尖閣「領有権」の棚上げを中国が打診。尖閣衝突、反日デモをまずいと総括したのか。米国でわき上がる反中感情と日米同盟強化ムードに慌てる。
11月、横浜で開催されるAPECにオバマ大統領が来日し、日米安保条約五十年を記念する「共同声明」が発表される見通しである。胡錦濤が横でみているときに日中関係が冷却化するわけだ!
つい先般まで普天間基地の移転問題で、日米は衝突し、鳩山ならびに菅直人政権への不信感と不安が増大して日米関係はささくれ立っていた。尖閣と反日デモで、すっかり空気が変わった。
中国は「日米同盟に亀裂がはいるのは中国の国益、喜ばしい限り」と内心で計算していた。春から夏にかけて、会う人ごとにそう言っていた。
日本のトップが国家安全保障とか領土問題で、小学生ていどの認識しか持ち合わせず、東シナ海のガス田採掘でも「友愛の海」とか「共同開発」とかの寝言を言っている裡に、さっさと既成事実をつみあげていた。
尖閣衝突、反日デモが、この構造を転換させた。
反中感情が日本でわき出した。健全なナショナリズムが回復し、いままで政治に無関心だった女性の多くが安全保障に関心をもちはじめ、日米安保条約の対象に尖閣諸島がはいるとする米国の発言に安堵し、日米安保条約による同盟は、ますます強化される方向へ舵が切り替わったのだ。中国にとって、これは「想定外」のシナリオである。
「尖閣衝突以後、日本には長期戦略確立への姿勢が顕著となり日米同盟は強化されるという新安保宣言が謳われるだろう」とリチャード・ブッシュ(ブルッキングス研究所アジアセンター主任)は言った。
「それまでは普天間をめぐって日米関係は“ダーク・スワン状況”(Dark Swan Situation)だったのだから」。「これからの日米関係は米中関係の補完関数」ともいわれた。
▲日米同盟の強化論がふたたび主流の論議に
米国務省スポークスマンのマーク・トナーは「安保再改定が議論されている段階ではないが、新宣言により日米関係は、より強固な方向になるだろう」と見通しを述べた。
日本では尖閣問題で「抗議決議」を国会がおこなうべきだとして自民党が動き、在野の防衛論は沖縄に自衛隊をとする提唱から、尖閣に護衛艦派遣、陸上自衛隊常駐、石垣に航空自衛隊常駐論に発展、また菅政権としても「思いやり予算」増額を認める方向。
「日本は国益に照らして日米関係強化の道を歩むだろうが、かといって日中関係の悪化をのぞまず、とくに経済関係はさらに発展させる方向に進むだろう。日本は経済の停滞と高齢化社会により再びGDP大国になる可能性は薄く、一方的な日米中関係構造の変更をのぞんではいまい」(ケン・リーベンタール「ブルッキングス中国研究センター」主任)。
オバマ政権は中間選挙に敗北色濃く、いまの米国は「アンチ中国」で覆い尽くされ、テレビ・コマーシャルは「失業増はチャイナ(が原因)」「不況はチャイナ(が原因)」というスポットがどの局にも流れている。
人民元切り上げをのまない中国にもあきれかえって、微温的対中政策をすすめるオバマ政権は苦境に立っている。米国でわき上がった反中感情と日米同盟強化ムードに中国はすっかり慌てた。
こうみてくると、中国は突如態度を軟化させ、「尖閣棚上げ」を言い出したことにも納得がいく。尖閣の「領有権」議論だけを棚上げしようとするのは常套手段で、日本を油断させるのが目的だが、ノーベル平和賞をめぐって世界に孤立した中国側から打診してきたのも、よほど尖閣衝突と反日デモがまずい結果を産んだと総括したのかもしれない。
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@@@@@@@@@@@@@ 読者の声 @@@@@@@@@@@@@@
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(読者の声1)過日、桜チャンネルの番組で(宮崎さんも出演されていましが)、水島総さんが、外国資本が日本のテレビの株式を20%買い占め、さらに日本人名義で6%から7%ほど上積みし、これで日本のマスコミは外国から文句をいわれないように自粛した報道姿勢を強める云々と怖い話をされていました。金でマスコミを操作しようなどという某国は、まことに大胆不敵ですね。(JI生、山梨)
(宮崎正弘のコメント)日本の法律はマスコミの株主は上限20%まで外国人に認めています。20%以上を取得することは出来ないので、日本人名義で買い増しをしている。だが、それは当該メディアへの発言力強化が目的とだけ考えるのは短絡的で、脅威をあたえて高価買い戻し(グリーンメール)かもしれない。
いや、そんな必要もなく、金がきていようがいまいが、中国派の奥歯にもののはさまったような批判しかしないじゃありませんか! 多くの日本のマスコミは自粛どころか自主的に媚中派になりさがっています。
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(読者の声2)メルマガやブログが氾濫する中で、中国の反日デモが「やらせ」と最初から断言していたのは宮崎正弘さんだけだったように思います。ところがテレビにでてくる評論家とか専門家なる人らは「やらせである筈がない」「大学生の自主的行動だ」「ネチズンに国家権力が後追いしている」などと解説していて、「ん?」と思うのですが。先生とまるで正反対の解説してまっせ。(UI生、横浜)
(宮崎正弘のコメント)中国では大学の構内に交番があり(マンモス大学に限りますが)、パトカーが常駐しています。それが中国の大学キャンパスの実相です。
「自治会」なるものは共産党に覚えめでたきを得たいごますり学生のたまり場。自主的に反日?ですか。言論出版集会結社の自由が許されない国で?
杜父魚文庫
6505 米国でわき上がる反中感情と日米同盟強化ムード 宮崎正弘
宮崎正弘
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