8865 後見人の”操り人形”金正恩  古沢襄

北朝鮮はいまもって「謎の軍事大国」である。さらに徹底した”情報鎖国”をとっている。とくに分かりにくいのは、その権力構造の実態である。二十八歳の若く未熟な独裁者が祖父・金日成や父・金正日のように自ら決し、自ら強権をもって権力構造を維持するとは考えられない。
当分の間は後見人と称する実力者たちの”操り人形”にならざるを得ないだろう。その後見人と称する実力者たちが一枚岩で金正恩を支えるだろうか?。二十八日、平壌の錦繍山記念宮殿で行われた告別式で霊柩車を護衛しながら行進する新指導部の顔ぶれ写真を、世界の北朝鮮ウオッチヤーは注目した。
韓国の聯合ニュースは、霊柩車の右側には正恩氏、張成沢(チャン・ソンテク)国防委員会副委員長、金基南(キム・ギナム)朝鮮労働党書記、崔泰福(チェ・テボク)党書記、左側には李英浩(リ・ヨンホ)朝鮮人民軍総参謀長、金永春(キム・ヨンチュン)人民武力部長、金正覚(キム・ジョンガク)軍総政治局第1副局長がそれぞれ並んだと速報している。
また朝鮮日報は「正恩氏と霊柩車の横を歩いた七人」「金正恩氏の後ろに”後見人”張成沢ら三人」「左には軍の実力者四人」と分析し、「これが金正恩時代を支える”七人組”と考えても良いのではないか」と述べている。日本のメデイアもほぼ同じ見方をした。
その中で産経新聞系列のZAKZAKが「非核の看板を掲げたオバマ米大統領が来秋の大統領選を控え、北への関与を深めてくるのは必至。北を支援する中国の動きも気になる。まずは、正恩体制の基盤を崩壊させる権力闘争の前兆が表面化するのか」と厳しい見方を示した。
現代コリア研究所の佐藤勝巳所長は、「正恩氏が最も恐れているのは、ナンバー2の座をめぐる権力闘争によって機能不全に陥ること」とみている。たしかにナンバー2の座は後見人の張成沢が握ったとみられるが、張成沢は金日成、金正日時代に左遷の憂き目をみるなど、北朝鮮の軍・党の中で確固たる地歩を固めたとは言い難い。
李英浩も二〇〇九年以降、急速に頭角を現したが、まだ六十九歳。八十歳の金永春人民武力部長ら高齢化した軍幹部たちが隠然たる力を保持しているから、軍内部の力関係に微妙なものがある。
<【ソウル聯合ニュース】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党中央軍事委員会副委員長ら新指導部が28日、平壌の錦繍山記念宮殿で行われた告別式で霊柩(きゅう)車を護衛しながら行進した。
霊柩車の右側には正恩氏、張成沢(チャン・ソンテク)国防委員会副委員長、金基南(キム・ギナム)朝鮮労働党書記、崔泰福(チェ・テボク)党書記、左側には李英浩(リ・ヨンホ)朝鮮人民軍総参謀長、金永春(キム・ヨンチュン)人民武力部長、金正覚(キム・ジョンガク)軍総政治局第1副局長がそれぞれ並んだ。
これらの新指導部は金総書記の死去で空白ができた北朝鮮権力を主導的に率いる役割をするとみられる。(聯合)>
<金総書記告別式:正恩氏と霊柩車の横を歩いた7人。張成沢(チャン・ソンテク)氏-「後見人」として金正恩氏のすぐ後ろに。北朝鮮権力の中枢にあることを確認。「偶像化の達人」とされる金己男 (キム・ギナム)氏と科学秘書の崔泰福(チェ・テボク)氏がその後ろに・・・。
左には軍の実力者4人。「金正恩氏の軍事教師」李英鎬(リ・ヨンホ)氏、「金正日(キム・ジョンイル)総書記の側近」金永春(キム・ヨンチュン)氏、将校の監視を担当する金正覚(キム・ジョンガク)氏、国家保衛部掌握の功臣とされる禹東測(ウ・ドンチュク)氏。「金正恩氏の意向に沿って金正恩氏を護衛」公開の場で忠誠を誓う。
28日に執り行われた金正日(キム・ジョンイル)総書記の告別式で目を引いたのは、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党中央軍事委員会副委員長と共に、金総書記の遺体を運ぶ霊きゅう車の左右を歩いた7人の姿だ。
韓国政府関係者は「この7人は金総書記の最後の道に同行することで、“将軍様(金正日総書記)の遺訓を受け継いで金正恩(キム・ジョンウン)同志を決死擁護する”と内外に誓いを示す形となった」「金正恩時代を支える7人組と考えても良いのではないか」と述べた。
この日姿を現した7人組は、微妙な力学関係で絡みあっている。金正恩氏の叔父に当たる張成沢(チャン・ソンテク)氏は、「金正恩氏の後見人」と呼ばれるにふさわしく、金正恩氏のすぐ後ろについていた。朝鮮労働党内で最高の力を持つといわれる組織指導部に大きな基盤を持つことで党内の実務に詳しい上に、死亡した2人の兄が軍の実力者だったため、その影響で軍内部にも多くの支持基盤を持つ。兼任する行政部長の地位は公安機関を管理する立場でもあるため、反対派の監視にも都合が良い。しかし逆に言えば「権力が大きすぎること」が弱点かも知れない。
金総書記の生前には、張成沢氏は公式行事で常に後ろの列で静かに立っていたが、今回の葬儀期間中に初めて大将の階級章を付けた軍服姿で前面に姿を現し、この日も金正恩氏のすぐ後ろを歩くことで自らの権力を誇示した。
