17389 ノーベル物理学賞に赤崎・天野・中村の3氏     古澤襄

【10月7日 ストックホルム/スウェーデン AFP】スウェーデン王立科学アカデミー(Royal Swedish Academy of Sciences)は7日、2014年のノーベル物理学賞(Nobel Prize in Physics)を、名古屋・名城大学(Meijo University)の赤崎勇(Isamu Akasaki)終身教授、同・名古屋大学(Nagoya University)の天野浩(Hiroshi Amano)教授、米カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)の中村修二(Shuji Nakamura)教授の3氏に贈ると発表した。
「明るい省エネ型の白色光源を可能とする効率的な青色発光ダイオードの開発」が評価された。(AFP)
■ノーベル物理学賞 三原色そろい一気に用途拡大
ノーベル物理学賞の受賞が決まった3人の日本人が開発に関わった青色発光ダイオード(LED)。スマートフォンなどに使われる高精細な画面や、従来のDVDよりも記憶容量が大幅に増えたブルーレイディスクなどの普及につながった。
光の三原色である赤、緑、青。このうち、青色で明るい光を出すことが難しく、開発は困難を極めた。
赤崎勇・名城大終身教授らは「窒化ガリウム」という素材に注目し、結晶化の方法について粘り強く実験を重ね、青色LEDを実現させた。
三原色がそろったことで、どんな色でも合成できるようになり、応用範囲が一気に広がった。
スマートフォンでは、液晶ディスプレーのバックライトにLEDが使われている。また、この技術はより短い波長のレーザー光線の開発にもつながり、ブルーレイディスクの再生機にも活用された。
一方、中村修二・米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授が、青色LEDの特許権の確認などを求め、開発時に在籍していた日亜化学工業を相手取って起こした訴訟は「発明の対価」に対する考え方に一石を投じ、サラリーマンに甘んじてきた多くの社内研究者に光を当てた。
訴訟は、高裁が2004年12月に和解勧告。対価は一審で認められた604億円の100分の1に当たる約6億円に大幅減額され、05年1月、日亜が遅延損害金を含めて約8億4000万円を支払うことで和解が成立した。
その後、研究者が企業に発明の対価を求めた訴訟では、和解や研究者側の勝訴が相次いだ。
06年7月、東芝元社員の半導体フラッシュメモリー発明をめぐる東京地裁での裁判は、東芝が8700万円を支払うことで和解。同年10月、最高裁は光ディスク情報読みとり技術を発明した日立製作所の元主管研究員に日立が1億6000万円を支払うよう命じた2審判決を支持、元研究員の勝訴が確定した。(産経)
■1年半、社内で口きかず研究 中村氏「とにかく負けず嫌い」
ノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏(60)は意志が強く、「戦う男」のイメージで有名だ。「子供の頃から、とにかく負けず嫌いだった」。きょうだいは姉と兄、弟。「男3人で、いつも食べ物の取り合いでけんかをしていたから、こういう性格になった」と笑う。
小さい頃から理数系に興味があった。中学時代は数学が好きだったが、高校に入ると「人間を含む宇宙の全ての現象を示す方程式を作ってみたい」と思うように。しかし、先生から「宇宙じゃ食えないぞ」と言われ、工学部への進学を決めた。
徳島大の大学院修士課程を修了後、入社した日亜化学工業では「会社の指示で研究に取り組み開発した製品が売れず、白い目で見られ続けた」と振り返る。だがここで、負けず嫌いの本領を発揮した。
「この仕事をしたら、会社を辞めてやる」。そんな気持ちで最後に取り組んだのが青色LEDの研究だった。1年半も社内の誰とも口をきかず、研究に没頭。平成5年、当時は不可能とさえいわれた青色LEDの実用化に成功した。
世界初の偉業は米国の学会で脚光を浴びる。そこで知ったのが、日米の研究者の待遇の差だった。10を超える米国の大学・企業から誘いを受け、12年に渡米。研究環境が自由で「共産主義の国から、自由主義の国に引っ越した感じだった」。
一方、日亜化学とは青色LEDの特許権や研究成果の対価をめぐって訴訟合戦に。日亜側に200億円の支払いを命じた判決が話題になり、一時は“200億円男”とも呼ばれた。だが控訴審で約8億4千万円に減額され、和解が成立。「日本の司法は腐っている」と吐き捨てた。
自分が正しいと思うことは真っ向から主張し、容赦のない言葉を浴びせる。強烈な個性は米国向きとも評されるが、“闘争”を離れた普段の様子は穏やかで、気さくな人柄だ。
和解金は税金と弁護士費用、住宅ローンで大半が消え、残りはアフリカの貧しい人に太陽電池を贈る団体に寄付したという。(産経)
杜父魚文庫

コメント

タイトルとURLをコピーしました