級に属すると考えている」という意識調査に感動したのです。
「共産主義の理想は、ソ連で実現しなかったが、日本で実現した」というわけです。
しかし、最近はアメリカ流の市場万能主義が世界で広がり、日本でも貧富の差が広がってきている。
世界から尊敬されるためには、豊かで、なおかつ貧富の差が小さいことも条件であることを知っておきましょう。事実、「貧富の差の少ない北欧に学ぼう」という意見も出てきています。
最近、あるロシア人研究者(女性)が、「日本は理想の国だったのに、最近は貧富の差が開いてダメね。ロシアは目標とする国を失ったわ」と嘆いていました。
近年の「格差社会」論は、小泉改革を批判するが為の左翼の宣伝工作の賜物でもあり、世界的に見れば、日本はまだまだ格差の少ない平等社会である。この国民の平等をいかに維持強化していくか、国家としてのビジョンが必要である。
■7.「あなたたちを見て発展するのが当たり前だとわかったわ」■
第3に「日本人の謙虚さ、礼儀正しさ」。北野氏の知り合いのロシア人女性は、日本人男性と結婚してその後、別れたが、後悔するどころか、「次も絶対に日本人と結婚する」と断言。北野氏がその理由を聞くと:
日本人は謙虚でいい。レストランで会社員が何人か座っていても、誰が社長か部長か見分けがつかない。ロシア人は金ができて地位が高くなると、傲慢になっていばり散らすから、すぐに誰が社長かわかる。それでロシア人は金と地位ができると、傲慢になって女を物のように扱うようになるのよ。
北野氏がモスクワ国際関係大学に在学中、通訳のバイトで中央アジアに行った時、一人のウズベキスタン女性はこう語った。
あなたたちは、言葉がきれいだ。一緒に仕事をしている間、一度も汚い言葉を使わなかった。それと、相手の地位にかかわらず全ての人にやさしい。日本のことは、遠い国でお金持ちの国だと聞いていたけど、あなたたちを見て発展するのが当たり前だとわかったわ。
「驚異的な経済発展」も「貧富の格差が少ない」も、こうした謙虚さ、やさしさの賜物だろう。
■8.「日本はナスタヤッシー・ドゥルック(真の友)だ」■
第4に「無条件の支援」。ソ連崩壊後、日本もアメリカも旧社会主義国を支援してきたが、あるロシア科学アカデミーの教授は北野氏にこう語った。
「アメリカは、金を貸すときに本当に細かい条件を出す。 政府がこれこれの改革を実行すれば金をやるという具合にね。」・・・
私は、同じような話を世界のあちこちで聞きました。何はともあれ、アメリカは支援するにあたって、自国の改革案を高圧的に押し付け、他国民のプライドを傷つけているようです。
教授は、「そういう意味で日本はナスタヤッシー・ドゥ ルック(真の友)だ」といっていました。つまり、日本は金を貸す際、借りる側のプライドを傷つけないということです。
これも、日本人の謙虚さ、思いやり深さのあらわれだろう。
■9.「私たちは日本人、今のままでいい」■
ロシアから日本を見れば、謙虚さ、思いやりの深さから、世界有数の経済大国を築き、しかも国民の多くがそれを享受している平等の国、さらにその富で他国を支援している「真の友」という姿が浮かび上がってくる。しかし、その無類のお人好しぶりから、自分の力に気がつかず、それを発揮できないでいる。
こうした経験から、北野氏は「日本人は日本人のままでいい」と主張する。二流のアメリカ人などになる必要はない。中国におべっかを使う必要もない。北野氏は言う。
国家も個人と同じく、金銭面(経済)では、上がり下がりがあります。苦境に陥ったとき力を与えてくれるのは、外国ではありません。それは私たちの歴史であり、私たちの文化。
「私たちの先祖は、蒙古が来襲しても、黒船が来ても大丈だった。戦争に敗れても立ち直ってきた。今回も私たちには、乗り切る力がある」と確信すること。
「私たちは日本人、今のままでいい」と考え、ご先祖様に感謝しつつ、「力を貸してください」とお願いしてみましょう。
力がみなぎってくるのを感じませんか?
こうした姿勢から、北野氏は政治、外交、経済、教育など各分野において日本が目指すべき道を説いている。この点が、また多くの評論家諸氏とは違う魅力の一つである。
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