2022 先進国と新興国の間の対立 古沢襄

洞爺湖サミットの評価は立場によっていろいろ。民主党は成果ないとコキ下ろしたし、新聞によっては民主党と同じ落第点をつけるところもある。
だが、そこは立場を越えて冷静に判断すべきだろう。基本的には先進八カ国のG8で世界を仕切る時代は去った認識を持つべきである。中国やインドという新興国を除外して温室効果ガスの削減は考えられないフシ目にきている。
温暖化対策、食糧問題、脱石油など新しい枠組みで合意形成を図る時期にきた、そのことを認識した意味でいえば、成果なしと斬り捨てる方が無責任のそしりを受ける。人ごとのように評論家的な態度をとることは許されない。
来年のイタリア・サミットまでに先進国と新興国が利害を越えて調整する協議が必要になる。国連の場ではかえって議論多くして、堂々めぐりで話が進まないおそれがある。リーダーシップがとれる主要国の意見調整が急務となっている。
比較的に中立の立場をとるロイターの記事だが、G8で合意した内容が新興国に受け入れられなかったことに悲観的な論調が目立った。「新興国の経済を阻害、妨げるものではない」とのG8の主張も空振りに終わったと評した。
脱石油でフランスは原子力発電に大きく依存し、ドイツは豊富な石炭に依存(電力の50%以上)する一方で世界一の風力発電の電力量を持つに至った。とはいうものの風力の電力量は総発電電力量のわずか2%。ドイツの太陽熱発電も実態以上に伝えられている。今でもロシアからパイプラインによる天然ガスの供給を受けていることは日本ではあまり知られていない。
イギリスは北海海底油田とガス田の生産が始まって、石油、天然ガスの輸出国となったが、埋蔵量に限界があることから、フランスと同じように原子力発電の依存度が高まり、24%のシェアを占めるところまできた。
フランス、ドイツ、イギリスからすれば、温室効果ガスの削減目標を達成するために、日本を巻き込み、アメリカに譲歩を迫った勢いで、中国、インドの理解を得たかったのだろうが、まだ息の長いマラソンレースになる。
<[北海道洞爺湖 9日 ロイター] 主要8カ国(G8)と中国やインドなどの新興国は、温室効果ガスの削減目標で合意できず、先進国と新興国の間の対立が容易に解決できないことを示す結果になった。
G8は国連での交渉に参加する全ての国と2050年までの50%削減で合意することを目指すとした首脳宣言を採択したが、その翌日に新興国から合意受け入れを拒否され、G8宣言自体の力不足も露呈したかたちだ。2009年末までに最終合意するというゴールが、洞爺湖からは展望できなかったようだ。
主要8カ国(G8)に中国やインドなど新興国を加えた主要排出国会合(MEM)は9日、エネルギー安全保障と気候変動に関する首脳宣言を発表した。参加16カ国で世界の温室効果ガス排出量の8割を占め、新興国と先進国の利害を調整する場として注目されている。
サミットとあわせて開催されたMEM首脳会合では、G8と過去に大量のガスを排出してきた先進国の責任を追及する途上国との溝は埋まらず、G8が8日に途上国に投げかけた「長期目標共有」に答えを出すことが出来なかった。
日本政府筋によると、会議ではG8以外でG8首脳宣言を支持したのは韓国・オーストラリア・インドネシアの3カ国のみ。「新興国の経済を阻害、妨げるものではない」とのG8の主張も空振りに終わった。
一方、MEMに出席する中国、インド、ブラジル、南アフリカ、メキシコの新興5カ国は8日、2050年までに先進国が温室効果ガスの排出量を1990年比で80─95%削減するよう求める政治宣言を発表。すべての先進国に対し、2020年までに1990年対比で排出量を25─40%削減する中期目標にコミットするよう呼び掛けるとともに、新興国の気候変動対策を支援するため、国内総生産(GDP)の0.5%を拠出するよう要請した。
きょうの会合ではこうした新興5カ国の政治提言について議論はなかったが、サミットで最大のテーマだった地球温暖化対策は深い溝を残したまま新たな段階に入る。
今後、温暖化をめぐる交渉の主戦場は国連の気候変動枠組み条約締約国会議に移り、2009年末までのポスト京都の枠組み合意を目指す。MEMも「引き続き建設的に協力する」ことで一致し、2009年にイタリアで開催される主要国首脳会議とあわせて第2回目のMEM首脳会合の開催を決めた。
地球温暖化対策は、今回のサミットで長期目標設定に消極的だった米国を取り込む形で一定の前進はみられたが、新興国と先進国間での仕切り直しの格好。(ロイター)>
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