<<関岡英之『国家の存亡――“平成の開国”が日本を滅ぼす』(PHP新書)>>
菅政権は六月を最終目処としてきたTPP交渉参加を遅らせた。東日本大地震の影響だが、本音は夏頃に一挙に参加表明にもっていきたいらしい。
『平成の開国』などと馬鹿の一つ覚えのフレーズ、自由化に乗り遅れるな!などという一見まともそうに見えるが、本質はきわめて陰険な推進論が跋扈している。農業、漁業を壊滅させるばかりか、TPPはもともと米国の日本からの収奪が目的である。
TPP展開を言っている御用学者と大手マスコミには気をつけよう。かれらは米国の手先かもしれない。
さて本書で関岡氏はこう言う。「TPP参加は日本の復興には役立たない。なぜならTPPの本質は『年次改革要望書』に象徴される『米国による日本改造メカニズム』のバリエーションの一つにすぎないからだ」とばっさり。
これほどの自信で米国の陰謀的なプロットを正面にとらえ、真っ向から批判する論理はわかりやすい。歯切れが良い。
「TPP交渉はあくまでも米国の国益のために、米国主導で推進されている」のであり、本書は微に入り細を穿ち、そのことを論証している。
本書のなかに中国人の日本の水資源と森林買い占めの具体的ケース・スタディと、いわゆるサブマリン特許という、米国の卑劣きわまりない権利主張のトラップに関しても述べられている。
すでにTPP反対論が書店にはあふれている。浜田和幸参議院議員を筆頭に、藤井聡、中野剛志の両京都大学教授ら。雑誌にも多くが反対の論陣を張っているが、官庁の多くが賛成し、マスコミ大手が賛成に回り、どんづまり状況となった。まるでマスコミVSミニコミ。官僚VS在野。保守+左翼VS伝統保守。
関岡氏のTPP反対論の強みは、米国の対日要求の背後に潜む野心、野望が「協定」だの「条約」だの外交上の制約を超えて、曖昧な「要望書」というかたちで迫っている事実を的確に把握し多角的に論評しているポイントにある。
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(読者の声)菅直人氏の違法献金受領に対して民間人二人が告発したことを連休中に投書させていただいた中に書かせていただきましたが、5月10日に東京地方検察庁特捜部がその告発を受理しました。
起訴するか否かの結論が出るまでには2ヶ月掛かったとして、不起訴に対して検察審査会から起訴相当の審判が2回でて起訴になるまで半年かかります。もっとも、首相は自身を含む大臣の起訴を取りやめさせる権能をもっています。
しかしそれを行使すれば、ほぼ確実に内閣不信任、解散となります。半年の間には自民党の総裁選挙もあります。日本に大きな変化が起きる兆とみます。(ST生、千葉)
(宮崎正弘のコメント)その前に是非。半年も待てないでしょう。しかし空き缶、イラ菅は、浜岡停止で味を占め、つぎは六月内閣改造という人事権の伝家の宝刀とぬいて、逃げ切る思惑のようです。米国は「来ても貰っても困る」とばかり、首相訪米を受け入れませんが。
杜父魚文庫
7880 書評『国家の存亡 “平成の開国”が日本を滅ぼす』 宮崎正弘
宮崎正弘
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