もう40年昔の話だが、台湾の友人が夫婦で泊まりにきて土産に「北投石」を持ってきた。「世界で台湾でしか産しない”薬石”だ」と自慢する。あまり本気にしなかったので、玄関の下駄箱の上に置いておいた。
その中に「北投石は日本でも産するよ」と東北の友人が教えてくれた。秋田県の玉川温泉にある北投石が昭和27年に特別天然記念物に指定されている。
台湾の北投石も明治時代に日本人によって発見された。鉛,ストロンチュウムやカルシュウムを含む重晶石(硫酸バリュウム)の一種で,温泉の沈殿物から組成されたものだが強い放射能をもつ。明治31年に秋田県の玉川温泉でも発見された。
放射能を持つ温泉なんて危険きわまりない、法律で禁止したら・・・ということになりそうだが、この玉川温泉が意外と人気がある。民宿は二年先まで予約で一杯だという。西和賀町長だった高橋繁さんが一緒に行ってくれるというので、楽しみにしている。夏には温泉の近くを流れる河原でゴザを敷いて、温泉浴をする湯治客で賑わうという。
放射性物質の汚染被害で怯える東北・関東の逆をいく話なのだが、少し知ったかぶりをすると、「放射線ホルミシス効果(ホルミシスこうか、英: hormesis)」という学説がある。放射線のように過度に人体に照射すれば、有害な作用を及ぼすが、微量であれば逆に良い作用を示す生理的刺激作用があるという学説である。
玉川温泉や台湾の北投温泉では、民間の口伝えで北投石が放つラドンが医療効果があるとされてきた。もっとも重症の患者には逆効果になるという注意書きがつく。
温泉医療のひとつで、日本だけでなくオーストリアやニュージランド、ロシアなどでも「放射線ホルミシス効果」を根拠にしてラドン温泉(ラジウム温泉・放射能温泉)やラドン洞窟がある。気になる放射線量は玉川温泉の浴室で0.30~0.50マイクロシーベルト、岩盤源泉で1~15マイクロシーベルト。
玉川温泉の源泉は pH1.2と強塩酸性緑ばん泉でラドンが含まれている。ラドンは放射性の気体で,ラジュウムが崩壊するときに放出される。ラドンは空気とともに肺に入るとともに,皮膚からも吸収される。そして空気と一緒に排出される。
ラドンが放出するα線が水分子をイオン化し,この時生じた過酸化物などが細胞や組織に作用して,器官の働きを活発にする。仮にラドンが体内に残ったとしても,半減期が長くても4日と短い。一カ月もすれば消滅する・・・という触れ込み。
しかし、世界保健機構(WHO)は低線量であっても天然ラドンの放射線の危険性だと指摘している。少なくとも「放射線ホルミシス理論」は今のところは主流の学説ではないとされている。
福島原発事故が発生いらいテレビで”放射性物質”のことが話題にならない日はない。ひょっとすると風評被害で玉川温泉の湯治客が減っていれば、今夏は評判の「北投石」を見るために、二、三日、玉川温泉に行ってみるか、とも考えている。
■ラドンとは=ラジウム温泉と総称されている温泉には、鉱物から放出される放射線による効能が期待できる温泉と、気体のラドンから放出される放射線による効果が期待される温泉の二種類に分類される。
温泉の中に含まれる放射性成分には、ラドン(Rn:222Rn)、ラジウム(226Ra)、ラドンの放射性同位体トロン(Tn:220Rn)、アクチノン(An:219Rn)等が存在するが、日本の放射能温泉としては「ラドン」が主流。
ラドンとは、半減期3.825日でα崩壊する放射性のガス成分(気体)。ラドンは自然界に存在する放射能を放出する物質の中では、もっとも強力なイオン化作用を持つと言われている。
杜父魚文庫
7896 「北投石」と東北・玉川温泉 古沢襄
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