北朝鮮が核武装のために、これまで知られていたプルトニウム爆弾だけでなく、ウラン爆弾の製造のためのウラン濃縮施設をも新たに建造していたことが明るみに出ました。
アメリカは北朝鮮のウラン濃縮の情報を得てはいましたが、これほどの新装置がこれほどの完成状態にあることまでは把握していなかったようです。
さてこの北朝鮮核問題の新事態はアメリカにとってなにを意味するのでしょうか。そして日本にとってもーーー
〔ワシントン=古森義久〕米国のオバマ政権は北朝鮮が核兵器製造につながる最新ウラン濃縮施設を明らかにしたことで北朝鮮の非核化という従来の目標からまた大きく後退させられることとなった。同政権は中断したままの六カ国協議の参加各国との調整をも再開したが、北朝鮮が援助を頼る中国にとくに役割の拡大を求めることともなった。
今回の動きをオバマ政権の対北政策の失敗や後退としてみる向きは多い。下院外交委員会の共和党筆頭委員イリアナ・ロスレイティネン議員は21日、「オバマ政権の北朝鮮への手の差し伸べ政策は今回の北の動きで失敗であることを証した」とする声明を出した。超党派の議会調査局で長年、朝鮮問題を担当したラリー・ニクシュ氏も「北がウラン濃縮をひそかに進めていることは米側でも探知はしていたが、ここまでの進展はオバマ政権には大きなショックであり、これまでの政策の全面見直しにもつながる」と論評した。
オバマ政権はこれまで北朝鮮の非核に向けた動きを時間をかけて待つという意味の「戦略的忍耐」という政策標語をも掲げてきたが、この「忍耐」がかえって北朝鮮に核兵器開発への前進を許した結果となった。
米国は北朝鮮の核武装への動きに対し六カ国協議でプルトニウムの軍事転用だけにしぼって阻止を図ってきた。同協議が2008年に中断した後、北側は核兵器製造を可能にするウラン濃縮能力の存在に言及するようになった。この点、オバマ政権の初期まで同協議の米国首席代表を務めたクリストファー・ヒル氏も「北は協議中はウランの存在を完全に否定し、米側をだましていたから、こんごはウラン問題が最大課題となる」と産経新聞との会見でも述べ、同協議の不成功を認め、ウランの重大性を強調していた。
北朝鮮がこの時期になぜウラン濃縮施設を米側にあえてみせたのかという動機についてはニクシュ氏や大手研究機関「ヘリテージ財団」の朝鮮情勢専門のブルース・クリングナー研究員は①米国側にショックを与え、北との交渉を再開させて安保上の譲歩や経済援助を得る②パキスタンやインドに近い事実上の核兵器保有国としての認知を求める③現在の国連主導の経済制裁が効果を発揮しないことを誇示する―などという可能性を指摘した。
オバマ政権はこんごの対応としてはまずスティーブ・ボズワース北朝鮮担当特別代表を日本、韓国、中国など六カ国協議の参加諸国に急派し、意見交換を始めた。だが六カ国協議の再開については北側が国連の経済制裁の解除と米朝二国間の安保問題交渉などを前提条件としており、米側は応じられず、苦境に立っている。ただし北朝鮮に対しては中国が最大の影響力を持っており、オバマ政権としては中国に北への非核化の圧力強化を再度、要請することも確実とみられる。
一方、下院外交委のロスレイティネン議員は今回の動きを理由にオバマ政権が北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定することを求め、圧力強化策を提案した。
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6727 北朝鮮のウラン濃縮がオバマ政権を翻弄する 古森義久
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