産経新聞の「単刀直言」に森喜朗さんが混迷する政局について語っている。森さんとは昭和44年(1969)以来、43年間の古い付き合いとなったが、誠実な人柄なのは間違いない。
思ってもみなかった総理大臣になって、メデイアからさんざん叩かれたが、森さんの人柄を知る私は終始一貫して足を引っ張ることはしなかった。角さんの秘書だった早坂茂三とは東京タイムスの政治記者時代からの旧知だったが、森さんをコキおろすことが多かった。
こういう時には、人それぞれだから黙って聞くことにしている。それが、ある日から「フルさん、森って大変な政治家だね」と言い出した。「森の清談」とかいう対談を重ねているうちに、すっかり森フアンになった。
「そうだろう」と勝ち誇ったように言うつもりはなかった。「なるほどね」と軽く受け流した。政治評論家になってからの早ちゃんは、傲岸無礼なコワもてで人気がでたが、根は単純な熱血漢。それに人情に厚く、誠実な人柄。
60年安保当時、首相官邸前の道路で早ちゃんは警視庁の機動隊員と大立ち回りを演じたことがある。背広の袖が引きちぎれて興奮していた。たまたま通りかかった私は、間に入ってとめ男をするはめになったのは、何かの縁なのだったのだろう。
私にとめられて、早ちゃんは照れくさそうな顔をした。興奮が冷めると、いつの間にか、いつもの早ちゃんに戻った。「災難だったな」と国会の参院食堂で慰めたのは言うまでもない。私は熱血漢が好きである。なにを考えているのか、底知れぬ”お利口さん”は肌に合わない。
早ちゃんも私も前立腺肥大を患った。森さんも前立腺ガンを患ったので「三人は前立腺の友だよな」と冗談を言っていたが、2004年6月に早ちゃんは肺ガンで急逝した。72歳。44年間の付き合いだったから、知らせを聞いたその夜はまんじりともせず朝まで寝付かれなかった。
早ちゃんが一転して森さんに惚れ込んだのは、その政局観にある。党人として幹事長など三役を歴任し、党内情勢については正確な判断をする数少ない人物。と言って、自分の政局観を人に押しつけることはしないので、よほど森さんに食い込まないと情報は取れない。
私はいまの混迷政局で、先見性のある政局観を持っているのは、メデイアが食い込めない森さんだろうと目星をつけている。その意味で「単刀直言」は面白い。
<社会保障・税一体改革関連法案が衆院を通過してよかったね。野田佳彦首相はよくやっておられた。苦しかっただろうけど本当によくやった。それは国民も認めてるよ。
思い返せば、僕が初当選した昭和40年代は自民、社会両党の対立の時代だった。国会はいつも乱闘。自由主義を信奉する勢力と、社会主義を信奉する勢力でベクトルが逆を向いているから当たり前なんだけど実に不毛だったな。
これではいけない。社会保障や安全保障、教育などの課題は与野党が胸襟を開いて話し合っていかないと成熟した民主主義とは言えない。そう思ってきただけに一体改革での民主、自民、公明の3党合意には万感の思いだったね。「あゝ、やっと日本の政治も成熟してきたんだ」ってね。
それにしても小沢一郎元民主党代表は一体どうしちゃったのかな。彼とは当選同期でずっと相対してきたけど、かつての彼の主張はある意味で筋は通っていた。政治改革にしても、国会改革にしても。
ところが、今回の行動はまったく合点がいかないね。消費税を導入した竹下登内閣で官房副長官を務め、細川護煕内閣で国民福祉税構想をぶち上げたのは一体誰ですか。福田康夫内閣の時に僕に「自民、民主の大連立で消費税を増税しよう」と持ちかけたことは忘れちゃったのかな。
それに昨年6月の菅直人内閣への不信任決議案提出の時、僕に連判状を突き付けてなんと言ったかな。
「自民党が不信任案を提出したら俺たちも乗る。菅内閣を倒したら谷垣禎一総裁を首相指名して大連立だ!」
こう言ったんだよ。それが野田さんが意のままに動かないからと言って、せっかく作った民主党を割って「反増税」「反原発」の「オリーブの木」を作るんだって?
彼が目指した「政権交代可能な二大政党制」はどこに行ったのかな。これまでの主張は「すべて権力を掌握するための詭(き)弁(べん)でした」と認めているようなもんじゃないか。
政党を作っては壊し、壊しては作り…。でもどんどんスケールダウンしてるよね。平成6年12月に「パシフィコ横浜」でやった新進党の結党大会を思い出してよ。でっかい旗にワーッと歓声が上がってさ。「あゝ、やられたな…」。正直そう思ったよ。
でも今度の新党にあんな熱気ある? 彼を支えてきた同志はみんな離れていった。家族もね…。命運尽きたかな。もうこれ以上晩節を汚さない方がいいんじゃないかな。
まあ小沢さんは民自公3党に「談合政治」のレッテルを貼って攻撃してくるだろう。だからこそ民主も自民も公明もしっかりしなきゃいかん。まずは一体改革という大事業を粛々と成し遂げることだ。
ところが、谷垣さんも石原伸晃幹事長も「党をまとめられないならすぐに解散しろ」などとバカなことを言ってる。いいですか。税財政の議論で自民党は勝ったんですよ。民主党だって内心では「自民党の主張は正しかった」「負けた」と思ってるんだ。それなのに勝ち誇ったようなことを言っちゃいかん。谷垣さんの街頭での口調は正直言って品がない。もっと謙虚にならないと…。
一体改革法案が成立しても国民生活と直結した懸案はまだまだある。選挙制度改革も待ったなしだ。もう民主、公明両党で強引に一部連用制を導入しようとしても無理ですよ。そもそも「一票の格差」是正のために一票の価値をさらにねじ曲げてどうするの?
それに比例代表で「民主党」と書いてもらって当選した人が新党を結成するようなおかしな現象を防ぐには抜本改革しかない。ずばり中選挙区制ですよ。
昔の制度じゃなくて現行の300小選挙区を150に統合して地方は2~3人区、都市部は4~5人区にする。超党派の「選挙制度の抜本改革をめざす議員連盟」(会長・加藤紘一元自民党幹事長)がすでに青写真を作っているでしょ。あれをたたき台に与野党で議論すれば年内にまとまるはずだ。
とにかく次の衆院選まではパーシャル連合(部分連合)を組むしかない。消費税を増税するならデフレ対策で補正予算も組まなきゃならんでしょ。そうなると秋に臨時国会を開くしかない。
それに9月には自民党総裁選、民主党代表選もある。他党には口出ししないけど、自民党では石破茂前政調会長、石原幹事長、町村信孝元官房長官あたりが手を挙げそうだね。谷垣さんも当然出るのかな。それに安倍晋三元首相も…。ちょっと小粒な感じがしないでもないが、政権奪回に向けた「党の看板」を選ぶんだから堂々と議論をぶつけあってほしいね。(産経 )>
杜父魚文庫
10050 「小沢さんの命運尽きたな」 古沢襄
未分類
コメント