17018 首相と石破氏、亀裂回避も残ったしこり 追い詰められ受諾    古澤襄

9月3日の内閣改造と自民党役員人事で、石破茂幹事長の処遇をめぐる安倍晋三首相と石破氏の対立劇は29日、両者が直接会談して歩み寄ったことで、亀裂が決定的になることは避けられた。ただ、石破氏を支持するグループには幹事長を交代させることへの不満がくすぶっており、2人の距離は縮まってはいない。
 「よくやってもらってます…」
29日午前11時50分から首相官邸で始まった「直接対決」。昼食の弁当を前に首相は石破氏にこう語り、これまでの党運営に対し労をねぎらった。ただ、その言いぶりは幹事長交代を前提にしたものだった。
石破氏は会談後、記者団に笑みを浮かべて「マスコミに『亀裂が走った』といわれるが、一切そういうことはない。腹蔵なく、虚心坦懐(たんかい)に話ができてすがすがしい」と語った。だが、首相との良好な間受諾柄を強調しなければならないのは、それだけ関係が冷え込んでいる裏返しともいえる。
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実は会談前、ある側近議員は石破氏に「官邸から出るときは笑顔でいてください」と助言していた。
会談と同じ頃、国会にほど近いホテルに、鴨下一郎元環境相や山本有二元金融担当相、浜田靖一元防衛相ら石破氏の側近6人が集まった。会談を終えた石破氏から「自民党は結束しなければならないという思いで一致した」と電話で連絡が入ると、鴨下氏らは胸をなで下ろした。
しかし、首相と石破氏の間にしこりが残ったのは間違いない。
そもそも首相に石破氏を幹事長に留任させる考えはなかった。今年12月に前回衆院選から2年が経過し、折り返し地点を迎える中で、来年は衆院解散も視野に入る。自民党が一丸となって勝ち抜くためには、気心の知れた人を幹事長に据えたいのが首相の本音といえる。無役にすることで石破氏が「反安倍」の受け皿になることを避けたい、との思いもあったようだ。
首相に取り込まれることを危惧した石破氏周辺には首相と距離を置く「主戦論」が一時高まったが、首相は「二の矢」として来春の統一地方選をにらんだ改造の目玉ポスト、地方創生担当相を用意。石破氏は追い詰められたとの見方は強い。首相は地方創生を政権の浮沈をかけた施策と位置付けており、安全保障法制担当相に続き地方創生相も固辞すれば、石破氏のイメージダウンは避けられないからだ。
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もっとも、新設ポストのため権限は曖昧だ。地方活性化の部署は各省庁に分散しており、地方創生相は省庁横断的に地域振興策を取りまとめなければならない。各省庁の省益に阻まれない強力なリーダーシップが必要になるが、首相が石破氏にどの程度の権限を与えるのかは不透明だ。地方再生を軌道に乗せられなければ、責任を負わされるリスクもつきまとう。
それだけに、「幹事長を続投できなければ、無役になって来年の党総裁選に備えるべきだ」と主戦論を唱えてきた石破氏周辺からは「これ以上ついていけない」との声も漏れ、石破グループに亀裂が入りかねない事態となっている。これこそ首相の狙いだったとの見方もあり、結局、無役にさせず粘った首相に軍配が上がったといえそうだ。
石破氏は29日夜、鹿児島市内で記者団に地方再生について「人事と関係ない話という前提」と前置きした上で「政策を変えていかなければ地域は再生しない。かけ声だけで再生しない」と強調した。同時にこう語り、総裁選出馬に消極的な姿勢をにじませた。
「首相が2年や3年でころころ代わってはいかん。安倍さんにその思いがある限り支えるのだ」(産経)
杜父魚文庫

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