「南シナ海に三本の深海リグを打ち込む。これは戦略兵器でもある」。「中国海洋石油」の王宜林・董事長が豪快に宣言、周辺海域の国々は唖然。
中国海洋石油(英文名CNOOC)は、中国版メジャー。国内三位。しかし国際的に悪名が高い。 第一に日本の領海から「日中中間線」を超えて、ガスを盗掘しているのは、この会社である。
第二にアメリカのメジャー買収を狙い、07年「ユノカル」を傘下におさめようとしていた。直前、米国連邦議会の反対で、このM&Aは寸前に流れたが、米国保守派は、この中国海洋石油の不気味な存在と野心を知った。
その後、オバマ政権の対中政策緩和により、12年には米国ガス大手のチェサビーグ・エネルギー社のもつ石油オフォショアの鉱区を11億ドルで買収した。カナダは「カザフスタン石油」を中国海洋石油に売却している。
第三に中国海洋石油は、紛争地、戦争地域にも平気で進出し、欧米メジャーが逃げ出しているナイジェリアの沼地の石油鉱区を三つ抑えてリグを立てた。
そればかりか赤道ギニアにも最近鉱区を確保したほか、豪エクソマ・エネルギー社から五つの鉱区を買収した。
中国海洋石油は資本金500億元。11年決算は売り上げ702億元で前年比29%増となったのも原油価格の上昇による。本社は北京、従業員は24000名。
この会社を率いるのは王宜林でまだ56歳。
石油学院に学び、石油大学で地質学を修めたものの、若き時代から政治的野心が強く、地方石油支店、営業所など拠点で党書記を兼ね、ついに中国のエネルギー企業第三位「中国海洋石油」の党書記。江蘇省出身。
この身分は単なる「やとわれ社長」とは違い、やや独裁的な裁量権のある董事長。中国政界を揺らす「資源派」の領袖ともいえる。
8月下旬に北京本社に幹部社員をあつめ、「年内に南シナ海に三本の深海リグを打ち込む。これは戦略兵器だ」と宣言した。
南シナ海はベトナム、マレーシア、ブルネイ、フィリピンと領海係争が継続しているが、周辺国のことはお構いなく、リグ工事を進める。
この強気は党の同意が明らかに存在するという政治背景があり、かつ、王宜林が、つぎの政治的野心、おそらく党中枢の幹部入りを狙っての個人的野望にも基づくものと推測される。
軍で宇宙衛星、戦略ミサイルを打ち上げた技術派が台頭しているように、政界でも「資源派」の躍進めざましく、げんに石油派から政治局常務委員まで昇竜のごとく出世したのは周永康。つぎにこの地位を狙うのは蘇樹林・シノペック会長であり、王宜林は、その後ろを走る。
杜父魚文庫
10398 悪名高き「中国海洋石油」 宮崎正弘
宮崎正弘
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