平壌で行われている温家宝・金正日会談後、重大発表があるという観測が流れている。中国の温家宝首相が朝鮮戦争の最中、米軍機の爆撃を受けて28歳で死亡したとされる故毛沢東主席の長男、毛岸英氏ら戦死した中国兵の陵墓に献花したのも、中国と北朝鮮の「血で結ばれた伝統的友好」をあらためて強調する狙いがあったという。
このところ冷え込んだ関係といわれた中国と北朝鮮が、劇的に変化する兆しがみえる。そのための地ならしが慎重に行われてきて、今度の温家宝首相の訪朝になったとみていい。空港に金正日総書記が出迎え、満面の笑みを浮かべて、温家宝首相と抱き合った。
韓国の朝鮮日報は九月十日の「金正日総書記の後継者は現時点では話し合われてはいない」という金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長の公式発言に注目している。金永南委員長は北朝鮮で序列第二位の座にあり、名目上、国家元首を務めている。空港にも金正日総書記と並んで温家宝首相を出迎えた。
温家宝首相は金正日総書記との会談前に金永南委員長と会談した。訪朝で核問題で明確な成果を上げることを念頭に置いている温家宝首相は、中国が主導する六カ国協議に北朝鮮が復帰することが条件になる。
もし北朝鮮が中国の期待に応えなければ、「中国は北朝鮮内部で体制変化の名分を作り出すことができる。北朝鮮内部の新たな勢力と中国が手を結べば、金正日一族を追い払うことも、それほど難しい問題ではない」と朝鮮日報は分析している。
北朝鮮の”熱烈歓迎”の裏には、世界第二の経済大国になろうとしている中国の軍事・政治的な圧力が感じられる。「北朝鮮の社会主義者が、金日成一族は社会主義の代わりに封建世襲を選んだと考えると、これは金正日体制打倒の名分となり得る」という朝鮮日報の分析は面白い。
<「(金正日〈キム・ジョンイル〉総書記の後継者は)現時点では話し合われてはいない」。これは、9月10日に北朝鮮の金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長が公の場で語った言葉だ。金永南委員長は北朝鮮で序列第2位の座にあり、名目上、国家元首を務めている。
ところで同24日、台湾の写真家ファン・ハンミン氏が北朝鮮の元山にある模範共同農場で撮影したポスターの写真が公開された。ポスターでは、金正雲(キム・ジョンウン)と思われていた金総書記の三男の本名が、それとは異なるつづりで「キム・ジョンウン同志」とハングル表記されている。「白頭の血統を継いだ青年大将」という修飾語もある。
金総書記の後継者が三男ジョンウン氏に決まったという話は、今年3月以降、まさに既成事実化している。それなのに、なぜ急に金永南委員長はこんな発言をしたのか。これは、3代目への世襲はそれだけ不透明で難しい、という意味だ。
(1)「キム・ジョンウン大将」「白頭の血統」とはどういう意味か
最近、ジョンウン氏が「大将」の称号を得たと報じられた。大将は、人民軍では元帥のすぐ下の階級だ。ジョンウン氏関連の情報は、流出ルートが2本ある。1本は、中国など海外に出た北朝鮮の住民経由で伝えられるルートだ。
これらの人たちは、外の世界が求めるものをでっち上げるのにたけている。求めるものを与える代わりに、金もうけができるからだ。ある高官クラスの脱北者は、「現在中国などに外貨稼ぎに出てきているレベルの北朝鮮住民は、北の権力層の深部で起こっている情報を知ることはできない」と語った。
もう1本のルートは、1万7000人いる脱北者の人脈を通じ、内部情報が伝えられるというもの。ここには、国境を守る軍人から始まり、北朝鮮保衛部の要員に至るまで、さまざまな情報提供者がいる。
この二つのルートの情報を比較してみたところ、ジョンウン氏に関する情報は互いに違っていた。中国などへ自主的に出てくる貿易担当者や北朝鮮在住の華僑出身者は、大部分が金総書記の後継者としてジョンウン氏の名前を挙げている。
これらの人たちは、最近作られた『歩み』のような歌は、まさしくジョンウン氏が後継者になったことを意味していると語る。それに加え、9月24日に公開された北朝鮮の共同農場の写真は、金総書記の後継者としてジョンウン氏が決定したらしい、ということを強く印象付けた。
