3154 オバマがトルコで見せた熱演 宮崎正弘

トルコの地政学的戦略性を重視したオバマ大統領の歴訪。最大の狙いはイランへのメッセージ発信だった。
オバマ米大統領のトルコ訪問を現地の大多数は「歓迎」した様子だった。
なにしろアンカラ入りする前日、プラハで開催されたEUサミットでオバマ大統領は、「みなさん、トルコをEUの正式メンバーに入れて下さい」とぶった。
直後、トルコの世論調査は52%がオバマ政権に好感と回答する有様だった。(現地紙『TARAF』、4月6日)。
だが、部分的な発言にそれぞれのセクトが強く反発した。
オバマはトルコ国会で基調演説を行い、ギリシア正教のハルキ神学校を再開するように要請した。同神学校は1971年にトルコ政府が閉鎖した。
ついで少数派宗教者の尊重とさらなる民主化を訴えた。これらは率直に言ってトルコ政治への内政干渉である。
そしてオバマ演説では、トルコとアルメニア国境の再開までも促した。
トルコがもっとも嫌悪するふたつの国はギリシアとアルメニア。その二つの国への外交政策に容喙する米国はトルコにとっては傲慢と映るだろう。
とくにアルメニア問題は情緒的側面が深く、翌日からイスタンブールで開催されたUNAOC(国連文明同盟フォーラム)に、アルメニアのアリエフ大統領は出席をボイコットした。
第一にオバマは次期NATO事務総長にラスムセン前デンマーク首相就任を推し、反対するトルコをなだめた。その裏取引はトルコ系の人物を副官(NATO事務次長)に充てるという人事上の妥協だった。
イタリアのベルルスコーニ首相がトルコのエルドガン首相と親しく、携帯電話でなだめ、ラスムセンの正式謝罪を条件とした(『ユーラシア・デイリィ・モニター』、4月6日)
ラスムセン前デンマーク首相は、モハメッドを侮辱した漫画事件に直接関与してイスラム教徒から強い反感を買っていた。
第二にオバマはトルコ国内のクルド独立運動の過激派PKK(クルド労働者党)を「テロリスト」と定義した。そして「米国はトルコ政府のゲリラ討伐作戦を支持する」とまで踏み込んだ。クルド族がむくれているのは言うまでもない。
▲中東の安定にトルコの貢献は大きい
第三はトルコの外向的仲介者としての役割を期待するとしてイスラエルVSシリア間の平和交渉にもっと前向きであるよう要請した。
トルコはシリアに隣接するイスラム友好国、他方、イスラエルとは軍事訓練を共有する間柄である。
第四にさりげなく、しかし、じつはこれがオバマ大統領のトルコ訪問の最大の狙いだった、イランとの対話再開のメッセージを挿入したのだ。
「イランが核武装を放棄する前提で地域の安定と経済の活性化に協力したい」とオバマが言えば、翌日にアハマドネジャッド・イラン大統領は「政治の変革は急がれるべきであり、米国の政策の現実的変革を基本的に評価する」と返答のメッセージが送られてきた。
第五にオバマはイラク民主化の過程でトルコの協力を欠かせないとして最大限に評価し、米国とトルコの外交協力関係のさらなる発展を謳った。
ともかくオバマがトルコで見せた熱演は「イスラムは友人であり、米国はイスラムと戦争を望んでいない。敵はテロリストだけである」とイスラム原理主義過激派と、世俗イスラムの一般民衆との乖離を醸成したのだった。
オバマの就任演説を思いだした。『米国はクリスチャンとムスリムとヒンズー、そのほか神への信仰の薄い人々があつまる国である』と、ムスリムを前面に出していたことを!
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