9147 書評『中国人民解放軍総覧』(双葉社)  宮崎正弘

いまからはアジアの空と海は「中華帝国」が引き受けた?狂気の軍拡、中国人民解放軍の実態を秘密の兵器から探り当てる。
この本は「世界第2位の軍事大国」となった中国の知られざる軍拡の実態を、カラー写真であますところなく羅列、一覧しているが、とくに秘密のベールに蔽われてきた海南島の潜水艦基地の一部など、あるいは空母攻撃ミサイル搭載の駆逐艦の全容が紹介されていて、「えっ、よく撮影できましたね」と驚くような写真が含まれている。
取材は笹川英夫氏。ほかにアフロなどが写真提供。マカオの北、珠海で開催された中国の兵器ショーは、外国バイヤーのほか、一般市民にも開放され最新の展示は「殲10」(最新鋭ジェット戦闘機J-10)が含まれていたので、関係者の話題をさらった。
また中国が輸出する戦闘機は「梟龍(FC-1)」。おもにパキスタンとアフリカ諸国に輸出されているが、J-7の改良型だ。
さて日本は次期戦闘機に米国「F35」を決定したが、これはステルス戦闘機だ。中国もすでに米国から技術スパイを駆使して秘密を盗み出し、独自のステルス戦闘機を開発、その試作品を2011年春、ゲーツ国防長官(当時)が胡錦涛と北京で会談したときをめがけて、軍が成都で無遠慮に飛行実験を敢行した。これはJ-20型と言われる。この「事件」は胡錦涛が軍を完全に掌握できていなかった現実を物語る。
 
空母「ワリヤーグ」(中国名はまだない)は遼東半島の大連で艤装工事を終えたときに産経新聞がスクープ写真を流したが、その後、実験航海を五回、連続して繰り返し、西側のカメラのまえに堂々と登場した。
ウクライナから購入した鉄塊を遠く黒海からジブラルタル、南大西洋、喜望峰、インド洋を抜けて、はるか大連まで曳航してから数年間、中国はこの鉄塊を空母に仕立て直し、海に浮かべた。排水量67000トン、全長305メートル、横幅が35・5メートルもある巨艦の搭載機容量は60機とされる。しかし2011年を通しての実験航海ではついに搭載機の訓練は行われなかった。
つまり現在の中国の技術では搭載機の技術は保有せず、またロシアがカタパルト機密を渡さないため、搭載着艦訓練は無理だからであろう。中国の艦載機の開発は依然としてベールに包まれている。
 
この空母艦隊を形成する駆逐艦、フリゲート艦、巡洋艦、輸送船のなかでも、最新鋭は「旅洋I級」のミサイル駆逐艦で。排水6000トン、とくに米国に脅威を与えると予測されるのは200キロ先の空母を攻撃するミサイルを搭載していることである。余談だが、この実物の写真を或るアメリカ人が中東の港で撮影に成功したことがあり、それを評者も見せて貰ったことがある。
これまでに公開されたのは「深せん」というミサイル巡洋艦で、自衛隊「さざなみ」が広東省の南海艦隊基地=甚江を公式訪問したおりに突如、出現した。
「江凱級」のミサイル・フリゲート艦は小型駆逐艦だが、多彩なミサイルを多数装備し、さらに小型艦化が進んでいるとされる。本書の掲載の写真は個人が偶然に撮ったのだろうか、初めて見る威容である。
さて本書の圧巻ともいえる写真は、これまで完全に秘密のベールに包まれてきた海南島の潜水艦基地である。
本書では、避暑地の高層リゾート・ホテルからの撮影と見られる、潜水艦基地の一部の写真が掲載され、『晋級核ミサイル搭載原潜』の写真がある。この写真はズームのためか。粒子が恐ろしく粗いが、おそらく超望遠で撮影したか、あるいは偵察能力を隠蔽するため意図的に粒子を粗くしたか。
艦には海中発射が可能な戦略ミサイルを十二基搭載できるという脅威のシロモノ、実際に配備されているかどうかの確認はされておらず、またペンタゴンもたとえ撮影に成功していたとしても想像図いがいは同盟国にも配給していないはずである。
個人的なことをかけば十年前に評者が海南島をカメラをぶらさげて歩いていたら軍人から「カメラをしまえ」と注意された。当時は海南島に潜水艦基地があることさえ知らなかった。昨年、海南島へ行った折はリゾート・マンションと豪華ホテルの林立に驚かされ、潜水艦基地を探すことなど念頭からきえていたっけ。
また最近配備された「玉昭級」ドック型揚陸艦の全貌と各種ミサイルの公開写真、既存の戦闘機の一覧もあるが、次の驚きは中国が秘かに開発中といわれる「ドローン」(無人戦闘機)だ。米軍も、現有のドローンは無人偵察機と短距離の無人戦闘機ていど、イスラエルも開発中で、中国はイスラエルから技術を供与された疑いもある。
米軍が開発している新型無人機は艦載機(X47-B)が含まれ、中国は殆ど同じ無人機「暗剣」のモデルを珠海の兵器ショーで展示している。チャイナ・ウォッチャーのみならず安全保障に関心のある読者には必見のムックである。

杜父魚文庫

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