霊きゅう車の左にいた軍人たちは、金正恩氏が後継者に内定した2009年1月以降に昇進と栄転を繰り返した人物ばかりで、いずれも金正恩氏と近く、また張成沢氏とも親しいとされている。
中でも「砲撃の達人」「金正恩氏の軍事家庭教師」などと呼ばれてきた総参謀長(韓国の合同参謀議長に相当)の李英鎬(リ・ヨンホ)次帥は、28日の葬儀でも霊きゅう車の左側先頭を歩き、金正恩氏と最も近い側近であることを誇示した。その李英鎬次帥でさえ一目置くのが金正覚(キム・ジョンガク)総政治局第1副局長(大将)だ。総政治局とは小隊長から総参謀長に至るまで、朝鮮人民軍の将校全員の一挙手一投足を監視する組織。世宗研究所の鄭成長(チョン・ソンジャン)首席研究委員は「金正恩氏が軍を掌握する過程で、誰よりも重要な役割を果たしたのが金正覚だ」と語る。(朝鮮日報)
<北朝鮮は金正日総書記の死去により、三男・正恩氏(28)を序列1位とした体制がスタートした。しかし、若き指導者には経験や実績の不足といった懸念材料が多く、先行きは不透明だ。正恩氏の後見人として国防副委員長、張成沢氏(65)は序列19位ながらナンバー2級の地位がアピールされており、すでに国を足元から揺るがす権力闘争の予兆もみられる。失脚へと追い込まれる場合、どのような事態が想定されるのか。専門家の分析で、三代目破滅のシナリオを検証した。
故金日成主席が1994年に死去し、金総書記へ権力が移行したときとは全く異なる点が2つある。ひとつは、金総書記は約20年かけて後継者の足場を固めたが、正恩氏は1年3カ月足らずだったこと。もうひとつは、94年よりも経済は格段に悪化し、国民の多くが飢えて不満が蓄積されていることだ。
現代コリア研究所の佐藤勝巳所長は、「正恩氏が最も恐れているのは、ナンバー2の座をめぐる権力闘争によって機能不全に陥ること」とみている。
「序列が第一の組織では内ゲバが避けられない。父・正日氏のように押さえ込む力があるとは思えず、収拾がつかなくなる。こうなったとき北を支援する中国が背後で動き、正恩氏の代わりにマカオにいる親中派の長男・正男氏を立てた政権樹立を企てるだろう」
経済で行き詰まった北にとって、中国からの支援は生命線。また、中国にとっても北は地政学的にみて重要だ。
「38度線は中国が死守したい防衛ライン。混乱に乗じて親米、反中の体制に移行するのは何としても避けたい。正恩氏の体制で内ゲバを抑えられなければ、中国はすぐに動く。今、最も注目すべきは28日に行われる葬儀。幹部の並ぶ順番が、発表された葬儀委員会名簿の序列と変化があった場合、権力闘争がすでに始まっていることを示すからだ」(佐藤氏)
権力の移行期では、前体制で厚遇されてきた勢力の動きから目が離せない。元航空自衛隊員の軍事ジャーナリスト、鍛冶俊樹氏は「正日氏が強化し、庇護してきた核開発と特殊部隊の関係者が不満分子となり、正恩氏を権力トップの座から追い落とす」と指摘する。
「困窮が著しい北で正恩氏が最優先で考えているのは、対米関係の改善で支援を引き出すこと。ところが、米国は支援との交換条件に核開発の停止、特殊部隊の大幅削減を要求してくるとみられ、正恩氏はこれを飲むしかない。優遇されてきた核開発関係者と特殊部隊は失業となり、大多数の北朝鮮国民と同じ飢えにさらされる。この事態を避けるには反乱しかない」
正恩後の体制は、「ミャンマーで1988年に軍部がクーデターを起こした後のように、軍事政権による集団指導体制へと移行する」(鍛冶氏)との流れで確立されるようだ。
ただ、正恩体制は容易に崩壊しないとの見方もある。2005年3月まで外務省北東アジア課北朝鮮班長として北朝鮮外交の最前線にいた原田武夫氏=シンクタンク代表=は、「経済を豊かにしていく路線が頓挫したときに失脚することはあり得るが、現状では考えにくい」と分析する。
「米国のブッシュ前政権は発足当初に北の体制について全面的な変革を求めたが、中国が猛反発。周辺国にとっては難民の流出が最大の問題だからだ。そこで各国は、強硬な正日氏というトップだけをすげ替え、体制は維持させる方針へと転換した。今回、体制の移行はいい形、かつ非常によいタイミングで行われた」
原田氏が重視しているのは米軍の動きだ。
「先週、イラクでは米軍の完全撤退によりオバマ大統領が戦争の終結を宣言した。これは米国が再び戦闘可能になったことを示す。今の米国にイラクと北を相手にした二正面作戦は困難だったが、北朝鮮に注力できるようになった。米国との対峙を避けるため、北の体制移行はすべからく絶妙だったとみている。今後はマカオの正男氏がファンドマネジメントで稼ぐ資金を糧としながら、経済の安定を目指す正恩氏の体制が続くだろう」
非核の看板を掲げたオバマ米大統領が来秋の大統領選を控え、北への関与を深めてくるのは必至。北を支援する中国の動きも気になる。まずは、正恩体制の基盤を崩壊させる権力闘争の前兆が表面化するのか、28日の葬儀が注目される。(ZAKZAK)
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