5559 鳴霞『中国人民解放軍の正体』の書評 宮崎正弘

中国の軍事力の脅威に関しては、かなり多くの日本人が認識している。庶民、大衆レベルでも酒場や喫茶店の会話は「中国っておっかない」。
英誌『エコノミスト』の調査でも世界中で「中国が嫌い」という世論調査は日本が一位。わが防衛白書も、ようやくにして中国軍の動向に「注視」すると書かれ、米ペンタゴンはとうに「ソ連の軍事力」報告をやめて、替わりに「中国軍事力報告書」を出している。したがって専門的な詳細を論ずる白書からみれば、本書は入門編である。
ユニークな点は独特の臭覚でかぎ当てる中国の戦略と、超限戦の兼ね合い。その一方で共産党幹部の動向、とりわけ高級幹部の子供達や家族が、なにゆえか外国で暮らしているという実態を本書では具体例と数字を用いて演繹している。
「中国の特権家族は500家族、5000人」「かれらが冨の90%以上を寡占し」「しかも、特権階級の子弟は外国暮らし」「いまでは120万人の共産党高官の家族が外国に移住した」というとんでもない裏側の数字が並ぶ。
ところで話は飛ぶが、中国は大学生が2800万人、駅弁大学を含め大学の数は3300。数は問題ではなく、その学園生活にちょっと触れると、大学生は全員が寄宿舎に暮らす。軍隊と同様である。
しかし中国の大学生のあいだに連帯感が希薄なのだ。
なぜか。応援団がない。大学の応援歌がない。いやスポーツ同好会も趣味の会もない。同好会の結成は「共産党の指導の下でなければならない」。そして、キャンパスにはパトカーが常駐し、大学の施設のなかに公安が常駐し、つまりは学生運動を監視している。
あらゆる寺院、禅寺、孔子廟でさえそうである。嗚呼、そうなのだ。なぜこの話をしたか、といえば軍隊のなかは、日本の自衛隊にあるように、将棋同好会とかマラソンクラブとか、あるんでしょうか。そういう話も聞きたかった。
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