20522 カソリック法王がトランプを攻撃しても、逆に支持率があがる不思議   宮崎正広

■米国のエスタブリシュメントはWASPではなくなっていた

オバマ大統領の誕生は、非白人ではじめてだったから米国は変わったと評価された。じつはそのはるか以前から米国はWASP(ホワイト、アングロサクソン、プロテスタント)の国ではなくなっていた。
 

JFKは最初のカソリック、しかもアイリッシュ出身の大統領だった。

ブッシュ・ジュニアはカソリックに改宗していた。いま、トランプ候補の宗派はと言えば、カソリックではない。長老派(プロテスタント、カルヴァン派)である。

つまりWASPのカソリックへの挑戦なのである。

2月28日、メキシコ訪問の帰路、サウス・カロライナ州に立ち寄ったフランシスコ・ローマ法王は、メキシコからの帰り道ということも手伝ってか、「移民の流入に壁を造れと叫ぶトランプは、キリスト教徒ではない」と辛辣に批判した。カソリックではない、とは言わなかったポイントに注目しなければならない。

ローマ法王はイエズス会所属で、アルゼンチン生まれのイタリア系である。

トランプはメキシコとの国境2500キロに壁を造り、メキシコの不法移民1100万人を追い返せと言っていた。主要メディアは一斉に批判したが、庶民の反応は逆で、トランプへの支持率は上がったのだ。

過去二十年の米国の変化のなかで最も目に見えない変化が宗派だった。

日曜日の教会にきて敬虔な祈りを捧げるアメリカ人は年々歳々減少している。とくに都会では教会へ行っても信者はあまり集まっていない。

しかしエスタブリシュメントの顔ぶれを見ると歴然とする事実がある。さきにアントニー・スカリア最高裁判事が死んで、新しい判事任命が長引いている。共和党は、オバマがリベラルな判事を選びそうなので、絶対反対の構えを見せている。このため最高裁判事の人事は、来年一月、新大統領の下で行われるだろう。

その最高裁判事のメンバーをみても圧倒的にカソリック(ユダヤ教がひとり)、ここでは保守 vs リベラルの図式が表面化しているが、裏面はカソリック圧勝という構造になっている。

現在残っている大統領候補のうちで、クリントンはメソジスト(プロテスタント)、サンダースはユダヤ教徒、トランプは長老会派(プロテスタント)、クルーズは南バプチスト(プロテスタント)、ルビオだけがカソリックである。
 

トランプの強さは、WASPの怒り、そしてプロテスタントのカソリックエスタブリシュメントへの怒りという側面がある。
 

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