いま安倍晋三氏に浴びせられる「右傾」という中国や北朝鮮からの誹謗の言葉の矛盾は明白です。しかし軍事力を強めることが「右傾」だという前提の幼稚さと空疎は実は私は30数年前にも指摘したことがあります。その論評の紹介です。
<右傾化ではない、日本は「真ん中」に戻っていくだけ>
クリングナー氏が述べた。
「日本が“右傾化する”という指摘があるかもしれませんが、徹底した消極的平和主義、安全保障への無関心や不関与といった長年の極端な左寄りの立場を離れ、真ん中へ向かおうとしているだけです。中国の攻撃的な行動への日本の毅然とした対応は、米側としてなんの心配もありません」
確かに「右傾化」というのはいかがわしい用語である。正確な定義はまったく不明のまま、軍国主義や民族主義、独裁志向をにじませる情緒的なレッテルだとも言えよう。
■30年前にも指摘した「右寄り」という言葉のいい加減さ
こんな言葉の横行を見て、私はつい30年以上も前に自分自身が書いたコラム記事での指摘を思い出した。そんな昔と同様のいい加減な煽り言葉、ののしり言葉がいまなお大手を振っているのか、とも呆れた。
1978年6月、毎日新聞のワシントン駐在の特派員だった私が同新聞の「反射鏡」というコラム欄に書いた記事である。その一部を紹介しよう。
<最近の防衛論議をめぐる報道でふと考えこまされる表現がいくつかある。
『防衛論議の右旋回』とか『右寄り』というのが その一つだ。『防衛論議がいま右旋回する中で・・・』といった一見、何気ない記述などだが、これは防衛論議がいまのように高まることか、あるいはそういう 論議の中で防衛力の強化が叫ばれること、のいずれかを指す形容だろう。
ここでいわれる『右』とは、イデオロギー用語の『右翼』を略すか、またはぼかした用語なのは明らかだ。>
<となると、ここでちょっと立ち止まらざるを得ない。
『防衛について積極的に論議すること』イコール『右寄り』、『防衛強化を主張すること』イコール『右翼』という『イコール』をまず前提として成立させて、 ニュース報道をすることには疑問はないのだろうか。
このイコールでは例えば、最も左翼的であるはずのソ連や中国が防衛力強化に熱心な事実を説明できないのは明白である。>
<日本の防衛論争ではそういうレッテルをひとまずわきに押しのけての、解き放たれた論議が必要なのではないか。防衛を強化するにせよ、しないにせよ、ことの実態を正確に定義づける前にレッテルだけが走っていくような 不毛な論争はもうたくさんだという気がする。>(つづく)
杜父魚文庫
11261 安倍叩き用語は30年前のアナクロ 古森義久
古森義久
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