(2)金正男氏は完全にアウトか
後継構図から完全に押し出されたように見える金総書記の長男・正男(ジョンナム)氏は、2005年までは有力な後継者として名前が挙がっていた。その後、次男・正哲(ジョンチョル)氏の名前が挙がったが、今では三男のジョンウン氏に追い立てられたような雰囲気だ。
正男氏は幼いころ、既に金総書記から「大将」の称号を与えられていた。100万ドル(現在のレートで約8945万円、以下同じ)もするような誕生日プレゼントをもらうほど、格別な愛情を注がれてきた。それほどの待遇を受けた正男氏の没落は、金総書記の後妻・高英姫(コ・ヨンヒ)氏の台頭と関係がある。
ところで、ここで注目すべき部分は、北朝鮮の国防委員会と金総書記の妹・敬姫(ギョンヒ)氏の存在だ。かつて国防委員会は形式的な組織だったが、最近では北朝鮮の情報機関「作戦部」「対外連絡部」「35号室」を管轄下に置き、名実共に最高権力機関となった。
その結果、国防委員会を実際に動かしている呉克烈(オ・グクリョル)国防委副委員長と張成沢(チャン・ソンテク)国防委員の力も強まることになった。ファン・ジャンヨプ元労働党秘書は、「金総書記の健康状態が悪化し、自ら行使していた権力の一部を呉副委員長と張委員に受け持たせたようだ」と語った。
加えて、実力者中の実力者というべき敬姫氏の選択も変数として作用する。子供がいない敬姫氏は、金総書記の長男・正男氏を自分の子供のように育ててきた。幹部会議にも常に正男氏を連れてくるほど、格別の愛情を注いでいたという。
ジョンウン氏が10歳も年上の正男氏に代わって後継者になろうとするなら、国防委の実力者や敬姫氏を納得させなければならない。故・金日成(キム・イルソン)主席も、次男の平一(ピョンイル)氏をかわいがっていたが、長子継承の原則を掲げた革命の元老たちの要求により、正日氏を後継者とした。
キム・ジョンウン氏(3)ジョンウン氏の支援者は保衛部か
金永南常任委員長が公式に否定したことで事実かどうかが話題に上った「キム・ジョンウン氏後継者説」は、国家安全保衛部が押し付けたものである可能性も大きい。北朝鮮消息通によると、北朝鮮が3代目への世襲を進める中で最も恐れているのは、内部および外部の反応だという。
北朝鮮で3代目への政権世襲は、思ったより簡単ではない。まず3代目への世襲には、後継者の偶像崇拝といった作業が必要だが、そうした作業を行える根拠は何もない。金総書記が誰かを指名してすぐに解決できる問題でもない。
最近韓国入りした対南工作機関出身のある脱北者は、「金総書記が息子の誰かを指名すれば、後継者になるだろうが、北朝鮮のエリートと北朝鮮住民がそれを認めることはない」と語った。
この脱北者は、後継の構図で最も深刻な問題は、金総書記が生み出した破滅的な経済状況と世襲の名分だと語った。故・金日成主席から金正日総書記への権力移譲期には食べていくにも問題はなく、拒否反応はなかったが、今では状況が違うというわけだ。
二つ目の問題は、名分だ。金総書記は、後継者になる過程で、自分が単に首領の息子ではなく、首領の戦士の中でも資質が認められた優秀な「天才」だったから後継者になった、と宣伝してきた。
3代目に世襲するとなると、「天才は金日成の一族からしか生まれないのか」という疑問に答えなければならない。北朝鮮の社会主義者が、金日成一族は社会主義の代わりに封建世襲を選んだと考えると、これは金正日体制打倒の名分となり得る。
最も重要な問題は、核実験などで同盟国である中国の信頼を失った金正日一族に対する、中国指導部の立場だ。社会主義の代わりに世襲を断行すれば、これは中国の伝統的共産主義者に背くことになる。
そうなると、中国は北朝鮮内部で体制変化の名分を作り出すことができる。北朝鮮内部の新たな勢力と中国が手を結べば、金正日一族を追い払うことも、それほど難しい問題ではない。(朝鮮日報)>
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