6552 重慶「反日」デモの面妖な仕掛けと背景 宮崎正弘

26日の重慶「反日」デモはいかにも面妖な仕掛け。重慶といえば中国のアルカポネ=文強が死刑になったあと新マフィア軍団が猖獗。
2010年10月26日午後に重慶で「反日」デモが行われ、日本領事館前で日章旗が焼かれた。おなじみ「釣魚島は中国領」「日本製品排斥」をスローガンに日本のマスコミに拠れば大学生多数が参加したそうな。
三峡フェリーの出航地点=朝天門(集合場所)から重慶大都会広場前の高層ビルにある日本領事館前まではおよそ二キロ。最初は二百人のデモ隊が、領事館前では千人以上に膨れあがったという。
しかし日本領事館は高層ビルの37階。いくら大声で叫んでも届かないだろう。画像をみる限り、深刻な反日家もいなければ、若者もそれほどまじってはおらず、娯楽がない街の自慰行為かとおもうほど、悲劇的に盛り上がっていない。
重慶は蒋介石が逃げ込んで臨時政府を置いたあと、毛沢東としぶしぶ会談した場所としても知られ、三年前には新築の反日記念館ができた。市内でもっとも有名な繁華街は人民広場で同広場前には三峡博物館(05年完成)がでんとかまえる。
この博物館は上海博物館に対抗してつくられた。筆者も三年前にのぞいたことがあるが、オペラハウスのような偉容さ。
なぜ今頃、重慶で反日デモがおきたのか?
香港の有力紙『明報』によれば重慶市内のTシャツ経営者がよびかけ、そろいの反日Tシャツをつくって気勢を上げた由だが、どうもそういう表面的な話ではないのではないか。
重慶の権力闘争は、これまた太子党vs団派のたたかい。
団派のホープだった王洋が08年まで重慶市書記だった。その前は賀国強(現在政治局常務委員、規律委員会担当)、そして王洋の後任が元大連市長、沿海部の遼寧省から内陸山奥へ「左遷」された、前商務大臣の薄煕来だった。薄は「太子党」の有力幹部。薄一波の息子。知日派としてしられる。
▲重慶の利権と腐敗の構造に地殻変動があった
2009年六月だった。重慶市司法局長の文強が北京出張中に北京で拘束された。同時に市の公安幹部を始め、腐敗官僚とともに重慶に巣くったマフィアを一斉に手入れ、つまり暴力団19団体、合計1544名を逮捕した。
市民ばかりかニュースは中国全土に流れ、拍手喝采の嵐となる。近年これほど大規模なやくざへの手入れなかった。薄は一躍大スター、国民待望の指導者という評価となる。
重慶マフィア壊滅。なかにも市議会有力者で建設運送企業を手がける黎強、陳明亮という大物も含まれていたので重慶市民らは溜飲を下げた。
これは胡執行部にとって腐敗撲滅キャンペーンの現れだが、共産党高幹にとっては、明日は我が身と、大騒ぎとなる。(薄め、良い格好しやがって)というのが偽らざる共産党幹部の心境だったろう。
薄煕来・重慶特別市党委書記は猖獗するマフィア、暴力団を退治したので、中国全土から拍手喝采、ポピュリズム政治家として全国区、次期首相候補とまで言われた。政治局常務委員入りを狙っているのは間違いがない。
薄は事前に、遼寧省でマフィア撲滅の指揮に当たった王立軍を呼び寄せ、重慶の警備、公安を担当させ、マフィア壊滅作戦を実現した。
文強らは地元マフィアの恐喝、博打、売春、密輸レベルを超えて、ありあまる資金を元での運送会社経営と高利貸しを取り締まらず、マフィアと組んで私服を肥やした。文強夫人は高利貸しで大もうけ。イケメンを数人囲ってハーレムがあったというスキャンダルも暴かれた。
文強の保護を受けたマフィアは重慶の他の縄張りにも侵入し、敵対したヤクザを殺害したり、拉致誘拐による身代金も荒稼ぎ、市民の怨嗟の的だった。
前任の王洋は、この重慶マフィアに手をつけられずアンタッチャブルな存在のまま放置したから、薄煕来・党委書記が、この市あげての悪行集団を壊滅させたことになり、団派への鋭い批判ともなった。
▲次期首相を狙う野心家=薄煕来の個人プレィだったのか?
しかし中央では政治局常務委員から次期首相を狙う野心家=薄煕来の個人プレィと解釈され、共産党内部での評価は庶民とかけ離れて低いのだ。
2010年7月7日、首謀者の文強は最高裁が上告を退け死刑が確定、すぐに薬物注射による死刑が実行された。
文強の死刑の後、以前に重慶を「治めていた」旧マフィアのかわりに、新たに市内に入り込んできたマフィアは縄張りを次々と掠め取り、商圏を広げた。
薄煕来は共産党内の風向きを読んで、彼らを野放しとし、かわりに毛沢東の巨大な銅像を建立するなどちぐはぐ。中央へのあてつけ、嫌がらせ、不満の爆発だ。五中全会前に薄は権力闘争からはじかれ、はぐれ狼的存在となった。
26日の重慶「反日デモ」なるものも、このような複雑な権力闘争を背景に随分とはやくから計画されていた。反日をおそらく政治的手段として権力闘争に利用したのだろう。問題は仕組んだのが薄書記自身でも、上海派でもないとすれば、旧マフィア?
 
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(読者の声)西尾幹二さんのブログに次の箇所があります。(引用開始)「インターネット情報によると、中国共産党の解党が近いらしいという噂も聞こえてくるのである。出所は「大紀元」らしいが、体制崩壊後を早くも予想して、共産党内部が幹部の犯罪の証拠煙滅の準備会議を開いたというようなことが語られている。本当だろうか。
この噂によると、18日に党大会で次期主席を約束された習近平は共産党を整理するゴルバチョフの役割を果すだろう、アメリカは着々とその方向を支援し、推進する動きをしている、というのであるが、本当だろうか。だったら万々歳である。アジアにも「ベルリンの壁崩壊」の時節が到来することになる。
私は半信半疑で、早速宮崎正弘さんにそんな噂は聞いていないか、と電話をしたら、「全然」と即座に否定されてしまった。あゝやっぱり駄目か、とがっかりした。「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」(10月22日通巻3110号)は私のこのときの電話に対する答だったようだ。ご覧下さい。中国の近い未来に変化はないらしい。私の悪夢はむくむくとまた大きくふくらみ始めているのである」(引用止め)というわけで、習近平が「中国のゴルバチョフ」になる可能性はまったくないのでしょうか?(UU生、茨城)
(宮崎正弘のコメント)習近平をささえるグループは利権集団の代表「上海派」と利益優先機会便乗主義の太子党です。かれらが支持する次期政権は、改革にはさほどの興味があるとは思えません。ゴルビーは天啓をうけたかのように政治学をおさめての思想と歴史観があった。習近平に漂うのは中華的ニヒリズムです。
杜父魚文庫

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