14770 山内昌之さんの「米中東政策転換」論   古澤襄

東大名誉教授だった山内昌之さんが今朝(12月1日)の読売新聞で「米の中東政策転換」を書いている。これとロイター通信社の「イラン核協議の歴史的合意」(杜父魚ブログ)を読み比べてほしい。
カイロ大学客員助教授、ハーバード大学客員研究員だった山内さんの中東国際関係論は、かねてから敬意をもって読ませて頂いているが、ロイターに較べるとはるかに優れた論評となっている。
この論評が読売1000万部の読者だけに読まれているのは勿体ない。読売嫌いの人もいるのだろうが、12月1日の読売紙「地球を読む」だけは目を通してほしい。
山内論評は「最近のオバマ米大統領のシリア問題をめぐるロシアとの妥協や、イランのウラン濃縮承認と経済制裁の一部解除を、米政府は”歴史的”合意と自ら評価する。
だが、イランと敵対するイスラエルはもとより、米国のアラブにおける同盟国エジプトやサンジアラビアの感情は穏やかでない。この三国に共通するのは、オバマ氏への不信の増大である」の書き出しで始まっている。
この点だけをとらえれば、中東ドバイからのロイター論評「核開発問題をめぐりイランが欧米など6カ国と歴史的な合意に達したことで、中東における力のバランスは、相次ぐ反政府デモで弱体化したアラブ諸国から、イランへと大きく傾く可能性がある。
今回の協議は、長く対立してきた米国とイランの雪解けへ道を開くものとなった。一方で、イスラエルやアラブ諸国などは、自国の利益と深く対立するイランの覇権国化を強く警戒している」とさして変わりがない。
しかし、ロイターはそれ以上踏み込んだ解説となっていないのに対して、山内論評はオバマ大統領の新中東政策の変化に鋭く斬り込んでいる。
「米国の新中東政策の受益者は、これまで敵対関係にあったイラン、アサド政権のシリア、レバノンシーア派組織ヒズボラに他ならず、困惑したしたのは同盟国のサウジアラビアとエジプトであろう」と指摘、中東の混沌と暴力による脅威など事象の大半は、米国の戦略的利益に影響を与えない(スーザン・ライス米大統領安全保障担当補佐官)の言をひいている。
このことは「オバマ氏の中東政策の本質は、長期戦略に基づく現実政治でなく、短期利益を優先するプラグマティズムにある」と指摘する。極言すれば米国の短期利益を優先するために、アラブの同盟国をたやすく使い捨てるのがオバマ中東外交だというわけである。
”アラブの春”を唄いあげた欧米が招いたのは、アフリカ諸国の混沌と暴力による連鎖だったのではないか。”中東不干渉”の美辞麗句を連ねるオバマ外交によって、混沌と暴力による連鎖が中東地域全体に広がりかねない。外交・安全保障音痴のオバマ氏は日本のハト・カンよりも上を行く気がしてならない。
杜父魚文庫

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