「親不孝者です」
「親不孝者です」と記者会見で認めた首相は鳩山由紀夫が初めてだろう。親不孝した母・安子の義妹に当たる山中恵子(鳩山一郎元首相の四女・当時86歳)を訪ねたのは、2年前のやはり師走だった。
最近は観光名所になっている東京・音羽、鳩山会館の敷地の一角に、恵子は住んでいた。一郎は1男5女に恵まれたが、インタビューに応じられるのは恵子だけだという。
一郎が首相に就いたのは半世紀以上前の54年12月で、当時のブームぶりをなつかしげに振り返りながら、恵子はこんなエピソードを語った--。
ある朝、幼い恵子が庭に咲いたバラを切って応接間に飾っておいた。当時は音羽御殿と呼ばれていた。一郎は午前中10人前後の来客と面談したあと、昼ごろ恵子をつかまえて、
「だれ一人として『これ奇麗だ』と言った人はいなかったなあ」とつぶやいたという。
「パパのお客さんというのは、そういう人たちなんだ、とあのころ思いました」と恵子は言った。戦前の話だが、家風を感じさせる。
このところ、鳩山家のDNAが話題になることが多い。「あの一族は反米だ」という極端な声もある。鳩山政権の短命説も流れている。偽装献金疑惑と指導力の不足が主な理由だ。
しかし、首相の適性を見極めるのはむずかしい。鳩山は一郎ほどの器量はないかもしれないが、育ちのよさを感じさせる。適性の一つに加えていい。
この4年間、山中恵子を含め<首相の娘>12人とインタビューした。娘の目に映る首相像が、適性を吟味するヒントになると考えたからだ。
首相としての資質をもっとも高く評価したのは、岸信介の長女、安倍洋子である。
「父は主人(安倍晋太郎)よりいろいろな点で優れておりましたから。いまの政治家を見ると、だんだん昔のああいう人たちが少なくなっちゃったんじゃないかと。なにか小粒というか、本当に考えるべき大事なことを、どう思っているのかしら」と洋子の父親への心酔は、いまの政治家批判に及んだ。
それにひきかえ、適性に疑問符をつけたのは、宮沢喜一の長女、ラフルアー・宮沢啓子だった。
「私も弟も、父の総理としての能力には満足してなかったですね。向いてなかった。『頭の切れるスタッフとしては最高だけれども、リーダーとしてはどうかな』などと私たち子どもが言うと、父も笑って、『そうかもしれない』と言ってました」
と啓子はざっくばらんな批評をした。岸も宮沢も人気の高い首相ではなかったが、娘から見るとこれほど差があるのが興味深い。
鳩山一族に戻る。一郎が59年、現職のまま76歳で死去した時、毒舌で名高い政治評論家、阿部真之助が、<善意に生きた政治家であった。古い型の政治家と言われるかも知れぬが、正直で内証事のできぬ人間であった。今日もっとも欠けているのは、政治の道徳性、倫理性である。鳩山氏は、ある意味では政界の道義を支える力になっていた>
と称賛したのはめずらしいことだった。この献金騒動のさなか、鳩山首相に祖父と同じ評価をするのは当然無理がある。だが、<正直で内証事のできぬ人間>の点は鳩山もそうで、一族のDNAと思われる。
短命説は早すぎるのではないか。(敬称略)
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