15873 鹿児島2区補選 「安倍人気」なお追い風   古澤襄

■金子氏初当選 政策なき野党共闘は“共倒れ”
徳洲会グループの選挙違反事件を受けた衆院鹿児島2区補欠選挙は27日投開票され、自民新人で元鹿児島県議会議長の金子万寿夫氏(67)=公明推薦=が、無所属で元民主党衆院議員の打越明司氏(56)=民主、維新、結い、生活推薦=ら5氏を破り、初当選を果たした。過去に鹿児島2区で強力な集票マシンの役割を果たした徳洲会グループが動けぬ中、自民、公明両党は安倍晋三政権の実績を前面に打ち出したことが奏功した。一方、政策なき野党共闘は“共倒れ”に終わった。(田中一世)
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 ■政策なき野党“共倒れ”
「政権への期待を感じる選挙戦だった。消費税増税やTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)などの課題を有権者に説明するのにもよい機会だった。政策がバラバラの野党が『反自民』だけで手を組んで勝てるものではない」
金子陣営で陣頭指揮にあたった自民党鹿児島県連の森山裕会長(衆院議員)は、鹿児島市谷山中央の選挙事務所で胸を張った。
とはいえ、決して楽な選挙ではなかった。議員辞職した徳田毅元衆院議員の父、徳田虎雄元衆院議員が創設した徳洲会グループの従業員、取引先、患者らを中心とした後援会の組織票は、鹿児島2区全体で5万票以上あるといわれる。これが選挙違反事件の後遺症で動けなかったからだ。
中でも鹿児島2区の有権者の3割強を占める奄美群島は、徳田虎雄氏と、保岡興治元法相=現在は衆院鹿児島1区=が壮絶な「保徳戦争」を繰り広げた地域。金子氏が、保岡氏の元秘書だったこともあり、島民の反応は冷ややかだった。
そこで金子陣営は、アベノミクスを追い風に自公政権の是非を問う選挙戦を展開した。安倍首相も19日、歴代首相として初めて奄美入りし「宝石のような美しい島で温かい歓迎をいただき感激しています」と語り、航空運賃大幅引き下げをはじめ、離島振興策や農業振興策の“飴”をてんこ盛りでプレゼント。金子氏も一貫して自分よりも自民党への支持を訴え、「この地域の代表者を安倍政権から失ってはならない」と繰り返した。
それでも選挙戦中盤の世論調査では打越氏に差を縮められ、一部メディアには「接戦」と報じられた。そこで金子陣営は、浮動票の多い鹿児島市南部のベッドタウンでの支持拡大に力を入れた。
奥の手も使った。徳田毅氏は親族2人の有罪判決が確定したことから公選法の連座制適用により、鹿児島2区からの立候補を5年間禁じられる公算が大きい。陣営はこれを逆手に取って、徳洲会系組織に「5年過ぎたら金子氏は毅氏に議席を禅譲する」との密約を持ちかけ、協力を求めた。森山氏も奄美市の街頭演説会で「毅氏がまた鹿児島県民のみなさんの審判を受けるときが来ると思う」と密約をほのめかした。
徳洲会元幹部は「私たちは約束を決して忘れない。立候補禁止期間終了後に毅氏が公認がもらえず、無所属で出馬することになっても全力で相手を引きずり下ろす」と語った。自民党は勝利したとはいえ、将来に重い課題を背負った。
ただ、敵失に救われた面も少なくない。
打越氏は、反自民勢力を幅広く結集しようと民主党を離党し、無所属で出馬した。民主党、日本維新の会、生活の党、結いの党の4党の推薦を得て野党共闘を打ち出した。
だが、原発再稼働、消費税増税、集団的自衛権の政府解釈変更など重要案件への賛否はバラバラ。仕方がないので「アベノミクスは弱者切り捨て」(小沢一郎生活の党代表)など紋切り型の政権批判や、「県民の誇りを取り戻す戦い」(海江田万里民主党代表)など具体性ゼロの主張を繰り返すしかなく、有権者に「野合」を印象づけるだけの結果を招いた。
そもそも打越氏は元自民党県議だったこともあり、消費税増税や原発再稼働に賛成し、憲法改正も是認している。このため、反原発勢力や護憲勢力はそっぽを向いてしまった。
それだけではない。民主党を離党しての出馬に連合鹿児島は不信感を募らせ、「推薦」を見送り、組織的な選挙支援は一切しなかった。動員もほとんどかけなかったため、盛況だったのは、知名度の高い蓮舫元行政刷新相が駆けつけた時くらい。海江田氏らが街頭演説しても哀れなほど聴衆は少なかった。
「政治とカネ」を争点に打ち出したのも失敗だった。そんなことをすれば、金子氏を快く思っていない徳洲会票でさえそっぽを向くに決まっているからだ。
このため奄美群島では徳洲会を持ち上げる戦術に切り替えた。野田佳彦前首相は「徳洲会は日本の医療の革命児です。虎雄さんの地域医療への大変な貢献は正当に評価されるべきだ」、蓮舫氏も「徳洲会が日本中で全否定されていることに心が痛んでならない。地域医療を根付かせた功績は否定されてはなりません」と徳洲会を礼賛した。
こんな付け焼き刃のおべんちゃらで島民が支持するはずもない。選挙戦は、政策なき野党共闘がいかに難しく、野党再編の道のりがいかに険しいかを印象づける結果となった。
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 ■金子氏「地方こそが原点」
午後8時すぎ、当確の一報が伝えられると事務所に支援者約100人が続々と集まった。金子氏は「人生最大の感激です。選挙戦を通じて安倍政権への有権者の期待が大きいと感じた。地方こそが私の原点。鹿児島の色んな課題に果敢に挑戦したい」と語り、万歳三唱で喜びを分かち合った。(産経)>
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