3612 ウルムチ暴動、外国メディア取材を歓迎する中国政府の謎 福島香織

6日、ウルムチを旅行中の北京師範大学の日本人留学生さんと電話で話しました。約160人が死亡し、800人以上が負傷したとウルムチ市当局が発表した、5日夜の暴動の件で。学生さんは5日午後にウルムチ入りしたのですが、現場の解放路からは離れた場所に宿泊し、そのときは暴動に気がつかなかったそうです。
6日は市内はすでにおちついていて、人通りは少なく、商店はのきなみシャッターが閉められていたものの、町を行き来するウイグル族の姿もあったとか(でも、きょうまたデモがあったとの報道。抗議活動はやはり拡大の様相にあるようです)。とにかく、留学生さんがまきこまれずにすんだことはよかったです。
■しかし、奇妙だな、とも思うのです。3万人が参加し、160人が死亡する大暴動です。日本で160人が一度に死亡したら、どれだけ衝撃的か、想像してみてください。それが、一夜で市内の治安を取り戻したとしたら、あまりの手際のよさです。
さらにびっくりすることには、ウルムチ市当局は外国メディアの取材を歓迎しているのです。7月6日午後にウルムチ市はメディアセンターをつくり、ブロードバンドを国内外メディアに提供。定例会見を行い、封鎖地域へのプレスツアーも組むなど、びっくりするくらい親切なのです。
■かつて、地方で暴動がおきると、記者は現地になかなかいれてもらえませんでした。空港で待ち伏せされて、すぐ北京に帰る飛行機にのせられたり、拘束されたり。ところが今回にかぎっては、外国メディアの取材便宜もはかり、記者会見までしている。
現地の治安統制によほど自信があるのか。今回は中国当局側に正義があるという自信?現場を外国メディアにみせれば、国際世論は中国側に味方するという自信?
■昨年3月のチベット・ラサ騒乱では、外国メディアをなかなか現地にいれなかったことから、中国当局の発表にウソがあるのではないか、中国側がしかけた陰謀ではないか、という憶測がながれました。中国側はあのラサの3・14事件はチベット青年会議らダライ・ラマ勢力がラサに100人あまりの工作員を送り込み周到に準備した民族蜂起であった(新華社)と分析する一方で、在野の研究者の中には、その情報をあらかじめ察知した中国当局が、反体制チベット族を根絶やしにするため、ラサの一般市民の犠牲がでることを承知で暴動がおきるままにしていた、という分析をする人もいます。
つまり、暴動を未然に防ぐとしたら、逮捕者はラサに潜入した100人程度に限られますが、暴動を起こさせてからだと、潜在的に当局に不満をもつチベット族も参加するので、一網打尽にできる。結果的に1000人以上が逮捕されたのだ、と。
■その他にも、チベット人側は当初、非暴力のハンガーストライキの抗議活動だけをやっていたのが、僧侶の衣装をまとった当局側の工作員が暴動を扇動したとか、いろいろ情報がながれました。今回の外国メディア歓迎措置は、チベットの事件を教訓にしたのかもしれません。
情報は積極的に公開した方が当局に有利だという判断なのかもしれません。ただ、現地の記者らのメールは遮断されていました。(こちらから、メールを送ったら跳ね返ってきた。)聞けばインターネットもコントロールされているようです。外部から情報をいれず、当局発表だけで記事を書かせようとしているということでしょうか。
■当局側の対外国メディアの姿勢は評価されるべきだとは思うのですが、あまりの死者の多さと、暴動の鎮圧の素早さと、当局側発表のニュース映像と情報量の多さに、なんとなく胸騒ぎを覚えてしまうのは私だけではないかもしれません。
中国側は例によって、ノーベル平和賞候補にも挙がった世界ウイグル会議の代表であるラビア・カーディル総裁ひきいる「世界ウイグル会議」が扇動した暴動と発表していますが、非暴力の抗議で訴えてきたラビア総裁が暴動を扇動、と言うのもにわかに信じがたいところです。
■そうやって中国にきな臭い空気がながれている中、東京・永田町では、もう自民党が、もう、どーしょうもないところまで追いつめられているもよう。いまから、人気者の東国原英夫・宮崎県知事が自民党本部にきて、古賀誠選対委員長と会うんですけどね。
なんか「東国原総理構想」が現実味をましているように感じます。かりに東国原氏が自民党で出馬して、300選挙区をまわって応援して、負ける選挙を勝ったなら、彼が9月の総裁選に候補として出ることを誰も反対できませんしね?
いやいや、東国原知事にそんな影響力はない、という方もいますが、「東国原総理」と「政権交代」どっちがみたい?と聞かれれば、有権者にすれば、けっこう迷う選択かもしれません。ちなみに私はこの二者択一を迫られれば、東国原総理かな。
総理という仕事はチームでやるそうですから、よいブレーンがつけば、けっこういいセンいくかもしれません。お笑い芸人出身の総理大臣が活躍できる日本の政治の軽さ(自由ともいう)こそ、日本の平和のあかしかも。ちなみに、日本の総理大臣が誰になるかより、ウルムチの暴動などで中国政治社会の不安定化やカントリーリスク上昇のほうが、日本経済にダイレクトな影響を与えるんじゃないかと、福島は思っています。
■というわけで、お笑い自民党路線(開かれた自民党ともいう)VS友愛政権交代で劇場型選挙パート2に突入するのかどうか。日本じゃ、そんな選挙をやっても、有権者をバカにしているのか!と怒る人もなし。いいなあ、日本。でも、ときどき付き合いきれない気持ちになる。
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