147 目算が狂ったジャパンスクール 古沢襄

外務省にチャイナスクールがあるように中国外交部にもジャパンスクールがある。唐家?(セン)国務委員ら知日派の集団で対日分析の総本山。江沢民の反日政策は民主化要求が頂点に達した天安門事件で、国内の不満を反日という対外強硬論でそらす狙いがあった。靖国問題、教科書問題などが相次いで起こったのは、この脈絡でみておく方がいい。
唐家センはもともとは親日派で日本の政情にも精通していた。それが強硬な靖国批判論者になったのは、日本の政情に精通していることからくる落とし穴にはまったのではなかろうか。
日本の戦後政治は、一貫して軽武装・経済主義の吉田政治の流れが主流であった。わずかに反吉田の政治主義だった岸政治の例外があった程度である。さらには国会で三分の一前後を占めた社会党という強力な野党が存在していた。
中国側からみれば、米帝国主義と気脈を通じる日本側の動きがあれば、日本の野党と連携して揺さぶりをかける政略が常に成功してきた。日本側も中国と事を構えるのは、政財界とも極力避けてきた。政治主義よりも経済主義が優先したといえる。経済アニマル国家で良しとする風潮すらあった。
ところが、ここ数年、吉田亜流政治が後退し、強力な野党も無力化した政治構造が日本に現れた。保守傍流ともいえる岸・福田政治の系譜が森・小泉・安倍の三代にわたって続こうとしている。
この変化を一時的なものとジャパンスクールは見誤ったのではないか。中国が靖国批判のボルテージをあげれば、自民党内の親中国派が政権批判を強め、連立与党の公明党や野党も呼応すると予測したに違いない。
ところが小泉首相は頑として応じない。しかも世論調査の小泉支持率は50%前後の高い支持率をキープしている。想定外の出来事がおこったのである。これに戸惑っているのがジャパンスクールではないか。明らかに目算が狂っている。
私は日本の政治構造が劇的に変化したのは、小泉訪朝によって北朝鮮による拉致事件が表面化したことが、きっかけになったと分析している。拉致を許さないという国民世論が澎湃としておこり、日本ナショナリズムが覚醒したといえる。拉致に対して毅然とした態度をとった安倍晋三氏に多くの日本人が共鳴し、それが安倍待望論になったとみている。
その勢いは中国に対しても毅然たる態度でのぞむ風潮を醸成した。靖国参拝のマイナスや日中経済交流よりも「毅然たる態度」で中国にのぞむことが、優先順位で第一位となったことをジャパンスクールは見誤ったのではなかろうか。
これは中国側も気がついた筈である。といって対日態度を急激に変化させることはできまい。しかし反日姿勢をとり続ければ、国内の不測の事態を招きかねない。それは北京オリンピックを控えて、諸外国の不安を招くことになる。
安倍政権が誕生すれば、新しい日中関係を模索する動きが日中双方からでてくるであろう。親中国派の古賀誠氏や二階俊博氏が相次いで安倍支持を打ち出したのは、このような視野に立ってのことだと理解している。その点では加藤紘一氏や山崎拓氏は、過去の視野から脱して切れていないとみるが、どうであろうか。

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