”皮を斬らせて骨を断つ”。つまりは柳田法相の首を差し出して、補正予算案を可決して貰う民主党の苦肉の策なのだから、「骨を断つ」というほど格好のいいものではない。ところが”皮を斬らせて骨まで断れそう”となると漫画的な悲劇になる。
日本剣道の極意は捨て身の戦法だという。剣道五段だった父親は東京・原宿署の刑事たちに剣道を教えていた。戦時中のことである。私も巻き添えをくって道場で稽古をつけられたが、竹刀を握ると父の表情が変わる。手加減せずに打ち込まれたから、腕は打ち傷だらけとなった。
そこで教えてくれたのは”皮を斬らせて骨を断つ”。自分の腕の皮が破れても、相手の骨を斬るという物騒な剣法だ。英語で言うとWe cut off the bone cut, the skin。戦後の剣道は剣術と言っていい。技の美しさが必要である。戦時中の剣道は人斬り術だから、技よりも相手を倒すことを求められた。禁じ手も覚えた。
民主党はこの国会で早く補正予算案をあげて閉幕としたい。菅首相の下で参院選で惨敗したツケが今回ってきている。参院で多数を野党に握られているから、予算委員会ではひたすら忍の一字で、バカだチョンだと言われても我慢するしかない。
もっとも、このやり方は野党時代の山岡国対委員長が使った手である。ねじれ国会では参院を握った方が強い。それを100%使って、自民党政権を揺さぶったのが山岡国対。法案は衆院で可決して参院に送り込まれる。参院で野党に寝られたら、法案は通らなくなる。
おまけに野党優位の予算委員会では、野党は言いたい放題、政府・与党は守勢に回る。それがテレビで放映されるのだから、政権与党の支持率にも影響してくる。自民党は民主党にやられたことをやり返している。
柳田法相の首を差し出しても、補正予算案の早期成立を図れば、菅内閣は来年度予算の編成作業に入れる。本当はその過程で仕分けの政治ショーをやれば、支持率の回復も期待できる。国会で野党から袋叩きにあうこともなくなるだろう。柳田法相には気の毒だが、まさに”皮を斬らせて骨を断つ”になる筈だった。
野党だって深追いして”解散”という大蛇を藪からつっ突き出すつもりはない。決戦は来年春と見定め、統一地方選とのダブル解散も想定している・・・というのが常識な線であろう。
ところがどこでボタンを掛け違えたのか、自民党やみんなの党は、柳田辞任と引き替えに補正予算を通す約束などはしていないと言い出した。阿吽の呼吸が通じない。一歩譲ったのが、二歩、三歩と攻め込まれそうな形勢となった。
叩かれ放しだった参院予算委員会も24日で補正予算を可決、メデタシ、メデタシで終わる予定が狂ってきている。民主党内からは執行部は何をやっているのだ、柳田辞任は犬死だと、批判の声があがっている。
これでは”皮を斬らせて骨まで断れそう”な雲行き。小沢一郎氏が占った”破れかぶれ解散”が妙に真実味を帯びてきた。
杜父魚文庫
6726 皮を斬らせて骨まで断れそう 古沢襄
未分類
コメント