北朝鮮の核保有は生き残り戦略の手段化。オバマ政権の「無視」スタイルと北京の積極関与への転換と・・・。
「北朝鮮をめぐって新しい情勢の変化がある。主として日米中韓の外交スタンスの変化より、北朝鮮内部の変化による。また北京にも新思考が生まれ、国連も北朝鮮に新しい考え方となり、したがって今後、五カ国の対応が重要になるだろう」
北朝鮮専門家のシーラ・スミス女史が講演を始めた(6月29日、アメリカンセンター)。シーラ・スミス女史は米外交問題評議会(CFR)の日本担当上級フェロー。前ボストン大学教授。コロンビア大学で博士号。
以下は女史の講演要旨。
世界が直面しているのは危機管理。言うまでもなく北朝鮮の核をどうするか、だ。
いまや地域的難題ではなくグローバルな問題、国連でもトップの問題となった。このままでは韓国も核武装にすすむ可能性があり、日本とともに米国の核の傘で安心できるシステムを確立しなければなるまい。そうして転換点にあってオバマ政権は新しい幕開けと見ている。
これまでの経緯を見ると2004年に在韓米軍は南へ移動して軍の指揮系統主導は韓国軍に移った。クリントンの八年間、北は核開発を凍結した。その後のブッシュ・ドクトリンを、米国は依然有効と考えており、また北は核を小型化しミサイルに搭載する技術を持っていないと認識している。だが開発プログラムの目的が明確ではない。
北朝鮮の政権内部で後継者問題が急浮上し、核保有の野望とともに危機も継続される。核保有の野望は放棄されない。もし放棄するとすれば、北は膨大な代替保障を求めるだろう。
国連決議は前の1718と比較しても、今回の1874は厳しい内容をともなっている。そして米国は国務長官クラスの交渉が今後必要になろうと判断している。
つまり米国が懸念するのは北朝鮮の崩壊。それはありうることであり、米国は北朝鮮の政権転覆を求めてはいないけれども、転覆が起こりうると考えている。
だからワシントンー東京―北京―ソウルの密接な連絡が必要となり、中国が軸足を(日米よりに)移してきたのだ。
北朝鮮は後継者問題もからみ、おりからのイラン問題が重なって、北は「イラン要素」を考慮に入れて行動するだろう。
▲北朝鮮の動きを「無視」する外交スタイルのオバマ政権だが・・・。
シーラ・スミス女史の講演のあと、司会の小此木政夫・慶応大学教授が以下のコメントをした。
「北は必ず何かを仕掛けてくる。あるいは挑発してくるだろう。それに対応して米国がどう動くのか興味がある。
いまの米国は「ネグレクト政策」をとっていると見ている。あるいは「放置」と置き換えても良いが、北のエスカーレートとネゴシエーションという挑戦に対し、オバマ政権は無視する政策を展開してきた。しかし、これは一時的なのか、あるいは新しいオバマ外交のスタイルなのか」。
「ともかく北朝鮮の核保有の目的とは(1)抑止力(2)外交力を高めることになり、ここに(3)後継問題が絡み始めた。
NSAの『世界脅威報告』に拠れば、核兵器は外交の手段」と認識されており、外交上、核保有は安全を担保できるうえ、巨大な見返りがとれる。冷戦崩壊後、ソ連・東欧諸国は社会主義をやめ、中国も市場原理に走り、しかしながら北はどちらも選択しなかった。
とどのつまり北にとって核とミサイルが生き残りの手段化したのだ。体制維持と核と外交が密接に繋がっているのである」
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3569 北朝鮮をめぐって新しい情勢の変化 宮崎正弘
宮崎正弘
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