訪米後、トルコ訪問前に習近平はなぜ独仏を飛び越えてアイルランドの地へ行ったのか?
訪米中、米国のメディアはかなりのおべんちゃら修辞を並べて習近平を誉めあげ、アイオア州でも州知事やら町長まで登場して歓迎し、カリフォルニア州でも州知事がでてきたほどの熱烈歓迎ぶり。バイデン副大統領とNBA観戦もおこなった。
要するにささくれ立った米中関係の空気を多少は和ませることに成功した。「泰然として穏和な印象をあたえた習近平の訪米は成功だった」と在米華字紙も書いた。しかし、どの訪問先にもFREE TIBETのデモ隊があった。
トルコ訪問を前に習近平は、経済貿易協力協定などに署名するためアイルランドへ飛んだ。ダブリンでもチベット独立を訴えるデモが行われた。
しかしなぜ欧州の主要国を避けて、習近平はアイルランドへ飛んだのか?実はアイルランドと中国は密接な貿易関係がある。トウ小平の改革開放のモデルは、アイルランドのシャノンにある「輸出加工区」(自由貿易地区)がヒントで、1980年に国家輸出入部の副大臣だった江沢民が訪問し、多いに参考した。浦東新工業区の開発のモデルともなった。天津海浜工業区もそうである。
アイルランドには温家宝首相も朱容基首相も訪問しており、今回の習訪問団は150名ものビジネスマンを帯同した。
「アイルランドの輸出加工区は1959年に設立され、これが中国沿岸部の経済特区樹立のモデルとなった」(ディディ・カースタン・タトロウ、『ヘラルド・トリビューン』、2月23日)。習近平は米国からの特別機を、このシャノン輸出加工区のそばの飛行場へ直接乗り入れ、アイルランド訪問の第一歩を、この工業団地の視察においた。ダブリンで「投資フォーラム」に出席したのは、その後である。
▼各地でリップ・サービスも忘れず、無理な作り笑いも愛嬌か
「欧州が直面している不況とユーロ危機は伝統的な欧州の知恵と難題を克服できる能力に恵まれており、かならずや現下の危機を欧州の人々が突破できるとわたしは信じている」と習近平は鼓舞し、「欧州経済は成長軌道を回復する筈であり、いまの危機は短期的なものであると中国はみている」と記者会見でも述べた。
アイルランドは過去十五年、めざましい経済発展を遂げて、貧困な農業国家からハイテク工業先進国へと脱皮したことは中国経済の今度におおいなる参考となると習近平は地元紙『アイリッシュ・タイムズ』のインタビュー(2月20日付け)にも書面で答えた。
すでに中国は欧州各国を各個撃破しており、胡錦涛主席、温家宝首相、李克強副首相は手分けしてスペイン、ポルトガル、ギリシア、ハンガリー、イタリアを訪問している。
ドイツとフランス首脳は、逆に北京へご機嫌伺いに飛んでいる。英国首相も北京に詣でた。
これは中国の標榜する「汎欧州外交」だが、近年の訪問外交における成果の共通性は現地への投資、それもユティリティ企業(電力、ガス、水道企業)への大規模な直接投資と株式取得が同時並行して行われていることに注目しておく必要がある。
杜父魚文庫
9151 中国の標榜する「汎欧州外交」 宮崎正弘
宮崎正弘
コメント