米国の大手シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)が北朝鮮の政権崩壊に米国、中国、韓国の3国がどう対応すべきかをまとめた報告を発表したと古森義久氏が伝えた。米国の中国研究は多岐にわたるが、実用学的な面が強い。
日本は戦前から中国研究がさかんな国だが、歴史研究・学術研究の側面が強いように思う。東京・文京区にある東洋文庫は東洋学の専門図書館・研究所だが、「The Toyo Bunko」として広く世界に知られている。アジア最大の東洋学研究センターで、米国の大手シンクタンクにもひけをとらない。
支那近代外交史を専攻した私は東洋文庫によく通った。中国研究をするなら北京に行かずに東洋文庫に行くべきだと指導教官から言われたものである。北西アジア史に関する文献も世界の中で東洋文庫が一番調っているのではないか。
北朝鮮と中国の関係を論じる時に、朝鮮戦争をともに戦った”血の連帯”が続いていると、ドン・オーバードーファー氏はいう。最近では北朝鮮という国家が崩壊すれば、北朝鮮人民が鴨緑江を越えて中国の東北部に難民として大量に流れ出るという脅威論がある。
それは、その通りなのだろうが中国の北朝鮮に対する視点は、もっと根が深いのではないか。そこにはチベットや新疆ウイグル地区に対する中国の強権政治に共通する辺境に対する漢民族の”怖れ”があるように思う。支那史は辺境の異民族に脅かされ、その異民族支配を受けた時代が続いた。
単一民族である日本人には想像も出来ない世界が中国大陸にはある。万里の長城は異民族の侵攻を防ぐ城壁だったが、満州を祖地とした女真族が満州八旗・蒙古八旗を従えて、山海関を突破して中原に侵入し明王朝を倒して清王朝を建てた。清王朝の支那支配は1644年から1912年まで続いている。
興味があるのは、非満州族・非モンゴル人である遼東半島一帯に居住していた漢民族と朝鮮族が漢軍八旗を呼称して、清王朝を支える軍事勢力となっていたことである。
黄河の流域から発した漢民族は、肥沃な土地に恵まれ、気候も温和だったことから、古代から文治の気風があったのは、聖天子・尭舜の伝説でも知られている。今の共産中国をみていれば、文治の気風などはカケラもないが、米国や日本を手玉にとる政治性だけは長けている。
話は戻るが、中国東北部(旧満州)に住む朝鮮族は約二〇〇万、北朝鮮には二〇〇〇万の同族がいる。政治的には、中国政府は「鮮独」問題として、潜在的な不安定要素とみなしている。北京政府としては、北朝鮮問題は即「鮮独」問題なのである。
”血の連帯”などという綺麗事ではない。何が何でも金正日政権を支えねばならない。金正日総書記の体制が不安定化するのは、中国の国内問題に波及するから看過できない。漢民族にとって朝鮮族は、チベット族やウイグル族と同じ異民族の末裔なのである。
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5557 漢民族にとって朝鮮族は脅威の異民族 古沢襄
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