4940 似て非なる2人のヒール 石岡荘十

きのう(2月4日)午後、有楽町界隈をうろうろしていたら「号外! 号外!」。「アッ!小沢の辞任か」と思ったら、目に飛び込んできたのは「朝青龍」の3文字だった。
この2人の相似点は、
・ 共にそれぞれの“業界”では実力で他を寄せ付けない
・ にもかかわらず、わが国では美徳であった「実るほど頭を垂れる—」こともなく、人を人とも思わない尊大な振る舞い
・ なんとなく胡散臭い。特におカネに対する執着、業界のヒール役を見事に演じている。朝青龍の場合は、最早「いた」と過去形になったことだった
奇しくも、秘書3人起訴の処分が出る、小沢氏の対応が注目されていたその日、両国では横綱審議会が開かれ朝青龍に対する処分が検討されていた。どちらが「号外」となってもおかしくないタイミングだったが、日本的な潔よさを見せたのは、68歳のニッポン男子ならぬ、モンゴル出身の、日本へ来て十年とちょっとの29歳の若き“外人”だった。
朝青龍の土俵上の振る舞いや、土俵外での暴力事件に対し、不快に思う人も少なくなかった。天敵といわれたぎょろ目の女性の元横綱審議委員は、テレビのインタビューに応え「したやったり」と嬉しそうだった。しかし、与党幹事長とがっぷり四つに組んだこの日、朝青龍は見事、打ちゃり決めたのではないか。2人は同じヒール役だが、まったく似ているようで非なる生き方である。
小沢氏に、号外を見せて朝青龍引退についての感想を聞いてみたかった。小沢氏は「やられた」と思ったか、「オレは違う」と何も感じなかったか。朝青龍に、「小沢居直り」についての感想を聞いてみたかった。こんな男を日本の最高実力者であることを許すような日本人に「品格」がどうのこうのと言われたくないという心境かもしれない。「よく言うよ」と。
で、昔の話だが、この強かな幹事長の不起訴処分で、もう1人の悪役、自民党副総裁だった金丸信のケースを思い出した人も少なくないだろう。簡単に振返ってみると—。
金丸は1992年,佐川急便から5億円の不正な献金を受け取ったとして東京地検が事情聴取をしようとしたが、金丸はこれを拒否。仕方なく逮捕もしないまま9月28日、政治資金規正法で略式起訴。罰金20万円の略式命令が出て、一件落着だと思われた。だが、これには国民が怒った。地検に対する批判が高まった。
これを受けて、というわけではないだろうが、今度は東京国税庁が乗り出す。亡くなった奥さんの遺産を申告しなかったとして、翌1993年3月6日逮捕。自宅のガサをかけたところ、1000万円の金の延べ棒が出てきて世間をアッといわせた。
このとき金丸は、79歳。糖尿病の悪化で左目は失明に近かったという。その彼が逮捕され車椅子に乗って自宅を出る姿がテレビ画面に映し出され、哀れを誘った。結局、1996年3月、裁判停止となり、その1週間後の28日、脳梗塞で死亡した。享年81。品格もクソもなかった。
その金丸を政治的には師匠とする小沢氏がいまよく似た状況におかれているが、この2人のヒール、これまた似ているようで、ちょっと違う。小沢氏にも妻や子の名義にしたという生前贈与の税がらみの疑いがもたれているが、税務当局が金丸ケースのときと同じように、追い詰めることが出来るだろうか。
田中角栄の裁判を含め、当時側近だった小沢氏は法廷は欠かさず傍聴したそうだ。田中や金丸を反面教師として学んできたはずだ。検察との対応を学習したに違いない。この経験は大きい。2度の事情聴取に応じたやり方も金丸とは違う。ここで取引があったとは思いたくないが、微妙なやり取りはなかったか。
いまのところ、結論は政治資金規正法では嫌疑はあるが立証が充分にできそうもない、つまり嫌疑不十分で不起訴という判断に落ち着いた。税務当局がまたあのときのように何かやるのでは—と期待するむきもあるようだが、そううまく2匹目のドジョウといくかどうか。相手が2人の師匠とは似て非なる強かなヒールであることを忘れてはならない。
部長級以下の高級官僚についても降格が出来る法案が俎上に載っている。事件との関係はないのか。ドラマのクライマックスはこれからである。一件が落着するころ、朝青龍は実業家として、ことによったら政治家としてモンゴルの大草原を駆っているかもしれない。
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